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大学入試と能力(なのだよ)
いつもタイトルを決めるのに大変苦労するのだが、今回その原因が明らかになった。語尾を「なのだよ」に固定していたからである。知ってた。
この「なのだよ」縛りは、初投稿『徒然なのだよ』に起因する。このとき僕は、うわーうまいこと言ったわ。と。このタイトルのセンスハンパないわ。と。そう感じていたのである。それからと言うもの、僕のブログのタイトルは『〜なのだよ』と決まってしまった。勝手に自分で自分の首を締めていたのである。無様である。あんぽんたんである。
もうね、きついんですわ。なのだよにするの。難しい。自分で始めといてなんだというお言葉ももっともであるが、誠に勝手ながらこの度「脱・なのだよ」すなわち「なのだよ卒業」を決断した次第である。
と言うわけで、今回から「なのだよ」は概念になりました。以後お見知りおきを。
さて、本題。
秋も深まって、僕の勤める塾でもお受験の空気が張り詰めてまいりました。なんて言っても、近年のお受験は数年前とは全く別物になってきている。と、僕は感じている。
ニュースとかよく見る人なら説明は不要だろうが、文科省は大学入試改革を推し進め、その成果として、「大学入試センター試験」が「大学入学共通テスト」になりました。とはいえゴタゴタあって、記述式回答の導入や外部試験の活用は見送られた。
名前だけ変わって中身は何も変わらないじゃないか!と、大学入試も前までと何も変わらないんじゃないのか!?と、そう思っている人もいるのではないだろうか。
否。である。なのだよ。
大学入学共通テストの是非はさておき、大学入試の情勢が様変わりしたのは間違いない。少なくとも僕の身の回りでは。
何が変わったのかというと、推薦入試を受験する生徒がめちゃんこに増えたのである。そりゃもうめちゃんこに。
僕が塾講師を始めた4年前、塾に通う高校3年生はもう全員一般受験。センター試験受けて、2月の私立入試、いくつも受けて。それが変わったのが去年あたりから。推薦入試を受けるからと小論文の受講が入り始め、今年度は僕の受け持つ高3生10人のうち、なななんと9人が推薦入試を受けるのである。
まあ、ここには数字のマジックというものがあって。今の教室に、小論文を教えられる講師がほとんどいないという現状が大きく影響しているのだ。つまり、小論文を教わりたい生徒が僕に集まってくるのである。人気者!!わーい!!そりゃあ推薦入試率が高まって当然。なのだが、それにしてもである。
小論文を教えられる講師がほとんどいないのだって、数年前までは受験で小論文を使う人がとても少なかったからである。明らかに、推薦入試を受験する生徒がめちゃんこに増えたのである。
何故にこんなことになったのか、要因は様々考えられるが、思うに多分、大きいのは2つである。
第1に、大学側の募集人数である。多くの学校で一般入試の募集人数が削減され、推薦入試の募集人数が増えている。中には一般と推薦が1:1なんてところもある。
第2に、高校生の現役志向がある。これは完全に私見であるが、最近の受験生は浪人を大変に嫌っている。これは大学入学共通テストの導入前年から始まった傾向だが、私立大学(特に文系)が枠をどんどん縮小していることも原因だと思う。浪人して学力が上がっても、志望大学の倍率も同時に上がったことで、思うような結果にならない。なんてことが以前よりも起こりやすいのである。
そんなこんなで推薦入試が大人気なわけである。一応添えておくが、以上の分析はもう僕の完全な主観であるし、学術的論拠もないのであしからず。
推薦入試といえば、ネット上であまり良い評判を目にしないことにも言及しておきたい。
曰く、「推薦で受かったやつは一般の勉強した人よりも学力が低い」のだとか。その通りだ!と思った人も、そんなことない!と思った人も、とりあえず最後まで読んでください。たのむ。
実際に教育現場に身を置くと、まあそんな評判を目にするのも不思議ではない。推薦入試を受ける生徒たちは、全てではないが、一般入試の問題や大学入学共通テストが苦手なことが多い。「キミ、一般入試でも受かるやん!」と思ったことが記憶にないのは、1つの根拠である。まあこれも統計的な証明は何一つないが。
でも僕は、彼らを「能力がない」と一蹴するような意見には全く賛同できないのである。
彼らは受験のテストでは点が取れないかもしれないが、大学の定めた合格判定の基準をしっかり満たしている。推薦入試においてそれは、高校での学業成績であったり、顕著な功績をあげた活動だったり、あとは学習意欲が見られるか否か、である。
推薦入試と一般入試では、求められる「能力」が全く違うのである。
一般入試で求められる能力は、それすなわち「総合的な知識と学力」である。テストを受けるその時に、どれだけの知識を頭に詰め込み、それを応用できるか、である。今までの常識では、この能力を「頭が良い」と考えてきたフシがある。
推薦入試では、一度にたくさんのことを覚えておく必要はない。高校での学業成績とは、定期テスト等の成績である。毎回のテストの範囲をしっかり復習し、計画を立てて対策することが重要である。これすなわち、計画的に、継続的に努力すること。推薦入試で求められる能力の1つだと思うのである。
なんなら、受験を見据えて高校入学からずっと気を抜かずに定期テストの対策をしてきたという、その先見の明は「頭が良い」のではないだろうか。
知識をたくさん持っていることだけが「頭が良い」のではない。例え入試問題で点が取れなくとも、「頭の良い」人は多分たくさんいるのである。そしてそういう人を選び出す入試方式が、推薦入試なのである。(そうなの?)
だから、先程取り上げたような「推薦入試は学力が低い」なんて主張は、1つの側面からしか能力を評価していない、視野の狭い意見なのかな。なんて思うのである。
世の中には色んな能力があって、色んな能力を評価できるシステムが模索されているのである。大学入試は、その一端を見せてくれている。ただそれだけである。
そんなふうに考えながら、僕は生徒たちの健闘を祈るのである。みんながんばれー。