メルボルンの蚤の市で運命の出合い | いいこと思いついたな日
最近、カメラがほしいと心から思った瞬間がいくつかあった。
フィリップアイランドを訪れたときのこと。
大海原から発生した巨大な波が山のような岩にぶつかり、花火大会のフィナーレのように大きな音を立てて大きく弾けた。あの迫力満点な瞬間を捉えておきたかった。
サウスバンクという港を散歩したときのこと。
青空と太陽の下でボートが気持ちよさそうに行き来きしていた。そんな楽園を前に、ぜひともシャッターを切りたいと思った。
カメラならiPhoneにも搭載されている。
でもなんだろう?重みが違うように感じるのだ。
iPhoneのカメラで写真を撮るとき、私は「とりあえず収めておこう」くらいにしか思っていない。
とりあえず大量に撮り、後から全く見返さない。
そんなこんなで、最近はGoogleフォトの私のプロフィール写真の辺りに黄色のビックリマークが付き纏っていた。
写真が多すぎて容量がギリギリらしい。
そして「アップグレードしますか?」としきりに尋ねてくる。
そのとき、初めて過去に撮った写真を見返した。
私は驚いた。
同じようなセルフィーや風景や料理ばかりが並んでいて、難易度の高い間違い探しをしているようだった。
大量の写真を撮り、ほとんど振り返らず、月額を払いながら容量を拡大していくくらいなら、どうしても切り取っておきたい瞬間だけを収め、あとは目にしっかりと焼き付けておきたい。
そう思い
ご縁があれば、初心者でも簡単に操作できそうなデジカメを買おうと思ったのが水曜日のこと。
その「ご縁」は、なんと数日後にやってきた。
今朝、寝ぼけ眼で今日は何しようかなぁ〜と考えていたとき、ふと蚤の市に行こうと思い立った。
メルボルンには毎週日曜日に開催されているキャンバーウェルサンデーマーケットという大きな蚤の市がある。
一度足を運んだっきりになっていたけど、天気も良くて早起きできたのでよし行こう!と早速着替えてお化粧をした。
久しぶりに訪れた蚤の市は活気に溢れていて、古き良きおもしろきアイテムで溢れかえっていた。
海軍の偉いさんが胸元につけてそうなトリコロールのついた星のバッジ、艶々の貝殻、望遠鏡など、ショッピングセンターでは見られないレアアイテムの宝庫。これだから蚤の市はたまらない。
ひと通り回ったから帰ろうかと思った矢先
たくさんのビンテージカメラを売ってるオージーの商人を発見した。
カメラだ!!!と思い、私は吸い寄せられた。
売っていたのは、ガタイがよく日焼けした40代くらいのお兄さん。
人がわんさか集まり、ハウマッチ?と尋ねられ爽やかに対応をしている彼の近くで、私はまじまじとカメラを見つめていた。
色んな形、色んな太さ、色んな色のカメラがあり、美しいな…と思った。
見惚れていると、突然お兄さんがニカッと微笑み
と言って、正方形の黄色いカメラを私の目の前に差し出した。
ラインナップの中のひとつを私に差し出し、私は蚤の市を行き交う人々を撮った。
カシャっと捉えた瞬間、なんだか嬉しくなった。
お兄さんは「な、いいだろう」と微笑んだ。
素敵なフォトグラファーがかつて愛用していたカメラたち。
このお兄さんからカメラを買いたいと思った。
数ある中から私の目を引いたのはRicohの小さなカメラだった。
というのも、私の名前はリコで、苗字のイニシャルがHなのだ。笑
まるで自分の名前がカメラに彫られている気がして、愛着が湧いた。
見つめていると、お兄さんが「このカメラよかったよ」と言って、使い方を教えてくれた。
説明書を見てもサッパリ分からないので、目の前で使い方を教えてくれるのはとてもありがたい。
操作方法はシンプルで、これなら私も操作できるかもしれないと思った。
ポケットにすっぽり収まりそうなサイズ感と見た目も気に入った。
これ、買います!!!
私はカメラを引き取った。
興奮した私は、帰りのバスに揺られながら、このカメラをどうやって使おうか考えていた。
電源を入れてみた。
すると、お兄さんが過去に撮ったであろう写真が何枚か出てきた。
お家のリビングに置かれてたであろう赤とオレンジの果物に、おちゃめな女の子。娘だろうか。
その娘らしき写真を見て
そうだ!!!!!!と思いついた。
私はこのカメラを使って
人や人と過ごした瞬間を撮りたい。
数ヶ月前にフィルム翻訳をしたとき
主人公の男性が事あるごとに人の写真を嬉しそうに撮っていて、その写真の数々がクライマックスの回想シーンで流れてきてとても感動したのだ。
それを見て、人の写真っていいなと思った。
家族、友達、恋人、愛犬、旅先でふと出会った覚えておきたい人の顔…
誕生日会、ある年のクリスマス、夏祭り…
大事に切り取って
いつかアルバムを買い
私の人生に登場した人物と、その人たちと過ごした瞬間を詰めこもう。
とてつもなくエモくないか。
最近、手放した分だけ新しいものが入ってくるという記事を書いた。
私は数週間前
インスタグラムのリア垢を手放した。
10年の年月が詰まったデジタルルバムの中には、アーカイブを合わせると西暦を遥かに超える枚数の写真が眠っていた。
それを思い切って手放してみることにしたのだ。
その結果
自分の名前が刻まれた小さなカメラがやってきて
新たなアナログの思い出アルバムが誕生しようとしている。
蚤の市での運命の出合い。
オージーのお兄さんへ
私があなたのカメラを引き継ぎます。
そしてあなたのように、覚えておきたい人や瞬間をたくさん撮ってみます。
SDカード買いに行こう(^O^)
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The journey will be continued…