私は俳優、賀来賢人に救われた。
2019年、20代になってから初めての夏のことだった。
大学の二限に間に合わないのを悟って、私は改札に走ることを止めて駅前のコンビニに涼みにはいった。
空調泥棒はもちろん買う気はさらさらないわけで、次の電車が来るまでぼんやり店内を眺めていた。
気がつけばその足は雑誌コーナーへ向かい、驚いたことに、着いた瞬間 @popeye_magazine_official 「二十歳のとき、何をしていたか?」が目に飛び込んできた。
親の有難みも分からずに、入りたくて入った訳じゃない大学だと口を叩く無価値な日々に嫌気が指していた私には、「大成している著名人の二十歳(今の私と同い年)の過ごし方がわかれば、この面白くない毎日から抜けられるんじゃないか」と思い、1500円でその分厚い本を買った。
バイトもろくにしていない私にはそれは大金だった。普通に衝動買い辞めたいと思った。
ペラリと目次を見ると、デザイナー、スポーツ選手、アーティスト、演出家などなど、様々なカテゴリーの第1線で活躍する悠々たるメンバーが名を連ね早速気負いした。
でも
その中で私が1番、二十歳の姿が気になったのは「賀来賢人 @kento_kaku 」。
ちょうどその時彼が主演を務めていたドラマを楽しんでいたのもあってだろう。
売れまくりの姿しか知らない私は賀来賢人でも燻っていた時期があったことに驚いた。親近感。そう、読んでる最初は親近感を抱いたのだ。でも、彼は私と違って自分を追い込むことを恐れない勇敢さがあった。
「ああ、真似出来ない。」
これが名を馳せる人と凡人の違いかと、やる気を鼓舞するどころかむしろ萎えたのを覚えている。
しかし、彼は優しかった。
勇気も度胸もいらない、私でもできそうなヒントを残して、2枚にわたるコラムを終えた。
それは講義中もスマホばかりして、使いもしない赤ボールペンが久しぶりに活躍した場でもあった。
―
それからのこと。
私はあの本を読み進めていない。
賀来賢人1人で相当メンタルがやられたのと同時に、あの言葉以上に大切なことはないと思ったからだ。
私はフォロワーと投稿数がほぼどっこいどっこいという、これは残念極まりない成果だろう。
けれど、人になんと言われようが好きなことをコツコツ続けてきた。
しょぼい割に、私の「好き」と「挑戦」が詰まったこのアカウントは結構お気に入りだ。
でもね、最近ようやく人生の針が進み始めたような気になる。
出会いに恵まれ、やりたいことが、少し叶いそうな錯覚に落ちるんだ。
ふと思い立って、久々にあの雑誌を開いてみた。
2年ぶりにみる赤線は、妙にダサくてそこばゆい(笑)
でも彼のこの言葉のおかげで私はここまで来れた。
今はまだ、掴めそうで掴めない、雲のような希望だが、賀来賢人の様にわたしもやりたいことは明日も明後日も続けて行こう。
そう思った。