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どんなクリスマスでも
10年程前の今頃、私は仕事に追われていた。
その頃の私にとって、クリスマスは「祝う日」ではなく「働く日」だった。
まだパティシエとして働いていた頃、クリスマスが近づくと仕事は一気にピークを迎える。
冷えた厨房でホイップクリームを泡立て、大量のイチゴを切り、ケーキのデコレーションに追われ、深夜まで手を動かし続けた。
笑顔でケーキを買いに来るカップルや家族たち。
キラキラしたその姿がどこか遠い世界のものに見えて、心にぽっかり穴が空くような寂しさを感じていた。
あの頃の私は、ケーキを作る側。
でも、まさか10年後の自分がそのケーキを、旦那さんや子供たちと囲む側になっているなんて、あの時は想像していなかった。
それでも、あのパティシエ時代の忙しい日々がなければ、この幸せに気づけなかったかもしれない。
仕事に追われながらも、ケーキひとつひとつに思いを込めたあの日々が、懐かしく感じる。
私は誰かと一緒に過ごすことの温かさを知らないまま、自分の世界に閉じこもっていたのかもしれない。
それから10年程経った今、目の前には小さな手で大好きなイチゴを頬張る子供たちと、
「ゆっくり食べてね」と笑顔でそれを見守る旦那さんがいる。
ふと気づけば、私が欲しかった「誰かと一緒に過ごす温かさ」は、こんなにも近くにあったのだ。
でも、10年前の私に伝えたいのは、ひとりの時間もまた、決して寂しいだけではなかったということ。
ひとりのときに夢中になった本や映画、深夜のひっそりした街の空気、そして自分自身と向き合う静かな時間。
それは今になって、私に「自分を知る」力を与えてくれていると思う。
クリスマスの過ごし方に「正解」なんてない。
家族と過ごす人も、恋人と過ごす人も、友達と過ごす人も、ひとりで過ごす人も、仕事に一生懸命な人も、それぞれの時間が特別でかけがえのないものだ。
だって、その一瞬一瞬が、未来の自分の幸せを形作るピースになるのだから。
そして、今どこかで忙しく働いている人たちにも伝えたい。
その手が、その思いが生み出すものが、どこかの誰かの幸せを作っているということを。
今年のクリスマス、私はあの頃の自分にそっと伝えたい。
「大丈夫、ちゃんと休める日が来るよ。そして、その日はこんなにもあたたかくて幸せだよ」と。
全ての人に幸あれー”Wishing you peace, love, and joy this Christmas. Merry Xmas!”