やまだしす むねにいだく
大阪で彼の遺骨を受取り、事前にオーダーしていたチタンのペンダントに納める。
分けてもらった骨は1センチほどの小さな小さな欠片だった。
革紐をつけて首にかけ、ちょうど胸の真ん中になるように調節をしてもらった。
帰り道、遠回りをして彼の自宅だった家を見に行った。
いつも車が止まっていた場所。
当たり前だけど、そこにはなにもない。
青いカーテンもかかっていない。
なくなったもの。
そして、いま胸にあるもの。
なんとも言えない高揚感と絶望感。
両極端の感情と、骨を胸に抱いて帰路についた。
遺骨を胸に抱きながら生活をする。
働き、食べて寝る。
なにもかわらない。
ただ、彼だったものがそこにある。
それだけで幾分安心感を得ていた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?