「すっぴんなんですね」の本当の意味

自宅から、猛ダッシュで1分ほどの距離に知り合いの男性が住んでいます。

それって、ご近所さんなんじゃないの?って思われるかもしれないけど、ご近所さんというのは、そこに住むことによって交流がはじまった場合で、この場合は、別の場所で交流がはじまり、そのあとで「えー、あたしとあなたってこんなに家がちかいのー」と気づいたって意味です。

その男性とはライブハウスで知り合いました。

同じバンドのファンで、ライブハウスからぞろぞろと帰るとき、駅に行っても、電車に乗っても、乗り換えても、「あれ?あの人、ライブハウスからずっといっしょだよね」って思う人がいて、むこうも自分と同じ顔をしていました。

なんとなく、流れで乗り換えた電車の中で会話をし、「じゃあここで」と降りようとしたら、その方も気まずそうに「あ、ぼくもここで」と足をそろえるように電車からおり、改札口も、出口も同じで、なんと、そこからも同じ道。

あ、わたし、職業が作家でして、作品の中で偶然のオンパレードみたいなことよく書くんですけど、歩きながら、「本当にこんなことあるんだー」って心の中でさけんでました。東京ラブストーリーがどこからかともなくきこえてきそう。

で、こうなると、男性のほうが気を使ってくださるものです。いろいろしゃべっているうちに、使っているコンビニとクリーニング屋が同じことが判明し、「じゃあ、ぼくここで」と明るくさわやかに、あるマンションに入っていきました。

そこは、わたしの家から、信号が青で、猛ダッシュしたら1分で着きそうな場所でした。

それから、ライブハウスで会うたびに「意外に近所じゃ会わないねー」と笑っていましたが、先週、とうとう、出会ってしまいました。

ある日の夕方。私はウォーキングの帰りで、スッピンにジャージでした。汗をかいたので涼もうと本屋さんに入ったらそこでばったり!

私「〇〇さーん」相手「あ!初めて会いましたね!」

そして、その方は私の顔を見て「すっぴんなんですね。じゃあ、ぼくはこれでー」と軽やかに本屋を出て行かれました。

私はそのあと、本屋をうろうろし、涼んでいるとふっと思いました。「すっぴんなんですね」……が急にひっかかりだしたのです。そんなに塗る前と塗った後とちがうのかいー。いちいちネタにしなくてもいいのにー。

と、そのときは思っていたんですが、数時間後。

ある男性にその話をしたら「それは、『あんまり変わらないですね』のほうの意味なんじゃないですか」と教わりました。たしかにそっちのほうが辻褄があう。

けど、だとしたら、出かける前に一応10分ぐらい鏡の前でごにょごにょやってるあの時間は意味がないってことなのかな????と別の意味で複雑になりまして。

でも、でも、それより、なにより、「すっぴんなんですね」って言葉だけで半日ぐらい、騒げた自分が、ああ、まだまだ、乙女なのねーって、ちょっとうれしかったんです!!!へへへのへ。

あ。ちなみに、私とその方が好きなバンドは現存している唯一のアドベンチャーロックバンド「私の思い出」っていいます。

本日、登山の日。最近ボーカルの登山正文さんがnote始めたそうです。




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