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aruji_note
やまだしす ほねのゆくえ
遠方の墓に入る彼の骨。
なかなかお参りに行けそうもない場所の遠さがまた悲しくて泣いているとBがぽつりと言った。
「分骨、してもらう?」
聞けば仲の良い仲間数人で分骨を願い出て遺族の許可を得ているとのこと。
そんな大事なことを決めてもいいのかすぐに答えが出るはずもなく考える時間をもらうことになった。
自宅に戻り、分骨について調べる。
モーニングジュエリーや遺骨ジュエリーとして肌身離さず遺骨を身につける人もいるらしい。
20年前に別れた私がそんなことをしてもいいのか。
彼の意思の介入なしで、それを持つ権利が私にはあるのか。
とにかく毎日毎日悩み、迷った。
私の迷いはある夢で立ち消えることになる。
夢の中で私は彼の遺体と同じ部屋で暮らしていた。
家具と同じくらい部屋に馴染む彼の遺体はエンバーミング処理をされているのか腐敗もなく、穏やかに眠っているようにしか見えない。
そして、ふと気がつくと彼が座って私に向かって「ありがとう」と告げた。
「ここは眠りやすいよ」
そう言われたと思った瞬間、彼はまた遺体に戻っていた。
私が声を発するまで数瞬の間に彼はまた眠ってしまった。
目覚めてから、Bに連絡を取った。
あの夢が私の願望でもいい。
死人に口はないのだ。
生きてる私が決めてもいいじゃないか。と。
私はまた大阪行きの切符を買った。