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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第64回「カウンターでくまモンと酒を飲む夜」

「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。

withコロナでようやく一人酒が再開した。が、まだまだ心置きなく飲めるようになるまでの道のりは遠い。ならば、体験談エッセイでも書くとするか。酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第64回「カウンターでくまモンと酒を飲む夜」である。


はじめに

日本一有名なご当地キャラは誰だろう? その答えを「くまモン」と言う人は多いだろうし、私もその一人だ。万が一知らない方のために紹介するが、くまモンは熊本県のご当地キャラで県知事から「営業部長」を拝命している公務員でもある。

そんなくまモンが人気急上昇中だった2013年、熊本県を訪れた。お目当ての第一はもちろんくまモンだが、飲み歩き道楽の私が熊本の美味い物と美味い酒を見過ごすはずはないだろう。

くまモンにあやかり、熊本サプライズを探しに出かけるか。

熊本市「瀬戸」~郷土料理とコメ焼酎に舌鼓

口開けにやって来たのは郷土料理「瀬戸」。地元で人気のお店らしく、来店時にほぼ8割方埋まっていた。カウンターの一角に陣取り、まずは生ビール。それから熊本ではおなじみの辛子レンコンと一文字ぐるぐるを注文した。

一文字ぐるぐるは、ヒトモジという種類のネギを使い、茎を軸にして巻いただけのシンプルな料理。これがさっぱりしていて美味い。辛子レンコンは説明不要だろう。

辛さを酒で洗い流すべく、コメ焼酎を頼もう。

焼酎王国の九州にあって、熊本県はコメ焼酎の一大産地である。有名ブランドの「しろ」の水割りを頂戴し、追加で馬串とコノシロ刺身をいただく。馬肉料理も熊本の名物。魚の刺身は本来なら日本酒と合わせるところだが、郷に入っては郷に従えだよ。

店内もだいぶ賑わってきた。テーブル席で私より先に飲んでいたオヤジはご常連らしく、何だか知らないが店主や店員に時々説教をしている。まあ耳障りと言えばその通りだが、飲んだくれじゃ仕方ない。そんなことは店主が一番よくわかっているよな。

テレビではちょうど、日本シリーズを放送していた。楽天が巨人と対戦したシリーズの第6戦でマー君(田中将大投手)が投げていた。楽天が先制点を取った。今シーズン無敵のマー君なら、これで勝負あった、だろうな。

野球の勝敗も気になるが、熊本にはもっと気になる酒場がある。次に行こう。

熊本市「くまBar」~カウンター席に座るくまモン

さて2軒目はどうしようか。ほろ酔い気分で繁華街をフラフラと歩いているが、足は確実にある場所へと向かっている。やってきたのは「くまBar」。名前から分かるように、くまモンとも大いに関係のある店なのだ。

店内はバーカウンターとテーブル席がある。いつもの飲み歩きだと、2軒目かつ比較的早い時間帯にバーを訪れることは無いのだが、ここだけは早めの方がいい。なぜなら・・・

カウンターの中央にくまモンが座っているから。

くまモンの両側は「予約席」になっている。特等席とも言えるので無理はない。私はというと、ちょうどカウンターの一角に空きがあったので、そこに座る。もちろん、横を向けばくまモンの姿が見える位置なのだ。

焼酎飲み比べがあるので頂戴する。実はこの店、くまモンがメインではあるが、同時に熊本県から「くまもとの酒消費拡大運営業務」の委託を受けているアンテナショップ。球磨焼酎だけでなく、ワインや赤酒もPRしているそうだ。

飲み比べで出てきたのは、萬緑、松谷棚田2005年、謹醸しろのブランドコメ焼酎。おつまみは馬肉くんせい、辛子レンコン、野菜サラダの熊本プレート。チビリチビリと焼酎をいただくのにはこれ以上ないラインナップじゃないか。

しばらくすると、会計を済ませたカップルに店員さんが「くまモンと一緒に写真撮りましょうか?」と声をかけているのが見えた。なるほど、頼めば写真を撮ってもらえるのか。それならば私もお願いするしかないな。

予約席にちょっとだけ座らせてもらい、くまモンとパチリ。

ミーハーと思われようが、そんなことはどうでもいい。酔った勢いは大事だぞ。でもタダというのも申し訳ない。ここは追加でプレミアム焼酎の大古酒繊月をいただこう。仕込み後30年以上という古酒。これはガツンと効いた。球磨焼酎おそるべし。

熊本市「太閤」~ご常連酒場ならではの驚くべきシステム

実はもう一軒、有名バーに寄るつもりだった。熊本出身のタレント・スザンヌさんの母親が経営している「キャサリンズバー」である・・・が、バーなのに店先に並んで待っている人がいるじゃないか。こりゃだめだ。

というわけで、あか抜けたバーとは一転して渋い居酒屋「太閤」に入る。親父さんと女将さん、それに明るいおばちゃん店員さんたちがいる店。こちらの方が落ち着くな。早速、コメ焼酎を頼もうとばかりに店員さんを呼ぶ。

いきなり、一升瓶の並ぶ棚の前まで案内された。

ここから好きな瓶を持っていってくれ、ということだ。「川辺」という銘柄のコメ焼酎を手にして戻ると、席には水割りセットが用意されている。自分で水割りを作り、一杯飲むごとに竹串を置いていく、という自己申告制のシステムらしい。

これにはちょっと驚いた。水割りを濃くしようが、薄くしようが、一杯の値段には変わりないということなのか。ごまかそうと思えば、ごまかすこともできるだろうが、そこはお客さんとの信頼関係。ご常連酒場ならではの粋な計らいだな。

親父さんが焼酎によく合う新鮮な馬刺しを切って出してくれた。これも美味い。もうひと銘柄「大石水上村」も飲ませてもらおう。いい酒場で美味い酒と肴をいただくのは心が落ち着く。まったりとした気分で、ふとテレビに目をやったら・・・

無敵のマー君が巨人に打たれて逆転されているじゃないか!

ビックリ仰天したのは私だけでなく、親父さんも店員さんも同じだったらしい。これをきっかけに一気に話に花が咲き、私のテンションもどんどん盛り上がっていった。

そして、この後に立ち寄ったのが「立ち飲みなんじょう」だったとさ(笑)

〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2013年11月の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。


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