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モロッコ旅⑤シェフシャウエン&帰国:絶景とミントティー。優雅で巧みな接客術

2024年2月15~24日のモロッコ一人旅の記録です。マラケシュ、サハラ砂漠、フェズを回り、最後に足を伸ばしたのは人気の青い町、シェフシャウエン。シリーズ最終回の今回は、フェズから日帰りで訪れたシェフシャウエン(2月22日)と、カサブランカ経由での帰国(2月23~24日)の模様をお送りします。

▼ 前日のフェズ観光(2月21日)の模様はこちら

▼ 初日(2月15~16日)から読まれる方はこちら

丘の上の青い町・シェフシャウエン

フェズから国営バス(CTM)を使い、シェフシャウエンを日帰りで訪れるなら、行きは8時フェズ発、帰りは15時シェフシャウエン発の一択だった。バスのチケットは、翌日のフェズからカサブランカ空港までの鉄道のチケットと併せ、フェズの宿のオーナーに手配してもらった。もともとはどちらもネットで買おうとしたのだが、日本のクレジットカードが受け付けられない?のか、購入完了できなかったのだ。

バスの乗車時間は片道4時間。サハラツアーでも感じたけれど、モロッコの風景は変化に富んでいて、多少移動が長くても見飽きない。ただ、このときは気温が低かったせいか、出発前にトイレを済ませたにも関わらず、確か1回だったトイレ休憩が待ちきれなくなってしまったのが忘れられない(いや、もちろん待ちましたけど……)。

シェフシャウエンは丘の上の小さな町。空気は爽やか、人も穏やかで、マラケシュやフェズの旧市街のように観光客に付きまとってくる人たちに悩まされず、ゆったり散策できるのが嬉しい。ただ、バスターミナルから旧市街までは15分ほど歩くので、バスターミナル付近では軽くタクシー運転手からの攻勢を受ける。

マラケシュのピンク、フェズの白は土そのものの色らしいが、シェフシャウエンの青はペイント。青で統一された理由は、①昔、ここに住んでいたユダヤ教徒にとって神聖な色だったから、②夏の暑さを涼しげな色で紛らわせるため、③虫除けのため、など諸説あるらしい。

道端で開かれていた市場
手前の女性がかぶっているカラフルな麦わら帽子は、シェフシャウエンの伝統
ランチはフェズに続いてCAFE CLOCK(チェーン展開している模様)にて。
看板メニューのキャメル(ラクダ)バーガーは、牛とほぼ変わらない味
ブルーの使い方がひときわおしゃれなホテル(手前)
町の中心、ウタ・エル・ハマン広場で、フェズで会った大阪のご夫婦(中央)に再会

ウタ・エル・ハマン広場でランドマークのグランドモスクを撮っていると、「もっと景色のいい場所を教えてあげよう」と地元のおじいさんに声をかけられた。流暢な英語を話す彼はお土産屋さんのご主人で、見事なまでにスマートな接客術の持ち主だった。ここからしばし、こののんきな日本人客を巧みに誘導する彼の熟練の技をお楽しみください。

店のご主人に案内されたテラスから撮ったグランドモスク。奥に見えるのはカスバ博物館
テラスからは青い町並みを一望。パステルカラーが美しい

テラスからの写真も撮り終え、眺めを満喫したころを見計らい、ご主人が再び上がってきて「店でミントティーでも飲んでいったら」と柔らかく勧めてくれる。マラケシュやフェズで呼び込みやぼったくりガイドを撃退してきた私も、これは断れなかった。うまいなあ……。

写真を撮らせてもらい、奥さんが淹れてくれたミントティーまで頂くと、さすがに「ここは一品買おうかな」という気になってくる。ここまでモロッコで買ったものといえば、サハラツアー中のストール一本とフェズでの香水一瓶(瓶がかわいかったので記念に)だけだったから、いいタイミングでもあった。聞くと、クレジットカードも使えるとのこと。

最初、自分用に革のバッグが欲しいと思ったが、どれもなかなかのお値段。
「本物の革だからね」
「うーん、モノはとってもいいと思うんですけど、予算がね……」
と渋っていると、
「でも、あなたはこれにふさわしいと思うよ」
とご主人の決め台詞が飛んでくる。いかにも商売人的な「お似合いですよ」ではなく、あくまでも店のバッグを基準にして、私がご主人に評価いただく形になっているのがポイントだ。英語では普通の表現なのかもしれないが(You deserve it)、何ともこのご主人らしい言い回しに思えて感心してしまった。

結局バッグは止め(私もしぶとい)、買ったのは母に贈るスカーフ。確かペイズリー柄で、紫を基調にしたグラデーションがきれいだった。会計時にカードを出すと店の表に案内され、そこにあったキャッシングマシンを使うよう言われてびっくり。え? 「カードも使える」ってそういうこと? 多少値切って買ったスカーフは母にとても喜ばれたので、まあよしとしましょう。

買い物しているうちにバスの時間が迫っていたので、早足でターミナルに向かう。途中、道を確かめようと若い女性に声をかけたところ、彼女が別の人に聞いてくれ、さらにそこを通りかかった年配の男性が「自分もそっちに行くから」と案内してくれた(感謝!)。こういうとき、日本語の第一声はだいたい「すみません」だが、アラビア語では「アッサラーム(平安を)」と言うようだ。トーンは「すみません」と変わらなかったから、単に習慣なのだろうけれど、優雅だなと感じた。

帰りのバスで、ちょっとした謎があった。座席番号が
12 34
56 87
910 1112
と振られていたのだ。私はもともと「窓側」をお願いしていたし、8番=窓側と思い込んで座っていたら、7番の人に声をかけられてしまった。1カ所だけ逆に番号を振る理由って何だろう? 単に表示の間違いだったのだろうか。

フェズ到着後、バスターミナルから徒歩10分ほどのカルフール(フランス資本のスーパーマーケット)でお土産を入手。翌日は結局、空港で買い物する時間はなかったので、ここで買っておいて正解だった。バス車内でモロッコ土産の人気商品を調べたり、スーパーの場所を検索したりできたのも、前日にようやくSIMが開通したおかげ! シェフシャウエン散策中ずっとGoogle Mapを起動していたのでスマホの電池がギリギリだったが、何とかもってくれた。

■購入したお土産

●Orientinesのクッキー
お店にあった5種類を1袋ずつ。実家用と仕事先用。「モロッコ土産と言えば…」の定番ブランドらしい。自分でも1袋食べてみたところ、バターの風味豊か&甘すぎず、とても気に入った(もっと買ってもよかった)。

●ミントティーのティーバッグ
自分用。なかなかの香りと風味。紅茶のティーバッグも家に常備しているので、旅行後しばらくは気分次第でお茶を選ぶ楽しみができた。モロッコ旅を懐かしむ品としてもお勧め。

フェズの宿に戻ると、明日の鉄道のチケットが部屋に届いていた。一緒に置かれていた手書きのメモに、「Casa-Portまでは事前には買えないので、まずCasa-Voyageursまで行き、Casa-Voyageurs→Casa-Portの分は窓口で買ってください」と書かれている。

後で分かったのだが、このとき(&ネットでも)Casa-Portまでのチケットが買えなくて本当によかった。私はどういうわけかCasa-Portが空港直結駅と勘違いしていたのだが、これはカサブランカの港近くの駅。空港直結駅はMohammed V Airportだった。翌日、Casa-Voyageursの窓口で私は「空港まで」と言ってチケットを買ったので、駅名違いには気づかないまま難を逃れたのだ。

鬼門のカサブランカから帰国の途に

最終日は確か8時台にフェズ発の電車でカサブランカへ。旧市街の出口からフェズ駅まではタクシー。この旅最後のタクシーにして、ようやく事前の料金交渉に成功!(というか、たいしてボラれずに済んだ。たぶん)

タクシーを降りるとき、通りかかったおばあさんが車のドアを押さえてくれた。「ご親切に」と思ってお礼を言うと、「Money」と手を出されてびっくり。いや、さすがにそんなサービス料、お支払いできません……。

電車に乗るころ、この旅初めての雨がポツポツ降りだした。フェズでお世話になったガイドのザキさんによると、この時期のモロッコはあまりお天気がよくないらしく、7日間ずっと晴れだったのはかなりラッキーだったようだ。

Casa-Voyageurs駅のチケット窓口は大行列。自動販売機も置かれていたが、行き先選択画面でMohammed V Airportを選ぶとエラーになってしまうので、並ぶしかない。

空港行きの電車が発車するホームへのエスカレーターはなぜかロープで封鎖されていて、周りにスーツケースを引いた人たちが群がっていた。私もその輪の中で待っていたら、係員にチケットを見せてエスカレーターを降りていく人がいる! どういうことか分からないまま、私も輪を抜けてエスカレーターを降り、無事電車に乗り込めた。

カサブランカ→成田の飛行機は、乗り継ぎ込みで18時間。行きより4時間半ほど早い。行き帰りとも接続がよく、ドーハ着陸から次便の出発まで1時間強だったのだが、帰りのカサブランカ→ドーハ便は到着が遅れ、ドーハ空港の長い通路を走り抜ける羽目に。空港内のどこかに巨大な金の熊がいたらしいのに、全く気づかなかった。

成田空港に着き、スカイライナーの窓口に並んでいるとき、「ここでは日本語で頼んで、日本円で払えばいいんだ」と気づいたら、なんだか気楽すぎて嘘みたいだった。スカイライナー待ちの間に入ったドトールでも、メニューも値段もだいたい分かっているし、先払いのシステムにも慣れている。海外旅行は何度もしてきたけれど、こんなに「自分のテリトリーに帰ってきた」と実感したのは初めてだった。やっぱり初のアフリカに緊張してたんだなあ……。

温かな旅の記憶を心に刻んで

この旅行記を書いてきて、旅行中感じていた以上に、周りの人たちに助けられていたことに気づいた。行くだけでほぼ丸1日かかるモロッコを訪れることは恐らくもうなさそうだけれど、この1回で書ききれないほど豊かな体験ができたのは、旅で出会った皆さんのおかげ。どこを切り取っても絵になる街並みと鮮烈な色彩、神秘的な砂漠の光景と共に、皆さんの温かさが書いている私の心を潤してくれました。シュクラン!

読んでくださった皆さんも、ありがとうございました。頂いたスキやコメントにとても励まされました。これからモロッコに行かれる皆さんは、どうぞよい旅を! 私の経験上、到着時は少しトラップがあるかもしれませんので、ご注意ください(笑)。

▼ こちらにモロッコ旅①~⑤をまとめています

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