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歴史・人物伝~信長飛躍編⑮戦国大名のトップに躍り出る
織田信長の圧倒的な軍事力で上洛を果たした足利義昭は、念願の第15代将軍となりました。京の人々は義昭を歓迎する一方、信長の軍勢に対しては「狼藉を働きはしないか」などと不安を抱いていたといいます。
そうした声に信長は、自軍への厳しい軍律を申し渡すとともに、抵抗勢力に備えて内外に厳重な警備を張りました。治安維持に力を尽くすことで、京の貴族や民衆の支持を得て、事実上の支配権を手に入れたのです。
もう一つ、画期的な政策を行います。それは領国内にあった関所の撤廃です。人々の往来をスムーズにさせるだけでなく、物流を広げる効果がありました。信長には「経済」という視点を持つ先見性があったのです。
一方で、将軍義昭からは副将軍や管領といった幕府の要職への任官を求められますが、すべて辞退しています。分不相応と思ったのか、あるいは幕府の枠組みに入りたくなかったのか、信長公記からは読み取れません。
信長は帰国の前、義昭のもとへ挨拶に出向き、義昭から感状とともに足利氏の紋章と旗印を贈られました。信長公記は「前代未聞の度重なる名誉であり、ここに書き尽くすこともできない」と書いています。
「歴史・人物伝~信長飛躍編」では、桶狭間の合戦から美濃攻略、足利義昭を奉じての上洛までを書いてきました。上洛によって、信長が戦国大名のトップに躍り出たのですが、この先にはトップを守るための厳しい戦いの日々が待ち受けているのです。続きは次の機会に書きたいと思います。
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