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脳卒中者への全身振動による痙縮抑制効果の可能性
こんにちは!
理学療法士のyukiです。
本日は脳卒中者の治療で重要になる、痙縮のコントロールについてです!
この辺、臨床でどのように抑制を図っていくか悩む方も多いのではないでしょうか?
恐らく臨床的によく検討するのは、静的ストレッチ、相反抑制による緊張抑制などが主に行われると思います。
ただ、脳卒中者に対しては、麻痺の影響により主動筋も十分に活かすことができないケースも多いのではないでしょうか?
一方で、近年はこのような振動刺激による痙縮のコントロールが認められています。
今回はパワープレートという機材を用いた振動刺激による効果になりますが、ハンディタイプでも効果を認めているため、併用していけると良いですね!
では、本日の論文はこちら↓
この記事についてです!
掲載雑誌:Complementary Therapies in Clinical Practice, 2014
Impact Factor:1.770
はじめに
痙縮は一般的に筋伸展反射の速度依存性過興奮と定義され、腱反射の亢進、受動運動に対する抵抗増加、および上位運動ニューロン抑制制御の破綻に起因する筋緊張亢進を特徴とする(Lance JW et al. 1980)。
これは良く知られている症状であり、一般的に脳卒中、脳性麻痺(CP)、多発性硬化症(MS)、脊髄損傷(SCI)およびその他の中枢神経系(CNS)病変で見られる。
痙縮が長引くと、屈曲肢位での関節拘縮、痙縮筋の編成、関節周囲の結合組織の変化により、筋と結合組織が短縮し、能動的および受動的な関節運動が低下し、自発的な下肢運動や歩行の安定性が損なわれて日常生活の制限となる。
したがって、これらの症状を改善するために理学療法で筋緊張を抑制することは重要である。
ボツリヌス治療を含む痙縮を制御する治療オプションは幅広くあり、Dr.は専門的な技術的スキルを持っている必要がある。
従来の理学療法、筋のストレッチ(Bovend’Eerdt TJ et al. 2008 )、超音波療法(Ansari NN et al. 2007)、温熱療法(Matsumoto S et al. 2010)、電気刺激(Mesci N et al. 2009)などの物理的治療有用であることが示されている。
近年、脳卒中後の現局した治療をするために新しい治療法として、振動刺激が行われている(Noma T et al. 2009、2012)。
振動刺激による機序として、
振動刺激による入力
↓
筋紡錘の一次終末を活性化しⅠa入力(Roll JP et al. 1989)
↓
Ⅰa入力は、一次運動野の皮質内抑制または促通入力を調節
↓
皮質脊髄路の興奮性を変化
上記を促す可能性が考えられている(Steyvers M et al. 2003)
全身振動刺激(WBV)は、振動する台上で静的または動的な動きをすることができる。
振動は、筋紡錘とα運動ニューロンを刺激することにより筋収縮を開始し、従来の筋力トレーニングと同様の効果をもたらすと考えられている(Delecluse C et al. 2003)。
先行研究にて、WBVがCP、MS、SCIの患者に抗痙縮効果があることを報告
現在までに、脳卒中患者に対する抗痙縮効果を示す研究は2つある。
WBV治療により筋緊張は低下させる傾向があるが、慢性脳卒中における身体機能と歩行パフォーマンスは変化がない、もしくはわずかしかなかった(Brogardh C et al. 2012)
WBV治療の1回の介入で、慢性脳卒中における足関節底屈筋の痙縮を軽減し、それに伴い歩行能力を潜在的に増加させることができると報告(Chan KS et al. 2012)
これまでの研究では、WBVトレーニングは、振動する台上で静的な肢位で立つか、同時に動的な動きを行うことによって介入が行われてきた。
本研究の目的
脳卒中患者の麻痺側下肢を座位姿勢にてWBVによる
抗痙縮効果、運動機能、歩行能力の改善を調査すること
対象と方法
対象者:下肢の痙縮を伴う脳卒中患者25名(平均年齢52.2±15.6歳、発症後26.6±26.3ヶ月)
対象者属性:
・下肢麻痺ステージ(BRS):ステージⅢが6名、ステージⅣが14名、ステージⅤが4名、ステージⅥが1名
・MAS(腓腹筋):1が6名、1+が11名、2が8名
・全ての患者が装具や杖を使用して介助なしで歩行が可能
除外基準:
1. 振動刺激を妨げる病状(高次脳機能障害、心肺疾患、重度の関節障害、重度の感覚障害)
2. 口頭での指示に従うことができない失語症
3. 認知症を有するもの
介入
・WBVは30、40、50Hzの周波数で振動を伝達する振動台(Powerplate!, Performance Health Systems UK Ltd., UK)である。
・振動の振幅は低と高の間で調整可能。
・介入肢位:股関節を約90度屈曲、膝伸展0度での座位保持(長座位姿勢)
・介入中に療法士が、徒手的に足関節の最大背屈位で維持した。
・介入時の設定:ハムストリングス、腓腹筋、ヒラメ筋に30Hz、4-8mmの振幅、5分間実施
評価
・仰向けで5分間リラックスした後に、対象者は5分間のWBV介入を実施。
・評価項目:MAS、運動機能(A -ROM、P -ROM)、10m歩行テスト
MASについて
・股関節内転筋群、ハムストリングス、腓腹筋を測定
A -ROM(自動関節可動域)とP -ROM(他動関節可動域)
・足関節背屈を自動で行えた14名に実施。
・計測肢位:座位にて膝90度屈曲位からの足背屈を測定
・P -ROMにおいては仰向けで膝を最小限に曲げた状態で足関節背屈とSLRを測定。
10m歩行テスト
・快適歩行速度(m/min)、ケイデンス(steps/min)を実施。
・3回行い、平均値を算出して統計解析した。
統計解析
・ウィルコクソンの符号付き順位検定
・介入前後の各評価を実施した。
結果
全ての対象者が安全に介入を終了した。
MAS
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