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日本料理をふるまうおはなし。

先日、テレビの街頭インタビューに出ていた留学生が「インド人だからって毎日カレー食ってるわけじゃないよ!」って嘆いているのをみましたが、
国籍や地域柄って不思議とその人への強烈なインパクトと偏見を残します。

韓国人はキムチを食べて、ドイツ人はビールが好き。
ブラジル人はサンバを踊るし、イタリア人は女好きでナンパ上手。

実際その国の人に会うとそうでもなかったり、意外なお国柄を発見したりしますが(本当にイメージ通りの時もあります)、多分私たちも同じように寿司を食べて、一日中働いている、サムライのような人種だと思われているのだと思います。


オーストラリアのメルボルンを訪れたときのお話です。

メルボルンにはカイルくんというお友達がいて、彼を訪ねることがそこに立ち寄った目的でした。
5日間の短い滞在でしたが、家に泊めてくれたり、大学を休んで観光案内してくれたり、物理的に本当にお世話になりました。(ありがとう)

そして最後の2日間で、私たちは1泊2日のロードトリップに出かけることにしました。


行き先は、世界一美しい海岸道路「グレートオーシャンロード」。
全長260kmの海岸沿いで、自然を楽しみながら Twelve apostles という絶景名所を目指すドライブです。カイルくんの運転で。(本当にありがとう)

大都会メルボルンのビル群を過ぎ、大型の食品スーパーや家電量販店に挟まれた巨大な道路を抜けると、オーストラリアのお尻の海岸道路へ出ました。

途中のBells Beach。
今日の写真たちはカメラが趣味のカイルくんが撮ってくれました。


道中では、海岸沿いの小さな街で(きっと地元で獲れたお魚の)美味しいフィッシュ&チップスを食べて、いくつかの自然公園に行きました。

特に印象的だったのは、彼に案内してもらった名前も知らない樹林地帯。
彼がRed Treesと呼んでいたけど、その名の通り小さな山の川沿いに生い茂る赤茶のおーーーーっきな木たちは圧巻でした。

高さ10mくらいは余裕でありそうな巨大樹たち。
これは写真を撮ってるとわかっててそれっぽくポーズとりました。
初冬ながら日差しの強い日でしたが、森の中はひんやりと涼しかったです。


そんなこんなで、目的地に着いたのはちょうど夕暮れ時。

よくデフォルトでPCの壁紙になっているTwelve Apostles。
事前情報ゼロの私も流石にここは知っていたので、「サンセットに最高だね」というと「計算通りだよ」と。
さすが現地民すぎる神案内です。(まじでありがとう)

夕暮れは、カメラを構える間も無く早々と沈んでいく太陽を岩の背に見ながら、静かに物思いにふけりながら過ごしました。

これは翌朝に日の出を見に訪れたTwelve apostles。
海側はこんな感じ。
一面の広大すぎる海からやって来る波の音が荒々しく鳴り響きます。
この海のずっと先は南極です。


ここには夕方と翌朝の2回来ましたが、壮大な海を照らす空のグラデーションには見惚れながら色々な考え事をしていた気がします。

当時のInstagramのストーリーでは、
「壮大すぎる海がつくる絶対的な圧力とその美しさに生としての意思を捨てたくなるような、同時に自分を囲むすべてを抱きしめたくなるようなそんな気持ちでした。」と書いていましたが、人の生活から離れた絶景のスケールと美しさには恐怖と感動を同時に感じました。

正直な感想の反面、振り返ると結構なポエムで恥ずかしいですね。


さて、やっとタイトルに戻れそうですが、その夜はすぐ近くのPort Campbellという街のコテージを借りて宿泊しました。

彼のおうちでは、お母さんが毎日ご馳走を作ってくれていた(死ぬほどありがとうございます)のに加え、毎日彼にお世話になりっぱなしのこともあり、この日の夕食は私が頑張るぞと決めていました。

せっかくだから何か日本のご飯をつくってあげたいという気持ちがありつつ、寿司は握れないし日頃の自炊も得意料理はハンバーグ。
一体何を作れば良いのか、かなり迷いました。

そのうえ近くのスーパーはもちろん海外仕様なため、食材や調味料選びに大苦戦。米はSUSHI RICEと書いたものが見つかったのでそれにして、みりんや味の素なんてもってのほかなので、思考の末、野菜と肉の味を生かした肉じゃがを作ることにしました。

肉じゃが作ってるはずなのに、鍋じゃなくてフライパン持ってるのはどうしてだろう。


ここからは肉じゃがを作って食べたという話なので特に詳細はないのですが、肉じゃがなんて相当ツウじゃない限り外国人が知っているわけないし、日本ですら外食では食べることない地味キャラです。
それでも、きっと多くの日本人にとっては家庭の味なのではないでしょうか。

調味料が揃わないなか、アレンジしながら美味しく作れたと自己評価は高かったのですが、そもそも口に合うのか分からず不安でした。
しかし彼は美味しい!とおかわりまでしてくれて、翌朝も知らぬ間に食べてくれていました。


冒頭でお国柄偏見の話をしましたが、きっとそれは期待と感心なんだと思いました。その国のことを知らないほど、知っているわずかな情報で人柄を想像をしちゃうけれど、多分その本人には本人なりの自国らしさがあるわけで。
問いかけは「インド人って毎日カレー食べるの?」だけど真意はきっと「インド人の食文化について知りたい!教えて!」ですよね。

ガイドブックの観光モデルも大好きだけど、外国からじゃ見えない現地の暮らしに触れられたときが同じくらい旅にワクワクする瞬間のひとつです。


私は寿司よりキムパプ派だし、労働嫌いだし、きついことはしない激弱メンタルですが、そんな私なりの日本らしさを感じて好きでいてくれるのなら日本人としてこんなに嬉しいことはありません。
なので、これからも海外のお友達にご馳走する機会があれば、自信を持って肉じゃがを作りたいと思います。


ちなみに、バーベキューとコーヒーのイメージのオーストラリア人がよく食べるのはパン屋さんに売ってるソーセージロールだそうです。

カイルくんがご馳走してくれました。(ありがとう土下座)


おしまい。

Great Ocean Road, Australia

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