大きな綿雪
大きな綿雪、見たことありますか?
今その場で、片手の人差し指と親指の先を合わせて輪を作ってください。
私が子どものときに住んでいた地域では、その輪よりも一回り小さいくらいの柔らかい雪の塊が、空から降ってくることがありました。
私の出身は北国なので、冬には毎年雪が積もりました。
雪が積もると除雪車が通って、道路上の雪を道路の横によけていくため、通学路のあちこちには雪の山ができました。
小学生のころは、下校のときにその雪山に登ったり、雪合戦をしたりしながら帰っていました。
雪は身近なものでした。
少し話はそれるのですが、私は小学生の時にピアノを習っていました。
そのピアノ教室では、年に一回、冬にピアノの発表会がありまして、近所に住んでいる同じ学年の友だちもそこに通っていました。
確か小学校4年生の時のピアノの発表会、の舞台袖で、その子がしきりにまつ毛を触っているのが気になりました。
どうしたのと聞くと、その子は「今日は発表会だから、お母さんにマスカラを塗ってもらったんだ」と言いました。
私はその当時メイクをしたことがなかったので、その子が急にとても大人びて見えて、衝撃を受けたのを覚えています。
“マスカラ”というものも、その時初めて存在を知りました。
どういう効果のものなのかもよく知らなかったので、語感がマラカスみたいだな、というのが第一印象で、そのあとまじまじとその子の顔を見て、大人だ…と思いました。
当時その子とは、よく一緒に学校から帰っていました。
その発表会から数日たったあと、いつものようにその子と帰っていると、大きな綿雪が降ってきました。
特に傘をさすほどではなかったので、2人して全身に綿雪を浴びながら歩きました。
私が先だったかその子が先だったか、綿雪が2人のまつ毛にのりました。
綿雪は大きくてふわふわとしているので、まつ毛にものりますし、まつ毛は温かいわけではないので1度のると少しの間とどまるんです。
それで、私は「マスカラだ!」と言いました。
友だちもなにを言わんとしているのかがすぐにわかったようで、2人でできるだけたくさんの綿雪をまつ毛にのせられるように、空をみてふらふらしながら帰りました。
この記憶が強く残っているのは、「マスカラだ!」の一言だけで友だちに自分の感覚が伝わったことが嬉しかったからだと思います。
その一言で、先日発表会で見せてくれたマスカラを塗ったまつ毛と、今のこの綿雪がのってるいるまつ毛で、ごっこ遊びができることが、共通の認識として互いにすぐわかりました。
もしその時一緒にいた子が他の子だったら、私は「マスカラだ!」を言わなかったと思うし、もしピアノの発表会でその子がまつ毛を触っていなかったら、その子のお母さんがその子にマスカラを塗っていなかったら、、1つでも何かが違っていたら、この思い出はないはずです。
そう思うと、ちょっと奇跡的だなと思います。
この楽しい思い出を思い出すことができるので、私は大きな綿雪が好きです。
おわり!
あとは告知です🌠
【次回出演情報】
劇団トキワ第3回公演
6月25日(土) 26日(日)
詳細は追って公開していきます😉