なぜ急性期の脳幹出血で呼吸障害が出現するのか? 〜呼吸中枢からの解釈〜
脳出血の1つである脳幹出血ではしばしば生命の危機に至るケースや重症化するケースが多い場合があります。
脳幹出血の急性期では、一般的な運動麻痺、感覚障害、筋緊張等よりも生命維持や意識障害に対する治療を主とする場合が臨床上も多く経験すると思います。
今回はそのうちの1つ、呼吸障害について、基礎的な知識も踏まえた初学者向けの内容となっています。
既に臨床で脳幹出血に伴う呼吸障害に携わっている方には少し物足りない情報かと思います。
今回の内容では、
1. 呼吸中枢について
2. なぜ脳幹出血で呼吸障害に繋がるのか
この辺を再確認したい方、簡単に理解したい方はご覧ください。なお、内容は個人的な見解も含みます。
では、早速まとめていきます。
呼吸中枢とは?
そもそも、なぜ脳幹出血で呼吸障害を伴うかご存知でしょうか?
周知のことと思いますが、脳幹は中脳、橋、延髄を総称した脳の一部になります。
これらのうち、橋と延髄には”呼吸中枢”と呼ばれる部位が存在します。
呼吸中枢は上の4つです。
橋
・呼吸調節中枢
・持続性調節中枢
延髄
・延髄リズム調節中枢(呼息中枢・吸息中枢)
それぞれを簡単に解説していきたいと思います。
1. 呼吸調節中枢
呼吸調節中枢で行われていることは2つです。
1. 吸気と呼気の切り替え
2. 過度な吸気を抑制(肺が膨らみすぎないように、延髄の吸息中枢に抑制性の刺激を入力)
呼吸のリズムに関しては、延髄のリズム調節中枢が行っていますが(後述)、吸気と呼気の切り替えはこの中枢がコントロールしています。
また、肺が過度に膨らみ過ぎないようにコントロールされており、言い換えると吸息時間を短縮する時にも働く核になります。
この神経核の活動性が高まると、”呼吸数を増加”することになります。
2. 持続性調節中枢
前述した通り、この中枢は”橋”にあります。
脳幹出血の出血好発部位は、”橋”が最も多いと統計学的に言われているため、特に障害を受けやすい核になります。
この中枢は、言葉の通り、”呼吸の長さ”に関係しています。
延髄にある吸息中枢(後述)をこの持続性呼吸中枢を刺激します。
そのことにより、吸息を長くすることができます。
つまり、深呼吸をするときは吸息中枢から持続性呼吸中枢に命令が行われているということになります。
3. 延髄リズム調節中枢
最後は延髄にあるリズム調節中枢になります。
これは1つの中枢として解釈されていますが、その神経核は2つに分かれています。
吸息中枢
呼息中枢
上記の2つです。
言葉の通り、吸息中枢は吸気に、呼息中枢は呼気に関係しています。
そして、この吸気と呼気のリズムを作っているのが”リズム調節中枢”になります。
安静時の呼吸リズムは一般的に吸気が2秒、呼気が3秒で安静時の呼吸数は12〜15回程度(文献によって若干異なるかもしれません)とされています。
安静時にこのような呼吸数で調整されているのは、このリズム調節中枢があるためと言えます。
そして、”安静時は本来吸息中枢しか働いていません”。
どういうことかというと、
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