あてのない旅②台湾
1.濃い半日
21時過ぎに到着した台東。
なんとかタクシーを拾い、向かった宿は「金安旅社」。
宿に着いたのは22時を過ぎていたが、宿に明かりがついていて
扉をノックするとおじいさんが温かく迎え入れてくれた。
1泊1200円とか1500円だった気がする。
テレビをつけると台湾の学生たちのデモのニュースが。
比較しても全く意味ないことだが、自分と同じ年代の子たちが
国を思い、一生懸命行動する姿を見ると自分が少し恥ずかしいような気持ちになる。
夜ご飯を食べていないことに気付き、
運良くやっていた宿の前のご飯屋さんで夕飯を食べることに。
日本のご飯屋さんとシステムがかなり異なり、戸惑っていると
後ろから「日本人?」という声が。
振り返ると日本人と思われる老人と台湾人の老婆がいた。
ご飯の注文の仕方を教わり、一緒にご飯を食べた。
老人の名は中村さんと言い、日本で貿易の仕事をしたのちに、
台湾人の奥様である秋月さんと結婚し、今は台東で「明日香」という日本料理屋をしているとのことだった。
ご飯を食べながらいろいろな話をした。
台湾の歴史や東日本大震災のことなど。
この年の2014年は、福島の原発を恐れて台東に逃げてきた日本人も数人いたらしい。
なんとなく別れが惜しく中村さんの名刺をいただき宿に戻る。
宿のテレビではまだ台湾のデモについて熱い議論が交わされているようだった。
そういえば今日の昼に、台湾着いたんだよなと思い、なんだか笑えた。
2.夜空の下で
2日目はあてもなく台東市内をウロウロ。
街が海沿いにあるので海を見に行ってみた。
2001年まで使われていたという旧台東駅が「台東鉄道芸術村」として
観光地化されていて興味深い。
夜まで散歩したあと宿に帰り、少し寝そべっていると
僕宛てに電話が来たと宿のご主人。
出てみると中村さんだった。
台東の人たちが集まる夜景スポットに行こうというお誘いだった。
是非とお願いすると、すぐ車で秋月さんと迎えに来てくれた。
夜の山道を行くこと約15分、着いたのは「星星部落景觀咖啡」という
ランタン片手に夜空の下で、軽食やお酒を飲み語らうという素敵なスポット。
確か僕は、あたたかい柚子のお酒をいただいた。
中村さんと秋月さんと色々話をした。
自分の今の状況や、台湾の話、過去や未来の話など。
昨日知り合った人と異国の地で語り合っている状況が嬉しかった。
お互い明日には違う人生を歩いていく。
「袖振り合うも多生の縁」という言葉があるが、僕が中村さんや
秋月さんと出会ったのも何かの運命によるものだったんだろうなと思う。
中村さんがされていたお店を気になって調べてみたが
もうお店を閉められており、今となっては連絡を取る術もない。
続く
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