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The Jam 『All Mod Cons』

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🎧 The Jam『All Mod Cons』

The Jamは6枚のスタジオアルバムを残しているが、私はこのサードアルバムが一番好きだ。『Setting Suns』『Sound Affects』と迷ったが、一番The Jamらしい唄、曲、演奏なのがこのアルバムだと思う。

出会い

私は、解散後にリリースされた『The Snap』という二枚組のベストアルバムからThe Jamに入った。もちろん聴いた事はあったがなんせ田舎なのでThe PoliceのレコードはあってもThe Jamはない。日本では彼らほどの人気は無かった。田舎ではよほど人気のあるバンドでないと一枚売れても補充はない。初めて聴いたのは1979年の年末にNHK-FMで放送された70年代を総括する特番番組だったと思う。QueenやDavid Bowieから当時デビューしたてだったPat Benatarまで錚々たるバンドの中にThe Jamの「The Eton Rifles」が入っていた。

パンクじゃないですモッズです

1977年のパンク全盛期にデビューしているが、当時からタイトなスーツを着こなしたおしゃれさんのPaul Wellerはとても華奢で大人しい性格からステージを降りると小突かれたりひどい目にあったことがあったらしい。
何でもかんでもパンクだ、グランジだと「よう聴いたら全然違うやん」ってバンドが時代の流れに巻き込まれているのはよくあるが、The Jamはまさにそれだったのかもしれない。The Jam = デビュー曲「In The City」と思われがちだがパンクっぽい曲はそれ以外にほとんどない。『The Snap』にもファーストとセカンドからは各1曲しか選曲されていない。なぜだろうと思って各アルバムを聴いて感じるのは、デビュー当時のパンクブームに飲み込まれ自分たちらしい音楽ができていなかったのではと思う。そう、彼らはパンクではなくThe WhoやDr.Feelgoodらから引き継がれるモッズバンドなのである。

我が青春の光

1979年に映画「さらば青春の光」(原題:Quadrophenia)という素晴らしいイギリス映画が公開された。The Whoのロックオペラ『Quadrophenia』(四重人格)というアルバムを元にした映画で、全編モッズファッションとThe Whoやモータウンの音楽で大好きな映画だ。The PoliceのStingが俳優として出演している。私は高校の時にテレビで観て号泣して以来、何回観てもラストに近づくと泣いてしまう。泣かずに観るのは無理。大学で女友達と観てドン引きされた。それはこの映画のどこで泣くのという意味のドン引き。バイク(日本でいう原チャリなんですが、まあカッコイイ)と仲間だけが人生の全てという若者が、青春を共にした仲間たちが大人になっていく中で取り残されていき…という話なのだが、書いてるだけで泣きそうになってきた。1979年にこの映画がヒットして時代はパンクからモッズとスカの時代に移行していった。その二大バンドが、モッズはThe Jam、スカがThe Specialsだ。The Jamは1977年に「In The City」でデビューした人気パンクバンドだったが、80年代にはすでにモッズと呼ばれていた。The Whoも自分たちの後継者が現れたのはThe Jamだったと言っていたと聞いたことがある。

おらが街のバンド

ブリティッシュインベージョンでイギリスのバンドが次々とアメリカで成功するのをよそにThe Jamは最後までアメリカでは人気が出なかった。出なくて良かった。ところがイギリスの音楽雑誌では軒並み1位になる。ベストバンド、ベストライブパフォーマンス、びっくりするぐらい解散するまで人気を維持して大人気のまま解散してしまった。ちなみにThe Policeはダサいバンドでいつも1位。

曲を聴いてもらえば分かるがとにかく演奏能力が高い。正直Paul WellerのバンドだがThe Jamの人気を支えているのはBruce FoxtonのベースとRick Bucklerのドラムなのは明らかだ。特にThe JamとThe Smithsはベースが全て。にしても、なぜイギリスだけでこれだけの人気があったのだろう。それは地下鉄をSubway(米国式)ではなくTube(英国式)と呼ぶ地元愛ではないかと思う。そう彼らは世界的な人気になったThe Policeとは違う、おらが街のバンドなんであろう。彼らの音楽はイギリスの小さなライブハウスがよく似合う。頑張って地元ウエンブリースタジアムはいいが、アメリカのステイプルセンターやマジソンスクエアガーデンで演奏するようなバンドではないのだ。イギリス人にとっては、そうはなって欲しくないバンドというのが正確かもしれない。

とにかくイイバンドです。6枚のアルバムはどれもイイですが、特に後半の4枚はそれぞれ全く違う魅力がありますので、機会があればぜひ聴いてみて下さい。「Dig The New Bleed」というライブアルバムもThe Jamのライブの変遷が聴ける素晴らしいアルバムです。スタイルカウンシルファンの方にはラストアルバム『The Gift』がオススメです。モータウン調のアルバムでスタイルカウンシルとしてリリースされていてもおかしくない内容です。

The Jamといえばこの3曲。音楽もそうだがファッションが好き。Rickenbackerの楽器もカッコイイ。これのどこがパンクなん?。


私はこのアルバムにも収録されているこの曲が好き。

リンクで貼るには長すぎかもしれませんが、とにかくカッコイイライブなのでお時間があるときに観て下さい。特にBruce Foxtonのベース。ちなみに概要欄の曲名が2曲目からになっていますが、1曲目は「Strange Town」というこれもThe Jamを代表する曲です。



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