脈 脈子

ライター。深海性WEBメディア「フカメディア」編集長。子なし夫婦と妙齢の猫、2人と1匹…

脈 脈子

ライター。深海性WEBメディア「フカメディア」編集長。子なし夫婦と妙齢の猫、2人と1匹でやんややんやと暮らしている。廃墟と深海魚が好き。

マガジン

  • 骨折り女の台湾入院日記

    初めて行った台湾で、バイクにはねられ、足を骨折。現地で病院送りになったものの、英語も中国語もできない筆者は大ピンチ!なにかとギリギリすぎる台湾での入院・療養10日間の回顧録

  • こはだ日記

    なんだか刺さる ねこのこはだ日記

記事一覧

毎日唱えることば

【2024.4.11】 夫が起きた気配で目を覚ますと、ちょうど胃のあたりに重みを感じて「よしよし、いるいる」とうれしい。 去年10歳を過ぎたねこ。それまでの超健康優良児ぶ…

脈 脈子
5か月前
1

あの日の母の歳を超して、わたしは

【2024.4.5】 朝から連続テレビ小説『虎に翼』に感銘を受けていた。石田ゆり子さんと伊藤沙莉さんは好きな俳優さんのツートップといってもいいくらいで、キャストが発表さ…

脈 脈子
5か月前
3

送り状の文字だけで沁み出す唾液

【2024.4.3】 目が覚めたら、しばらく正座した時の足のように頭がビィィンと痺れていた。痺れるんだなぁ、頭って。 今日は気分転換に公園へ行って仕事しようかなと考えて…

脈 脈子
5か月前
1

ひょいと取り上げたそれは、神様の杖

【2024.4.2】 午前中によくよく思考を巡らせないといけない話が入ってきて、時折うなりだすノートパソコンのように脳がうなりを上げる。うならせながら、ありもので簡単な…

脈 脈子
5か月前
3

自分の中の壁をハツリたい欲

【2024.4.1】 新年度あけましておめでとうございます。そう言いたい朝だった。 ここのところ「年度」でしっかりくくられた仕事に携わっているからかもしれない。 正午か…

脈 脈子
6か月前
5

「木彫りの仏像にはちょっとうるさくてね」

【2024.3.24】 このくらいには起きたいね、と昨夜思っていた時間よりもよく眠った。 すっかり時間がなくなってしまい、ごはんも食べずに急ぎの仕事にきゃー!っと取りか…

脈 脈子
6か月前
3

その丸さにハッとする

【2024.3.23】 前日は明け方4時近くまで仕事をしていたため、ゆっくりの目覚め。 簡単な朝ごはんを用意してソファに腰掛け、もそもそと口を動かしていると、ねこが背中を…

脈 脈子
6か月前
2

XはやがてTに、そして//

自宅の窓からふと外を見やると、むこうの方で2台の赤と白の大きなクレーンが「これ以上ないだろうな」と思われるベストバランスでX字に交わっていた。 ビジュアル系バンド…

脈 脈子
6か月前
4

新年早々お詫びがございます。

年が明けました。 2024年もnoteはきっとボチボチとしか書きませんが、ふと新着記事があった時にはご贔屓によろしくお願いいたします。 さて、新年早々にお詫びがございま…

脈 脈子
9か月前
3

DIYにアラズ(台湾入院日記—日本編—)

前回はこちら 「ほな次回、金具の情報持ってきてな」 宿題が出た、前回の診察。自分の身体に埋まっている医療器具の詳細を教えてもらう。たったそれだけのこと。そう、こ…

脈 脈子
11か月前
5

左足首と和解せよ(台湾入院日記—日本編—)

前回はこちら 台湾へ行くと言っていた看護師さんの姿はなかった。 あぁ…そんな神様!いや、神はおられないのですか!?一見怖そうだけど気さくな彼女にむごい仕打ちを与…

脈 脈子
1年前
4

ゆく女くる女(台湾入院日記—日本編—)

「このままやと歩かれへんで」 そう言い放つのは、リウマチに悩む人々のオアシスと言えそうなほど、やってくる患者が絶えない整形外科の院長・Y先生。お盆明けのことだっ…

脈 脈子
1年前
7

ただいま日本〜OMOTENASHIの底力〜(台湾入院日記)

前回はこちら 豆粒のようだった海上をゆく船が、もう、すぐそこにあった。 いよいよだ。いよいよ帰ってきたのだと、窓の外を西川きよし師匠のごとき目で凝視する。 視界…

脈 脈子
1年前
13

さよなら台湾(台湾入院日記)

前回はこちら 帰りたいけど、帰りたくない。 複雑な気持ちで迎えた、約束の時間。 8月9日 午前4時過ぎ。 準備は万端だった。 気持ち以外。 生まれて初めて来た台湾の思…

脈 脈子
1年前
18

地球最弱の生き物がいただくのは(台湾入院日記)

前回はこちら 楽しみにとってある朝食の存在は、人を簡単に幸せにする。 ていねいに握りしめたおむすびでなくても。スーパーフードを盛りしめたサラダプレートでなくても…

脈 脈子
1年前
13

竜宮城に案内されし骨折り女(台湾入院日記)

前回はこちら 夫がガサゴソと帰り支度をしているようだ。 という気配を感じるのが精一杯の朝4時。キツい往復をさせてしまったなと、申し訳なさと感謝はあるけど、起き上…

脈 脈子
1年前
11

毎日唱えることば

【2024.4.11】

夫が起きた気配で目を覚ますと、ちょうど胃のあたりに重みを感じて「よしよし、いるいる」とうれしい。

去年10歳を過ぎたねこ。それまでの超健康優良児ぶりはなんだったんだ!と思うくらい、この1年で大きな病気を立て続けに2つもやって以来、彼女が毎日ちゃんと生きていて健康であることが、よりいっそう大きな意味を持つようになった。

眠る前には「また明日ね」、起きて姿を見たら「また会

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あの日の母の歳を超して、わたしは

【2024.4.5】

朝から連続テレビ小説『虎に翼』に感銘を受けていた。石田ゆり子さんと伊藤沙莉さんは好きな俳優さんのツートップといってもいいくらいで、キャストが発表されたころから楽しみにしていたのだけど、それにしても素晴らしかった。

お見合いは絶対だと感情的になる母親に対しての第一声が「ありがとう、私のこと心から愛してくれて」と来た。一触即発の場面でそんなこと言える娘がいるかい?

だけど決

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送り状の文字だけで沁み出す唾液

【2024.4.3】

目が覚めたら、しばらく正座した時の足のように頭がビィィンと痺れていた。痺れるんだなぁ、頭って。

今日は気分転換に公園へ行って仕事しようかなと考えていたのだけど、どうも雨の気配がする。ほうぼうから立ちのぼる雨の気配を布団の中で感じながら目を閉じてじっとしているうちに、頭の痺れはなくなっていた。

布団から這い出てカーテンを開けてみると、やはりしっかりと雨が降っている。

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ひょいと取り上げたそれは、神様の杖

【2024.4.2】

午前中によくよく思考を巡らせないといけない話が入ってきて、時折うなりだすノートパソコンのように脳がうなりを上げる。うならせながら、ありもので簡単な昼ごはんを用意して食べたのだろうけど、なにを食べたのかよく思い出せないくらいには思考が右往左往していた。

気持ちと考えがしっくりと噛み合わないことは、生きていれば「そういうこともあるよね」という感じではあるけれど、足がつかないと

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自分の中の壁をハツリたい欲

【2024.4.1】

新年度あけましておめでとうございます。そう言いたい朝だった。

ここのところ「年度」でしっかりくくられた仕事に携わっているからかもしれない。

正午から相手先を訪問しての打ち合わせなどの予定があり、車で出かける。

駐車場を出た先に見える最初の横断歩道脇にピシッ!と音がしそうな真新しい制服を着たお嬢さんとぼっちゃん、そして子どもたちと同じくらいピシッ!と整えられたスーツの男

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「木彫りの仏像にはちょっとうるさくてね」

【2024.3.24】

このくらいには起きたいね、と昨夜思っていた時間よりもよく眠った。

すっかり時間がなくなってしまい、ごはんも食べずに急ぎの仕事にきゃー!っと取りかかる。朝ごはん用に買っておいたサンドイッチが冷蔵庫の中でますます冷えていくのが気がかりだったけど、とにかく急がなくてはいけない。

なぜなら今日は午後からお出かけの予定があるからだ。デスクに向かうわたしに前脚をめいっぱい伸ばして

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その丸さにハッとする

【2024.3.23】

前日は明け方4時近くまで仕事をしていたため、ゆっくりの目覚め。

簡単な朝ごはんを用意してソファに腰掛け、もそもそと口を動かしていると、ねこが背中を丸めて窓側の肘掛けから外を眺めている。ふわふわの身体の輪郭が逆光でぼんやりと照らされていて、こんなに愛しい命がすぐそばにあることがおよそ信じられない。愛しさが一瞬にしてビッグバンを起こす。この光景を記録しておこうと気づかれない

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XはやがてTに、そして//

自宅の窓からふと外を見やると、むこうの方で2台の赤と白の大きなクレーンが「これ以上ないだろうな」と思われるベストバランスでX字に交わっていた。

ビジュアル系バンドブーム世代の脳裏にXジャンプがよぎる。もちろんクレーンは飛び上がったりなどしないけど、きれいなX字をえがくそのクレーンがなんとなく気になりはじめ、折にふれて窓の向こうを見るようになった。

すると、刻々と動いていることに気付く。Xだった

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新年早々お詫びがございます。

新年早々お詫びがございます。

年が明けました。
2024年もnoteはきっとボチボチとしか書きませんが、ふと新着記事があった時にはご贔屓によろしくお願いいたします。

さて、新年早々にお詫びがございます。
まずは ↓ をお読みいただければ幸いです。

わたしが取材・執筆をし、『まいどなニュース』で公開された「神戸開港の近代〜現代の産業遺産群をめぐるツアー」についての記事に、ある指摘が入りました。

記事はこちら。

指摘が入っ

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DIYにアラズ(台湾入院日記—日本編—)

DIYにアラズ(台湾入院日記—日本編—)

前回はこちら

「ほな次回、金具の情報持ってきてな」

宿題が出た、前回の診察。自分の身体に埋まっている医療器具の詳細を教えてもらう。たったそれだけのこと。そう、これが日本国内ですむ話ならば、だ。

相手は鉄壁のガードを誇る台湾国軍病院。一筋縄ではいかないことを、これまでの経験から知っていた。先が思いやられたが、診察中に送っておいた問い合わせに対して、翌日の昼ごろに保険会社から第一報が届いた。

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左足首と和解せよ(台湾入院日記—日本編—)

左足首と和解せよ(台湾入院日記—日本編—)

前回はこちら

台湾へ行くと言っていた看護師さんの姿はなかった。

あぁ…そんな神様!いや、神はおられないのですか!?一見怖そうだけど気さくな彼女にむごい仕打ちを与えるのは、どうかおやめください。ちなみにわたしは、いかなる神も信じてないけど。なんなら、有名なネットミーム「ネコと和解せよ」をおもしろがるタイプである。

お盆明けの週終わり、帰国後2度目の診察。

手術の傷は順調に回復しているようで、

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ゆく女くる女(台湾入院日記—日本編—)

ゆく女くる女(台湾入院日記—日本編—)

「このままやと歩かれへんで」

そう言い放つのは、リウマチに悩む人々のオアシスと言えそうなほど、やってくる患者が絶えない整形外科の院長・Y先生。お盆明けのことだった。

いま思えば、同じ意味のことを初めて診察に訪れた日に言われていた気がする。
巻き戻して確かめてみよう。

8月9日 17時すぎ。
魂を置き去りにしてきたような帰宅を果たしてから4時間後。わたしは、台湾にいるうちに調べておいた自宅近く

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ただいま日本〜OMOTENASHIの底力〜(台湾入院日記)

ただいま日本〜OMOTENASHIの底力〜(台湾入院日記)

前回はこちら

豆粒のようだった海上をゆく船が、もう、すぐそこにあった。

いよいよだ。いよいよ帰ってきたのだと、窓の外を西川きよし師匠のごとき目で凝視する。

視界に滑走路の端を捉えたと思うと、すぐに「どすん」と衝撃があって身体が後ろに引っ張られた。エンジンを逆噴射する音が聞こえる。

帰ってきた。
帰ってこられた。
帰ってきてしまった。

11日前、意気揚々とピーチ航空便に乗り込んだ第2ターミ

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さよなら台湾(台湾入院日記)

さよなら台湾(台湾入院日記)

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帰りたいけど、帰りたくない。
複雑な気持ちで迎えた、約束の時間。

8月9日 午前4時過ぎ。

準備は万端だった。
気持ち以外。

生まれて初めて来た台湾の思い出のほとんどが、事故の記憶になってしまった。高雄の街も、その後に行くはずだった台北の街も、もっと知りたかったし、もっと目に焼き付けたかった。

また来たい。また来られるだろうか。
たくさんの親切を受けて、わたしはこの国のすべ

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地球最弱の生き物がいただくのは(台湾入院日記)

地球最弱の生き物がいただくのは(台湾入院日記)

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楽しみにとってある朝食の存在は、人を簡単に幸せにする。

ていねいに握りしめたおむすびでなくても。スーパーフードを盛りしめたサラダプレートでなくても。わたしはミスタードーナツで最高に幸せになれる女である。

8月8日、久しぶりに頭痛のない朝。
実は退院してからも、ずっと頭痛がしていた。

昨夜、何度もつまみ食いの危機に遭いながら、無事に夜を越したドーナツたちと対面する。

もちろん

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竜宮城に案内されし骨折り女(台湾入院日記)

竜宮城に案内されし骨折り女(台湾入院日記)

前回はこちら

夫がガサゴソと帰り支度をしているようだ。

という気配を感じるのが精一杯の朝4時。キツい往復をさせてしまったなと、申し訳なさと感謝はあるけど、起き上がれるだけのバッテリーはまだ充電されていない。申し訳なさと感謝はあるけど、横になったまま見送った。

日本まで、ご安全に…Zzz…

8月7日。

さて、本格的にすることがない。安全なホテルで迎えた朝には、もはや心配事もなければ、病院の

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