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にやけながら 眠りにつく幸せ

 眠りに落ちる瞬間、フワッと体が軽くなって、疲れがどこかへ吸い込まれていくようなあの感覚は大好きなのだけれど、最近は気がつけば朝だったなんて日ばかりで、慌ててベッドから起きだすことがほとんど。

「おやすみなさい、良い夢を」

 眠たくてどうしようもなくて、好きな人へのメールさえ、ありきたりの言葉で結んでしまったり。

 夕方、ショッピングモールを歩いていた時、手をつないだ親子とすれちがった。子どもがおかあさんに聞いている。
「それって、よる、寝たあと?」
「そうよ」
 二人が心待ちにしている良いことは、どうやら、「明日の朝」にやってくるらしい。なんだかかわいらしくて、心がふわんと解ける。

 子どものころ、今日と明日はつながっていなかった。明日がくるのは、よる、寝たあと。良いことを待ち焦がれて眠ったら、きっと素敵な夢を見られるにちがいない。

 さて、私は、幾度となく朝と夜とくりかえしてきたけれど、翌朝の楽しみをワクワクしながらベッドに入ったのは、いつ以来のことだろう。

 子どものころの気持ちに戻ったつもりで、ひとつひとつ考えてみる。朝の楽しみは、たくさんある。

 たとえば、朝ごはん。新しい秋服。寝る前にダウンロードした曲を、聞きながら歩いていく駅までの道。

 今日できることを先延ばしにする「明日やろう」はやっぱり好きじゃないけど、翌朝をハッピーにするための「明日やろう」は素敵だ。甘い甘いシロップをかけたパンケーキを食べに行くのだっていいと思うし。(たまにはね!)

 栞をはさんだ本を手に、ベッドにごろんと横になる。今夜も眠気に勝てそうにないから、読み進められずに眠りに落ちてしまうだろうけど、明日の朝はあれしようこれしようって考えると、にんまりと眠ることができる気がする。

 今日がどんなに美しくても、あるいはおぞましくても、私たちは誰一人この日に立ち止まることはできない。私たちがもし自由の鳥になれるのだとしたら、ちいさな希望を明日に託すために、今日を飛び越えてゆく時なのかもしれないな。

 新しい結びの言葉はこんなふうにした。

「おやすみなさい、よい朝を」




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いつも読んでくださってありがとうございます:)

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西平麻依
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