あてのない旅③台湾
1.想定外のサイクリング
昨日、中村さんに勧められた『水往上流』に行くことにした。
この水往上流、「水の逆流」を意味しており、水路を流れる小川が流れに逆らい上に登っているという珍スポットらしい。
目的地まではバスで行くことができるらしく、ターミナルでバスを待っていたのだが、なかなか来ない。
痺れを切らし、案内所で聞いてみたところ6月まで運休しているとのことだった。
予定が何もなくなったため、急遽自転車を借りてサイクリングをしてみることに。
この台東エリアはサイクリング専用道路が整備され、豊かな自然のなか気持ちよく自転車を走らせることができるコースがいくつもある。
しかし、自転車を貸してくれる場所が分からない。
海沿いのあたりをウロウロしていると大きいガレージのようなものがあり、
中を覗いてみると自転車が並んでいた。その隣にはソファに座った厳つい男性が数人テレビを見ながら談笑中であった。
勇気を出し、「ニーハオ」と精一杯の笑みで挨拶。
無言のまま一斉にこちらを振り返ってくる男たち。
早口で何かを話しかけてくるが、一切理解できない。
困り果ててふと横を見ると、壁いっぱいの大きさの日本国旗が飾ってあった。
その意味は分からなかったが、国旗と自分を指差し「アイムジャパニーズ!」と言うと全てを理解してくれたようで、急ににこやかに自転車を貸してくれた。
返却時間はいつなのかなど、聞きたいことはたくさんあったが
笑顔で「オールオッケー」と言われ、とりあえず出発。
数時間、サイクリングを楽しんだ後に自転車を返しに行く。
近くにいたおそらく台湾の方に切り立てのスイカをいただいた。
2.言葉を越えて
宿に戻り少し仮眠を取ったあと、夕飯を食べに行くことにした。
向かったのは『老大衆餃子館』
中国語、台湾華語、英語すべてまともに話せないので、
どうすればいいか分からずキョロキョロしていると
お店の方や客含め全員から怒られた(ような気がするがそれもよく分からない笑)
するとお店の方なのか分からないが、辿々しい日本語で老婆が話しかけてきた。
お酒をごちそうしてくれるらしいので、一緒の卓につき少し話すことに。
辿々しい日本語と台湾華語でスムーズな会話はできないけれど、
「彼女はいるか?」や「わたしをお母さんと呼んで」など日本語で
必死にコミュニケーションを取ろうとしてくれる。
「お母さん」
と呼ぶと急に涙を流しながら僕の手の甲にキスをし、手紙を書いて渡してくれた。
日本に帰国後、台湾出身の友人にこの手紙の意味を教えてもらった。
「私は台湾のお母さんだ。
君を一目見て(息子のように)好きだと思った。
日本語はわからないけど、愛しているよ。お元気で」
------
別れ際に、次に台東に来ることがあれば必ず電話をしてほしいとポロポロ涙を流しながら言ってくれたことを今でも思い出し、泣きそうになる。
続く
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?