細胞診クラス3b(わたしだけの乳がん物語 #2)
2023/5/30(火) 細胞診の結果
細胞診の結果を聞きに行く。自転車で病院に向かう道中は不安なんてなかった。水分とか生理前の変化じゃないかな、ぐらい。
名前を呼ばれて診察室に入ると、先生「んーあまりよくない結果なんですよね」。結果はクラス3b。細胞診のクラスは5つあること、1と2は良性、4と5は悪性、そしてクラス3はさらにaとbがあって、今回のbは4に近いけどどちらとも言えないことを説明された。
え?良性という太鼓判を押してもらえなかった。なぜ、なぜ、なぜ、なぜ。
先生は「ちゃんと何かを調べるために次は組織検査をしましょう。もう少しお付き合いくださいね」と、どこまでも落ち着いた優しい言い方。
4に近い3b、黒に近いグレーってことなの?あまりにも衝撃が大きくて、どんな言葉を発すればいいのか、何を聞けばいいのか、頭がまわらずにかろうじて聞けたのがこのふたつ。
① 良性の可能性もあるのか
→良性の可能性ももちろんある、その場合は乳管内乳頭腫ということになる
② 良性でも3bが出ているなら治療しないとならないのでは
→それを判断するためにも詳しく調べる必要がある
先生「乳管癌の疑いとありますが、ちゃんと組織を取って調べてみましょうね」。そこで初めて細胞診の所見に「乳管癌を疑う」と書いてあることに気づいた。頭が真っ白になって全身の毛が逆立った。異形細胞が見られること、乳管癌を疑うとのこと。正直、がん決定じゃないかと思った。でもどうして?半年ごとのエコーに毎年マンモをやってるのになぜ癌と疑われるのか?今まで何か見落とされていたのか?いきなりがんっておかしくない?
でも、今なら分かる。検診って何かを良くするためのものじゃない、見つけるためのもの。自分だって、いつもがんになった時に早期で見つけてもらうため、と思って検診に通っていたじゃない。早期発見がすべてだよ、と。それでも見つかったら見つかったで、「なんで?」って思ってしまうものなのだな。
組織検査は10日後。この日から組織検査の当日までがとにかく苦しかった。
人生の転機なの?
ここから怒涛のインターネット検索が始まる。とりあえず検査日の夜に予定していた飲み会をキャンセル。精密検査で限りなく黒に近いグレーになっちゃってさーなんてLINEで伝えたのは、少しでも強がりを言って、どん底に引きずり込まれないように身を守ろうとしたのかもしれない。
「乳がん 細胞診 クラス3b」で検索しまくって、ひたすら事例をむさぼり読んだ。良性だった悪性だった、どちらを目にしても読めば読むほど心はぐちゃぐちゃになった。そして、ある方のブログにたどりついた。その方の乳がん発覚から告知、手術、闘病記を読んでいると、いくつかのキーワードが胸にぐさぐさ突き刺さってきた。
「先の悪いことを考えすぎない」「時間を無駄にしない」「今日を精一杯一生懸命生きる」
ともすると陳腐に聞こえる言葉かもしれない。特別なことではないと分かっている。人生観や価値観が変わるほどの何か大きなこと、ことさら生き死にを考える経験をした場合はたいがいそう思うのかもしれない。でも、全部今の自分に足りないと思っていることばかりだった。どうせこの年じゃ性格も考え方も変わらないよと思いつつ、何かドラスティックな変化が起きないかな、とも思っていた。この先の人生をより良く生きるために、変わりたい、と思っていたのだった。
なんだか悪性の気がする。この方のブログを読んで、なんの根拠もないけれど、そう思った。なぜか今のわたしに必要なことを教えようとしているのでは、と思った。乳がんという荒治療で。46才、人生の転換期・・・?悪性だと思う。夫にもそう伝えた。
乳がんプラザに質問
それでもやっぱり良性の可能性も信じたい。検索しまくって論文すら読んで情報をインプットしていたけど、この混沌とした気持ちの中で何かを見出したくて、有名な乳がんプラザで質問をしてみることにした。
一番の疑問は、「病理検査で乳管癌を疑うというのならもう悪性なのでは?なぜクラス4や5ではないのか」という疑問。つまりは、希望を持たせるんじゃないよ、ということになる。
乳がんプラザのQ&Aでも何度も出てきている、”細胞診の結果は医者の技量による”という見解。主治医であるH先生のことは信頼しているし、技術もあると思っているけど、なぜ3bなのか。今となると、組織検査をすれば分かることなのに、あれこれ勝手に考えてもしょうがないことの最たるものだと思うけど、聞かずにはいられなかった。誰か第三者の意見でこの心のぐるぐるもやもやに一石を投じてほしい気持ちでいっぱいだった。
病理検査の所見とともに質問してみた。この答えが更新されるのを待ちわびる気持ちと、見たくない気持ちでスマホを握りしめながら何度もサイトをリロードしていた。何も手に着かない。目の前にあるやらなければならない仕事も、家の家事も、なにもかも。夫もその気持ちが分かってくれていたのか、四六時中スマホを見ているわたしに普通に接してくれる。
何百回目かのリロードの後、自分の質問が掲載されたのを見つけて息が止まった。回答を恐る恐る見る。夫はすぐそばで仕事をしている。
回答「単純に技術不足だと思いますよ。病理検査の“二相性が明らかでない”“乳管癌を疑う”で3bしか出ないのは、採取した検体に問題があると言わざるを得ません」
この回答を見た瞬間、血の気が引いて震えた。やっぱりがんなんだ。病理医のコメントが正しいんだ。クラス3bは単に検体不良だからだったんだ。
なんとか夫に伝えてみるものの、「うーん、その先生がすべて正しいとは思わないけどね」と、夫らしい返答だった。
次の組織検査の時にH先生に聞いてみたいことをまとめた。早く聞きたい。信頼している優しいH先生を疑いたくない。