マネートラップ
もしも、あなたが大金を手にすることができたら何に遣いますか。主人公は大金を手にした時何に遣うのか。
この国は二大政党がまとめている。お金も二大政党が管理していて一つは円、もう一つは音。一つの政党が強すぎて円がほぼ流通のお金で、音はほぼ需要がなく小さな店は使えないことが多い。
低収入のアルバイト店員、『アオ』は漫画家になる夢を追っているがどうにもうまく行かない。そんな中、一夜にして大金を手に入れることになる。大金を手にした時男はどう使うのか、大金があると知ったアオの身辺はどう動くのか。
お金にまつわる人間模様を見て欲しい。
第一話
携帯のアラームが鳴る、机の上には紙やペンが散らばっている。その下でアオは手探りで携帯を探していた。『もう朝かよーねみー』バタバタしながらバイクにまたがり、仕事場所へ行く。
『おう、今日もギリギリ過ぎてるぞ!もうちょっと早く来い!』
『すみません』
汗を流しながら重い荷物を運び、作業するアオ。
社長に呼ばれる。
『お前、明日から来なくていいから』
『うえ?お、俺っすか』
『クビにすんならよ、まずお前からだろ。遅刻毎日するし、やる気ねーわ、手順間違えるわ』
『そんなことないっすよ』
『とりあえずな、この会社も今からどうなるか分かんねえし、明日には潰れてっかもしんないしな。知ってるだろ。円が音に変わったんだよ。お金の価値がまるっきり無くなったんだよ。大企業が潰れてどんどん銀行も潰れただろ?こりゃ天地無用だな』
『天地無用‥?』
『社長!それ天地無用って言葉間違えてますよお。晴天の霹靂とか言うんじゃないですかー?』
『あ、ちなみにお前もな』
『え?俺も?』
アオと一個上の先輩と目を合わせる。
『マジかよー!!!』
帰り道、アオと一個上の先輩ミナミはトボトボと力なく歩く。
『お前のせいだからな』
『俺、カンケーなくないすか?決まってた事だって‥』
『明日からどうすんだよ。闇金に借金したばっかなのに、ア○ムはまだ返し終わってねぇし‥』
『まだレミちゃん推しっすか』
『おうよ。生きていくには推しが必要なのよ。またどっかバイト探さないとな。家賃も払えねぇ。
『お前あてあるの?』
『ないっす。どうやって生きて行けばいいのか‥』
その時、アオにフラッシュバックが起きる。
第2話
アオの2個上の先輩の引っ越し作業を手伝っていた。
『ジンさん、全然片付けてないじゃないですかー。これじゃ片付けからってことですか、ゴミも多いし、臭‥』
『臭いって言うな。例え臭くてもな、それだけは言っちゃいけないんだぞ。そっから片付けろ』
『ウィ』
職場のジン先輩の就職が決まり、近くに引っ越すことになった。俺は先輩に借り出され、一緒に引っ越し作業をしている。引っ越しは何かと金がかかるらしいので俺は手伝っている。まぁ、手伝ったら店で蕎麦奢ってくれるらしい。
ジンさんもワンピースとか読むんだな‥
『お前、仕事しろよ!』
『は、はいつ!』
段ボールの角で足の小指をぶつける。
『いってえー』
狭いし、物が多いんだよ。ゴミ屋敷じゃねえか。なんだこの段ボール。これだけ詰めた?部屋の中で唯一段ボールに入れられた箱がある。
『ジンさん、コレ何すか?』
『あーそれな。きったないジィさんから貰ったんだよ。横断歩道で苦しんでるジィさん助けたら、命の恩人てさ。前会社経営してたみたいなんだけど、上手くいかなくなって音の金が大量に余ったらしい。今時、音なんか使える店ねえっつうの。持ってても邪魔になるだけだからお前にやるよ』
『ええ、そんな物いいんすか?』
回想が終わり、バイト帰り家に帰って来て、慌てて段ボールの場所を探すアオ。
汚い部屋をかき分け、押し入れの奥の方から段ボールを見つける。
中を急いで開けると大量の音の金が‥
そのひと束を掴み確かめて、数える。
『コレ‥本物だよな‥い、今からコンビニで使って‥』
その時、家のチャイムが鳴る。
段ボールを元あった場所に直して玄関へ行く。
恐る恐るのぞき穴から覗くと、アオの元彼女が立っている。さやか?なんで今頃来たんだ?考えているとまたチャイムが鳴る。
『アオ君いるんでしょ?何してるの?出てよー』
金のありかを知ってたのか?まさかな。いや、でも‥と考えていたら玄関のドアが回される。
『なんだ、居るんじゃないのよ』と肩を押される。
『あ、あぁ』
帰った時に慌てていて鍵をかけ忘れていたらしい。
『おじゃましまーす』
『おい、勝手に入るなよ!もうお前彼女じゃないんだし』
『えーいいじゃない?忘れ物取りに来たの!』
『忘れ物?もう3ヶ月以上経つだろ。何を忘れたんだよ』
『お気に入りのピ、ア、ス!無くしちゃってさーここじゃないかと思ってー』
『知るか、お気に入りだったらもっと早くに気付け。帰れ帰れ』
『冷たーい。この間まで彼女だったのに!それにしてもさらに部屋汚くなってない?やだー』
『今から彼女が来るの!早く帰れって』
『もう彼女?早!あんたを好きな女の子なんて現れないかと思ったー』
半ば強引に部屋から彼女を追い出す。
汗だくなアオ。
元彼女のさやかは足早に立ち去ってどこかに電話する。
『もしもーし、部屋確認したけどすぐ追い出されて何も分からなかった。私嫌われてるみたい。作戦練り直しね』
颯爽と歩いて行く女。