2023年を読書で振り返る -天と地と人-
今年ラストのnoteは読書の振り返りをしてみます。
今年はよく読書をした一年でした。去年までは月に1,2冊程度のペースでしか本を読んでいなかったのですが、去年の末にAudibleを契約してから徐々に読書量も増えてきて、今年はなんと一年間で61冊も本を読んでました。私にとっては驚きの数字です!Audibleは家事や歩きながら読書ができるのは良いですね。でも、単純にAudibleの分が増えただけじゃなく、本での読書量も増えていました。相乗効果とかってあるのかな?あと、8月からWasei Salonというコミュニティに入れさせてもらい、そこでの読書会をきっかけに読書量が増えたのもあります。何はともあれ、読書量が増えたことで考えることが多くなった一年だったように思います。
私が読んだ本の感想はブクログにほぼ全てアップしておりますので、もしよければご覧いただけると嬉しいです。
今回は、私が今年一年で読んだ本の中から印象に残っている3冊を振り返りながら紹介します。
わたしは「セロ弾きのゴーシュ」 中村哲が本当に伝えたかったこと
10月に読み終わった本。何がきっかけだったか忘れましたが、中村哲さんの本を読みたいと思い、ググって一番新しそうな本を買いました。本を買った時は、中村哲さんのことをあまりちゃんと知らなく、医師という肩書を超えてアフガニスタンにきれいな水の確保するために用水路作りという大事業をやってのける立派な人、というイメージくらいでした。
この本を読み始めて、中村哲さんの優しい心というか、人間らしさに触れることができて、崇高なビジョンがなくても、人として接していけば自ずと導かれるように大きな事業へと発展することもできる、ということを教えてもらえた気がしました。最近読んだ「訂正する力」をまさに実践された人で、「つぎつぎになりゆくいきほい」で突き進まれてきた人なんだなと思いました。
本書はラジオ番組で中村哲さんにインタビューをした内容をほぼそのまま掲載する形を取っているので、余計に中村哲さんが悩みながら、医療からスリッパ工場やら井戸掘りやらを始めていったのが伝わってきます。アフガニスタンに行くきっかけはただ山が好きだったからなのですが、そこから呼ばれたかのようにアフガニスタンで用水路作りという大事業まで発展させていく様が、個人的に人間味があってめちゃくちゃ好きでした。
大きなビジョンを持って活動していたわけじゃない。ただ、人として真摯に向き合いコールアンドレスポンスを繰り返すことで大事業にまで発展させる。これを「セロ弾きのゴーシュ」というところが謙虚すぎて、中村哲さんのことが好きになりました。私もおごらず真摯に人を見つめて仕事しようと思いました。
ちなみに、私はセロ弾きのゴーシュをAudibleの世界の童話シリーズ(イエローバード・ベストセレクション(6))で初めてちゃんと知りました。宮沢賢治だったのですね。小学校とかで習ったのかな!?名前(タイトル)だけは知っていましたが。
[自然農法]わら一本の革命/福岡正信
1月に読み終わった本。ほぼ一年前ですね。当時は私がちゃんと自然農法を勉強しようと思ってから1年半ほど経った頃で、自然農法のhow本は読んだものの思想はちゃんと読んでなかったので手に取りました。
なぜ自然農法が良いのか?
無肥料無農薬で安全、野菜本来の味がしておいしい、最近だと耕さないことでCO2排出が防げる、などわかりやすい効果を言いがちですが、この本を読んで私が感じた一番良いところは「世界のつながりを感じて共生を考えるフィールド」であるということ。こうすればこうなる、何が良くて何が悪い、世界は複雑で何か一つ決めたとしてもまた別のことが起こる。そうした時にどうするとよいか。それを考え続けるフィールドが自然農法の畑なんだと感じました。
この本で私が好きな一節が以下です。
きっと答えは出ないんだと思います。でも、答えを出そうとするところ、答えというか、こういうことをやっていこう、という合意を取ることを目指さなきゃならないんだろうなって思わせてもらいました。
教育学者の苫野一徳さんのvoicyが好きで聞いているのですが、苫野一徳さんが哲学的思考で弁証法が大事だって語ってくれていて、まさに田んぼを見ながら弁償法をしていこうと著者の福岡さんは言っているんだと思います。答えはあくまで暫定解。これをみんなで編み上げあっていき、みんなが納得する解を求めていく。でもきっと、時代とともに変化もするんだろうから、ここでも「訂正する力」が求められるんでしょうね。
複雑なものに対して、人類はどう挑むか。
自然農法がその答えを考え続けるフィールドだと私は思っています。
困難な成熟・複雑化の教育論 / 内田樹
最後は内田樹さんの本を2冊いっぺんに紹介します。11月と12月に読みました。
読んだきっかけは、私な好きなvoicyのパーソナリティの鳥井弘文さんが結構な割合で内田樹さんの話を引用するので、一度本を読みたいと思って手に取りました。
まずは手始めにAudibleで探すと「困難な成熟」が出てきたのでそれを聴いてみて、なるほど、と思うことが多く思わず、本も購入しました。その後、今年入ったWasei Salon(鳥井弘文さんが代表をされているコミュニティです)の読書会で「複雑化の教育論」が取り上げられたので、こちらも購入して読みました。どちらも近しいことが書かれていたので、同時に取り上げさせていただきます。
たくさんのことをズバズバ言うので、何度か読み返さないと思い出せないところは多いですが、その中で私が印象に残っているところをピックアップします。
一つは、「成熟する」というのは大人になる、と読み替えていいと思うのですが、大人になることは、複雑化することである、と言っているのがめちゃくちゃおもしろかったです。複雑化するってどういうこと!?って感じですが、複雑に考えられるようになるってことで、AだからB、という単純な考え方だけじゃなく、AもBもCもDもあるからXにしよう、みたいな考え方ができる感じです。もうちょっと具体例で言うと、子どもの頃はお腹が空いたからお菓子を食べていたけど、複雑化するともうすぐご飯だからやめとくとか、昨日も食べたから太らないようにお菓子じゃないものを食べるとか、違う要因も含めて考えられるようになることだと理解しています(本書からの引用ではなく、私が簡単に説明した例です)。理性的に考えられるようになるってことなのかも知れませんが。
複雑化の何が良いかって、みんなと合意形成ができるようになるということ。この時にwin-winではなく、lose-lose-loseの関係を作れることが複雑化した人ができることなんだと言っていることがめちゃくちゃしっくりきました。それほどに合意形成って難しい。そこを出発点にしないと揉め事なんて解決できない。仲介人も身銭を切る。それが大人になるっていうことで複雑化させることができる証。大人の役割をビシッと言ってくれた気がしました。身銭を切る覚悟がある人が仲介できるのですね。逆に言うと身銭を切れない人は仲介しなくても良い。そういう優しさでもあるなって思います。
で、このlose-lose-loseの合意形成が「わら一本の革命」の田んぼの前でいろんな人が集まって考えるときの大事な姿勢だなって思いました。全員がwinになるシナリオなんてない。一旦loseになる覚悟を持ち、loseのバランスが取るにはどうしたらよいか、という考えを持たないとダメそうです。
もう一つ良いなと思ったのが、内田樹さんの複雑化の思想が、自分と向き合おうと言ってくれていて、人と同じことならしなくてもよくて、人がしなくて私ならすることに目を向けよう、と言ってくれているのがすごく良かったです。一人で社会を作っているのではない。みんなで、なんなら時系列で過去から未来の人と一緒に社会を作っているので、その中で私の役割があれば良い。大学で授業をする時に、2割の人に届けば良くて、残りの8割は他の先生が届けてくれる。そんな気持ちで望むと、なんか気持ちが楽になる気がしました。
内田さんは厳しいことも言うけど、こういう優しさというか救いみたいなことも言うのがなんか好きです。
最後にもう一つ、複雑化することの良さとして、数値化できないことをあげていました。数値化しないことで、人ではなく昨日の自分と何となくで比較ができる。なんとなくの積み重ねで大人になっていく。それで良いのかなって思わせてもらいました。
余人を以ては代えがたい
いろんことは語っている本ですが、自分らしくを見つめて生きていこう、と言ってくれているのが好きでした。一人ひとりが別々のことを考えると複雑になるのですが、複雑になるので良いんです。複雑な方が成熟した社会なのですから。
少し脱線ですが、複雑化の教育論の冒頭に内田樹さんの合気道道場の建物の話があるのですが、私もいつか学び舎を作ってみたいと思っていて、その時は内田さんの合気道道場を参考に木や漆喰やちゃんとした畳を取り入れたいと思いました。妄想が膨らみました。ありがとうございます。
最後に
今年はいい本に結構出会えたなって思えたので、来年も本との出会いを楽しみに読書ライフを楽しんでいきます。積読がいっぱいあるので、楽しみがいっぱいだー!
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