デンマークの「今を生きる」女性達
デンマークの女性首相メッテ・フレデリクセンは、昨年史上最年少の若干41歳で首相に就任した。「若い」「女性首相」というだけで注目度は抜群で、トランプ大統領のグリーンランド買収計画などの話について、国民や国内メディア向けのストレートな発言が取り上げられ物議を醸したりした。
また有事の際に国民に向けた速やかで理解しやすいメッセージの発信は国内外からそのリーダーシップを称賛された。人口580万ほどの小国といえども、日本よりはるかに進んでいるであろう北欧のジェンダー平等社会への推進力がうかがえる。
女性の社会参加も積極的だけれど、私が接した周りの女性達から受ける印象も”自由”に個人を生きているという感じがするのだ。
デンマーク人の「今ここ」を楽しむ恋愛や結婚観
このフォルケホイスコーレにいる年配層の人達と話していると、バツ1バツ2は当たり前で、今の彼氏の話をしたりする。また男性も同様、2度の結婚相手との間にそれぞれ子供がいて、その孫達とも良好な関係を築いている。
そして若者もそれは当然のように、「ママの今の彼氏」や「パパの今の奥さんに子供がいて」とか、サラっと会話にいろんな「身内」が登場する。
え、ほぼここにいる人達みんな?こういう自由を満喫する場所だから、そういう人達が集まるのか?と思ったけれど、デンマーク全体でも離婚率は50%近くあるから、歩けば当たる位多いのだ。事実婚的なカップルもいるが、「浮気や不倫問題はどうか?」と聞いてみた。
「同時進行する必要、ある?」との返答。相手との関係が終われば次に行けばよい、というシンプルな考え方だ。もちろん中にはコッソリの人達もいるのだけど、それはナンセンスだという意見。みんなが本音を言っているかはわからないが、特に話題になるほどでもないのか。日本のいわゆる「仮面夫婦」なんて、理解が難しいかもしれない。
デンマークは社会保障の手厚さもあり、オンラインで離婚もできてしまうのだからそれは当然加速する。国も歯止めをかけるために離婚手続きに「ウェイテング期間」を設けるなどしているようだ。
彼らはまさに「今ここ」を当然のように楽しんでいる。街の外食は高いし飲み会文化もそれほどなければ、出会いそのものや「娯楽」と呼べるものも限られているから、自分達でどう楽しい時間を捻出するかに余念がない。
デンマーク流”Hygge(ヒュッゲ)”という幸せの概念は「親しい人達とのふれあいや居心地のよい時間」というような意味だが、これを体現するには自分達の暮らしや家を整え、満足感を得ることが重要になる。
日本人の結婚観や家族制度はまだ伝統を重んじる人も多く、その恩恵を夫婦双方が存分に受けてハッピーであれば問題ないのだが、時に閉塞感や「寂しさ」を感じていたり、自己の解放の仕方がわからない人も多い。
社会的な体裁なしに「個人」がどう生きていきたいかを問う場というのは、(特に年齢が高いほど)まだまだ少ないように思う。
フォルケホイスコーレのパワフルな女性達
さて、このフォルケホイスコーレにいる独身の年配女性達もとにかく元気で愛らしい!70代の独身インガリーゼは毎日ピンクや赤の服を身にまとい、おしゃれを楽しんでいる。留学生とも積極的にコミュニケーションを取るし、とにかくよくしゃべるし動き回る!姉は老人ホームにいるけれど、彼女はフォルケホイスコーレの気ままなコミュニティを選択したようだ。
50代のカレンはインドのドッグガーデンで保護されていた犬を2匹引き取り、この学校に滞在しながら世話をしていた。アートを楽しみ、社交ダンスやヨガも上級レベルでスタイルも抜群。不要になった洋服などを私達に分けてくれたり、女性の憧れのアネゴ的な存在だ。
デンマークのフォルケホイスコーレに滞在して4ヶ月経つが、何だか温かい第二の故郷のような居心地の良さを感じる。デンマーク人は個人を尊重する関係性に長けているし、いつも穏やかで微笑みながら気配りのできる素敵な人達だ。
こういう大人の「学び」の場や、気軽に新しい人達と触れ合える環境はとても新鮮だ。何歳になってもこんな風に自由に「自分の居場所」を選択できるというのは幸せなことだ。フォルケホイスコーレという場所は日本人にとって、多様な価値観を知るいい機会になるのではと思う。
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