悪魔と文章
文字を書いているときだけが、癒される。祖母のワープロを借りたときから、そういう子どもだった。
書く内容はどうだってよかった。国語の教科書をランドセルから引っ張り出してきて、書いてある文をひたすらキーボードに打ち込んだ。画面に文字が並んでいく。なんとなく気持ちが良かった。
いまは文章と全く関係のない仕事をしている。センスが問われて、正解がない。上達したと思えても、次の日にはもっと上手い人の仕事を見て落胆する。自分が恥ずかしくなる。
仕事にプライドを持たない主義だ。持ってしまったら、人の意見を聞かなくなるから。と、思っているが、他の人の仕事を見て絶望するのは、プライドが高いからだろう。仕事に自尊心を託しているらしい。
文章を書くときだけが、気持ちが安らぐ。ないはずなのに、やたらと蝕んでくるプライドも、グラグラの自尊心も、文章に書けばその存在を認められる。絶望感を可視化できる。可視化できれば、こわくない。
どうか文章はこのまま、私の癒しのままでいてほしい。これだけは悪魔に取られませんように。一生涯書き続けていられるますように。