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乳がんを忘れて過ごせるのか?(わたしだけの乳がん物語 #30)


期間限定の安心感

術後は3カ月ごとの定期検査に。その2回目で対側に怪しい影が見つかった。細胞診クラス3→マンモトーム生検という、がんが発覚した時と同じ経緯をたどったから今回も悪性だと諦めていた。けど、良性だった。

しんどい激動の1カ月を経て、また通常のルーティンに戻り、先日定期検査のエコーを受けてきた。全摘した右胸のエコーは首、鎖骨、腋の下などを。左側は先日受けたマンモトーム生検で吸引したことにより、腫瘤が小さくなっているらしい。「はい、どちらも問題ないですね」という先生の言葉に心底ほっとした。そして先生は「私がちゃんとチェックしているので、乳がんのことは忘れて過ごしてもいいですよ」と言ってくれた。

定期検査でOKをもらうことは、期間限定の3ヶ月分の安心を手に入れたことになる。でも、本当に乳がんであることを忘れて過ごせるものなのか。正直、それは無理だ、と思う。

組織検査では非浸潤性と思われていたわたしの乳がん。術後の病理検査で微小浸潤があってステージは0から1になったけど、ほぼ非浸潤性と同様の扱いとは聞いた。非浸潤は遠隔転移の可能性は限りなくゼロに近いとも言われる。それでも常に再発、転移の可能性に怯えているところがある。目に見えないがん細胞がふわふわとわたしの体の中を巡り、やがてどこかに定着して増大してしまうのではないか。これはもはやどんなに知識を入れたとしても安心できない、本能的に感じてしまう恐怖だと思う。
2分の1、9分の1を引き当ててがんになったわたしにはあらゆる可能性があるし、「転移なんて絶対しない」と誰が言い切れるのか。

タモキシフェンと婦人科系リスク

乳がんを忘れて過ごすことができない理由のひとつにタモキシフェンがある。毎朝1錠飲むたびに、わたしは乳がんなんだと自覚する。2028年まで毎日飲み続けなければならないし、飲み忘れてはならないという緊張感がつきまとう。一度飲み忘れてしまった時はどうしようどうしようと心配になった。再発しちゃう。旅行の時の持ち物も真っ先に確認するぐらい神経質になっていると思う。今のところ大きな副作用が無いから言えることかもしれないけど、それこそお守りのように従順に毎日1錠飲んでいる。

タモキシフェンを飲み始めてしばらくすると生理が止まった。生理が来ない生活はそれはそれで快適で、このまま閉経してもいいかなんて思っていた矢先、またもや生理になった。しかも大量出血で1時間おきにナプキンを替えないといけないぐらいの日常生活に支障をきたすレベル。大人用おむつに近いぐらいの巨大なナプキンを買ってきてなんとかしのいだけど、頭の中は排卵によって女性ホルモンが増えたらまた乳がんのリスクになってしまうのではという心配だった。

それとは逆に、タモキシフェンの服用は子宮体がんのリスクを高めるという。つまりは乳がんのホルモン治療は子宮や卵巣のリスクにつながるということ。じゃあもうどうしたらいいの。胸と子宮のバランス、その塩梅は誰が決めてくれるの。
婦人科検診でも卵巣の腫れを指摘されて半年ごとの経過観察になった。婦人科の先生は「乳腺の先生もタモキシフェンによって婦人科系のリスクがあるってことを説明してくれたでしょ」と言っていただけど、説明された記憶はない。乳腺の先生はあくまでも乳がん治療において有効な治療をするのみ、副作用その他のリスクについてはあくまでも自分で調べて学んでいた。

そして、卵巣がこれ以上大きくなったら乳腺の先生と相談してくださいと言われるんだろうな。お守りのように思っているタモキシフェンを休薬しなければならない事態は避けたい。女性ホルモンに起因する病気は本当に厄介だなと思う。

処方されたタモキシフェンのひとつひとつに日にちを書き込みながら、次の検査までの日々を思う。少なくとも今は何も悪いところが無いのだから、日常をちゃんと過ごそう。仕事も子育ても頑張って、家族で笑って生活していこう。

次は術後1年検査。何事もありませんように。

婦人科も経過観察に

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