怖い歌詞
個人的に怖すぎる歌詞3曲の紹介+それに纏わる事柄の紹介。
閲覧注意・トラウマ注意かつ読むのは自己責任でお願いします。
1.スガシカオ / いいなり
1999年発売。スガシカオ3枚目のオリジナルアルバム『Sweet』収録。
1枚目のアルバム『Clover』を出したころのスガシカオは、
9曲めの「イジメテミタイ」を"除けば"割と落ち着いている?曲が多いのだが
3枚目ともなると、もうなんというかスガシカオ自身の性癖なのか願望なのかこういう生々しい曲が多めに入ってくる。
このアルバムに収録されている「310」という曲の歌詞なんかも
すごい歌詞。笑
今でこそ「プロフェッショナル 仕事の流儀」のエンディングで使用された
「Progress」などのヒット曲で、人間味のある応援歌を歌ってくれるイメージがついているような気がするスガシカオだが、
10代のころは山塚アイやJOJO広重率いるノイズバンド「ハナタラシ」や「非常階段」などの破滅的なノイズミュージックを愛聴していたそう。
山塚アイはボアダムスの中心人物としてご存知の方も多いはず。
このハナタラシや非常階段、ライブでは猫の死骸をチェーンソーで切り刻んだり、
女性メンバーがステージ上で放尿したり、ビール瓶を割って客席に投げ入れたりと散々なものだったそう。
当時のスガシカオは恐怖を感じライブには行けていないものの、
ライブVHSを購入し、自宅で観賞していたという。
そのころの抑圧された体験や欲望が小爆発を起こしながらスガシカオというアーティストを徐々に形作っていったのだろう。
こういう紹介をしといてなんだが、このアルバム『Sweet』は本当に名盤なので、ぜひ先入観を取っ払って聴いていただきたい(無理?)。
2.ユニコーン / エレジー
12:28より
1990年発売。ユニコーン4枚目のオリジナルアルバム『ケダモノの嵐』収録。
多少気の抜けたようなサウンドで始まるこの曲は、1分30秒を越えたところで世界観が一気に変わる。
有名な話ではあるのだが、実はこの曲は1988年から1989年に起きた
「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」の犯人である宮崎勤がモデルと言われている。
下心を隠したパートを奥田民生が、つい本性が現れてしまうパートは阿部Bこと阿部義晴が歌う。
曲中に「映画が好きなの」という元おニャン子クラブ渡辺満里奈の声が入るのだが、
この不穏な曲とおニャン子クラブの組み合わせがなんとなく可笑しい。
前述のスガシカオもノイズミュージックを聴く傍ら、おニャン子クラブの熱烈なファンでもあったそう。
DV(ドメスティック・バイオレンス)という行為があるが、
この行為は、加害者の支配欲が「暴力」という歪な形で表れたもので、加害者はこれを「愛情行為」の1つであると勘違いをしており、往々にして加害者側が暴力をふるった後に優しく振る舞ったりするという。
狂気と愛情は割と近いところに存在していることが、この曲や前述の「いいなり」を聴いててよく理解できる。
3.ヤプーズ / 肉屋のように
1987年発売。ヤプーズ1枚目のオリジナルアルバム『ヤプーズ計画』収録。
「ヤプーズ」と聞いてピンと来る方もいると思うが、この「ヤプー」とは、
沼正三の1956年の小説『家畜人ヤプー』から取られたものだ。
何年か前に石ノ森章太郎が描いた漫画版の『家畜人ヤプー』を読んだのだが、内容が内容なだけに途中で気分が悪くなって読むのを断念した。
調べてもらえばあらすじは出てくるのだが、
簡単に述べると・・・
西ドイツの山間部に空飛ぶ円盤が墜落。 留学中の日本人と婚約者であるドイツ人女性は墜落現場で白人女性・ポーリーンの命を救う。 彼女は2000年後の未来からやってきた未来人であり、その未来世界では日本人は「ヤプー」と呼ばれる家畜と同じかそれ以下の扱いを受けていた、という話。
この「ヤプー」を冠するバンドの中心人物があの戸川純である。
これは戸川純にしか書けない歌詞だわ・・・。
4.サブカルとアングラ
これまでの3曲、3組に共通のキーワードを見出すとすれば、
「サブカル」や「アングラ」のように思う。
最近の「サブカル」と呼ばれるものは、個人的にはむしろ陳腐なメインカルチャーのように見えるのだが、80年代後半から90年代はじめのそれらは成熟期を迎えていた。
今やれっきとしたメインカルチャーアーティストであるスピッツなんかも、
初期のアルバムは当時のヒットチャートの曲たちに対抗するような内向的で暗い雰囲気の歌詞の曲が多く存在する。
びっくりなのがスピッツ3作目オリジナルアルバム『惑星のかけら』のアナログ盤にはコミックがついており、その作者がなんと根本敬なのだ。
根本敬といえば「特殊漫画」、「電波系」という言葉を生み出した漫画家?エッセイスト?で有名だ。
個人的にはこの根本敬がサブカルとアングラの橋渡し的存在な気がおり、
私も学生のころに、この根本敬をきっかけにして絶望的な漫画を描く山野一の「四丁目の夕日」や、ねこぢるの漫画読んだりしていた。
そしてその頃、村崎百郎、青山正明の存在も知り、「鬼畜系」なるものが存在することも知った。
青山正明が編集長を務めた雑誌などは正直存在すら知りたくなかった。
しかし、前述したスガシカオやユニコーン、戸川純、スピッツもおそらく
程度こそあれどこういった文化に触れているはずで。
そういう文化、時代が生み出したものをただ否定するのではなく、
軽くでもいいから「知る」ということは大事なように個人的には思う。
簡単に多様性が叫ばれる今の時代、
人によっては「害悪」とも言えるものも存在していいのか?
歌詞を通してでもこういった、いわゆるマイノリティーなものに思いを馳せたいと思う。