中国ゲーム会社は超スピーディ!納期のあれこれ
皆さんこんにちは
ミミムです
皆さん中国企業とやり取りするのは怖い、って思っている方多いと思います。特に「納期」はよくトラブルになる問題の根源だと思います。今回はミミムの今までの経験に基づき中国企業がなぜ「時間」でトラブルか?を解明してみたいと思います。
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中国のゲーム企業は2014年の「幻想神域」の成功体験から、アフレコ、音楽、オープニングアニメなどの制作を日本の制作会社に依頼することが現在進行形で増えています。
そのなかで、おそらく多くの企業さんが直面するのが「納期が短すぎる」っていう問題だと思います。なんでこんなに納期短いの?
今回取り上げるのはこの「納期」の部分です。
先ずは「納期が短い」背景を紹介したいと思います。
1. そもそも中国のゲームリリースについての基礎知識
中国は開発会社と運営会社が異なることがあります。
中国ではゲームは出版物であり、制作会社が出版社にお願いして、政府審査機関に提出して審査し、出版番号を発行して初めてゲームが運営会社からリリースできるようになるためです。
オンラインでゲームを運営するためにはいくつかの許可証が必要になります。そしてその許可証は入手するために莫大な資金が必要なので一般の制作会社が独自にリリースするには大きなハードルがあります。
詳しくは少し古いゲーム審査システムですが、[第6回]中国ゲーム審査史[動漫知中国]をご覧ください。
2. 開発と運営が違う事によって起こる時間問題
2010年中盤の頃の中国ゲーム業界ではPCゲームの衰退と、モバイルゲームの発展が目覚ましい時代でした。開発も運営も、どのようにゲームを売ればいいか苦慮していました。だから当時希少で宣伝時にインパクトがある日本人声優、日本人作曲家や歌手、イラストレーターが起用されたのです。
このようなゲームの内容や外側の見栄えをよくすることを「パッケージング」といいます。
運営会社は、受け取ったゲームを早くリリースして売上げを得たいので、ゲームを受け取ってリリースするまで一般的にパッケージングに掛ける時間は3カ月でした。
ゲームを受け取り、チェック、パッケージングを企画した時点で大体リリース2か月前になっていることが多かったです。
さらに声優やクリエイターのスケジュールが合わないとなると、別の方に打診しないといけませんので、どんどん納期は縮まっていくのです。
それが、2014年前後の状況でした。この時の様々な中国ゲーム会社の粗相が今日本の基本的なイメージとして固定しているわけです。
イメージって怖いですねぇ。
数年たつと自社で制作、運営できる会社さんが増えてきました。中国本土においても、その方が効率が良かったからです。運営会社が制作会社を買収することもありました。これは日系アニメキャラゲームが増えたことにも起因します。
詳しい経緯は第19回と20回の2回に分けて紹介した中国製日系アニメキャラゲームの歴史で詳しく紹介していますので、そちらをご覧ください。
自社で制作、運営ができる大手のゲーム会社、ネットイース、パーフェクトワールド等が開発の段階から声優や作曲家にオファーするようになって、納期に余裕が出来たように見えますが、実際はそこまで余裕はありませんでした。
今度は以前はなかった制作チームや運営チーム間のコミュニケーション不足による完成台本や資料の受け渡し問題、そして制作チームメンバーやプロデューサーの個人的な趣味によるブッキングが難しい声優の指定などが納期を圧迫してきます。
開発スタッフが多くなり、また運営各部門とのやり取りが増えることで、大組織におけるデメリットが出てきました。
また今まで日本声優を自分が作るゲームに起用するなど夢のまた夢だとおもっていたのですからしょうがないともいえます。
納期は少しだけ伸びましたが、依然「納期」は大きな問題として残ったままでした。
3. ゲームの海外進出問題
制作運営一体会社がゲームを中国でリリースした後、海外にも目を向けるようになりました。国内でゲームリリースが2018年から難しくなったからですね。これらの会社は海外での経験がないので、海外のゲームパブリッシングを自社の子会社或いは経験のある他社に任せるようになりました。
海外でリリースする場合、元々日系アニメキャラ風ゲームなら中国リリースの段階で声優を付けていることが多かったです。アズールレーン、アークナイツ、崩壊3rd、ラングリッサーモバイルがよい例ですね。この場合はそのままリリースすることができます。
ですが、それ以外のゲームについては海外に出すまで音声を付けていない、或いは中国語音声のみのことが多いので、そのままリリースすると他のゲームに広告面で太刀打ちできない問題がありました。
また、中国のゲームの宣伝素材をそのまま使えないので再度パッケージングする必要があります。
なので、新たに日本語アフレコ、イラスト新規作成、主題歌を付けて他と差をつけるというパッケージング作業が各国、特に日本では重要でした。
そこで、また一番最初の問題と同じように、海外運営会社はできるだけ早くゲームをリリースしたいので、非常に短い納期を要求することになります。
ゲーム制作会社、制作運営会社、海外運営会社の3つのパターンがありますが、全体的に共通する問題として
「相手の都合を考えない」
の1点に集約できると思います。
次に具体的な例を見ていきましょう
4.「相手の都合を考えない」
例えば楽曲の要求において突然この楽曲を追加してほしい、或いは元々詰めていた内容と違う内容に変更してほしい、という状況があります。
これはプロデューサーがこの作曲家さん使いたい、ってだけで進んでいくうちに要求が増えたパターンとプロデューサーがゲーム会社の上層部に色々チャチャを入れられて、どうしようもなくというパターンが多いです。
プロデューサーが原因のモノは日本でもあると思いますが、上層部の意見、というのはわかりにくいと思いますので説明すると、たとえば、女性向けゲームで男性キャラクターしか登場させないのは日本では常識レベルですが、中国では「女性向けゲーム」というジャンルを理解していない上層部がいます。
その場合、「男性だけでなく女性も出さないと、中国で売れない」という理由で、女性向けゲームに女性キャラが登場することになります。日本だと、それなかなか受け入れられないですよね。プロデューサーが有能でも、そういう上層部の意見によってなかなかうまく行かない例だと思います。
これらの上層部の無理解が中国制作側の開発の遅れにつながり、日本のクリエイター側の納期にしわ寄せがくるのです。
その他の例だと「翻訳を外部に出すとコストがかかりすぎる」といって、自社で翻訳チームを作って台本やUI翻訳をしたところ、思った以上にクオリティーが低かった、というのもあります。これは制作の問題ではなく、上層部のビジネス的観点から言えば問題はないのですが、低クオリティーの台本は声優さん、及び収録するスタジオとしては、収録時に様々な問題をもたらします。
5.解決方法は?
ここら辺の状況をいち早く察知し、中国制作側と日本クリエイター側に相談できるコミュニケーションの達人が必要です。中国語と日本語は必須スキルですが、中国語ができるからといって、中国ゲーム会社とコミュニケーションがとれるかどうかは実は別問題です。
某会社が以前、弊社は中国人を雇入れましたので、中国市場はもう完璧です。といってきたことがありました。
それは素晴らしいことで中国市場を理解し、攻略するには正しい方法だと思いますが、その雇入れた中国人は中国のゲーム会社とコミュニケーションをとれるスキルはあるのか?が問題です。
中国のゲーム会社とコミュニケーションする上で重要なのは、彼らの裏を読み解くことになります。ビジネス担当と制作担当では、まったく考えるポイントが違います。
それらを読み解き、その納期は本当の納期なのか?本当にその要求で間違いないのか?それはもしかしたらこういうことを言っているのか?というのを押し返し、引き出す能力が必要になります。
日本ではありえませんが、クライアントの要求に疑問を持ち、正しい方向に導いていけるコミュニケーション人材、或いは会社を仲間に引き入れ、担当が孤立しないように社内の協力体制を築くことが重要になります。
6. 終わりに
中国の企業さんとお仕事するのは苦労が多いですが、少しは理解が深められたら幸いです。
皆さんも中国の方と話すときは、ストレートに行くといいかもしれませんね。