初恋の相手が義妹になった件。第18話
まさか家の中でハーレム状態になるなんて、気の利いたハーレムアニメでも見て予習しようにも、エロの方向にしか向いてないので、どうすればいいのかわからない。
父がいよいよ赴任先へ行くという日になり、僕は色んな意味で涙した。
頑張れよと、肩を叩かれたが、何を頑張れと言っているのか、なんとなくわかった。
「さて、ご飯食べて帰る?」
「私、ハンバーガー食べたい」
百花のリクエストで、帰りにハンバーガーのファストフードチェーンに寄って買って帰った。
「……」
僕は家に帰った途端、何故かこれまでと空気が変わったような気がした。
「どうしたの?」
僕の前にハンバーガーとポテトが置かれる。百花は僕の顔を見ると、首を傾げて袋の中に手を入れて、自分の分のハンバーガーを取り出す。
「あ、もしかして、私とお母さんの三人だけになったから?」
「そうなの? 別にすぐに食べたりしないから大丈夫よ?」
「お母さん……なんでそんな言い方になるのよ」
僕は俯いてポテトに手を伸ばす。その塩気で、少し活力を取り戻した気がした。
「ちゃんと利行さんから釘は刺されてるから大丈夫よ。浮気はダメだってね。もちろん、利行さんにも釘は刺してあるけど」
僕は無心でハンバーガーに喰らい付き、一気に食べた。
「お昼から何しようか? 二人は何か予定ある?」
「私は特にないから、部屋でダラダラするのもねぇ。悠人は何か予定ある?」
「期末試験も近いし、そろそろ勉強しなきゃだからな……」
「じゃあ、一緒に勉強しよ?」
百花は目を輝かせていた。僕は前のめりになっている百花をいなすと、ため息を吐いて立ち上がった。
「言っとくけど、本当に勉強だけだからな」
「わかってるよ」
僕はゴミを片付けて、部屋に戻った。
教科書を取り出し、大体の試験範囲を把握し、これまでの理解度を振り返る。そこから、苦手な箇所を炙り出し、そこを重点的にまず取り掛かった。
「悠人、ルーズリーフある? 切らしてて」
「ん」
僕は勉強机の上の物を渡した。
「ありがと……」
百花は僕の隣に座る。少し窮屈な長方形のローテーブルの長辺に二人で並んでいた。
集中して教科書を読み解く。教科書には基本答えが書いてある。数学にしても問の解き方も載っているし、これを読んで理解してから問題集に取り掛かることにした。
「……さっきから、教科書読んでるだけだけど、勉強できてるの?」
「じゃあ聞くけど、テストって問題集から出るのか? それとも教科書から出るのかどっちだと思う?」
「そりゃ、教科書でやった箇所から出るけど……」
「教科書には問題を解くための手引きが書いてある。古い言い方をすれば手引書なわけだ。だから、これを理解していれば、後は応用をすればいい。だから、教科書を理解してから問題を解こうと思ってね」
「……難しいこと言ってるけど、当たり前じゃない?」
僕は教科書を置いて問題集を取り出した。
「数学は昔から苦手なんだ。どうにも文系な頭らしくてね。だったら、文系のやり方で勉強しようって思って」
「強みを活かすやり方か……じゃあ私は先生を誘惑して点を貰えば……」
「冗談でもそういう事、言うなよ」
僕は真剣な眼差しを百花に向けた。
「わ、わかってるよ……」
「ならいいけど……」
僕は問題集の問いを解き続ける。シャーペンの芯が紙に擦れる音が響く。
それから大体一時間、二人は集中して各々の勉強を進めた。
「そろそろ休憩しようか」
そう僕は伸びをしながら言うと、百花は同じように伸びをする。
僕がベッドにもたれ掛かると、百花は僕に覆い被さるようにしてキスをしてくる。
僕は、百花が満足するまでそれを受け入れ続けた。おそらく三分くらいは続いていただろう。
離れる瞬間、百花の表情を見て、僕は肚の底がざわつく感じを覚えた。
「いつもなら、途中で終わっちゃうのに……」
「今日は百花が離れるまでしようって思って」
「もしお互いがそう考えてたら、一生キスしてたのね」
百花は机の勉強道具を片付けて、自室に持ち帰った。
僕も一旦、ローテーブルの上を綺麗にしておいた。
「悠人……」
百花は履いていたショートパンツを脱いでまた僕の部屋に入ってきた。
「するのか?」
「……どうしたいんだろう私」
「するなら……ちゃんと避妊しないと」
「私、初めてはちゃんと生がいい。せめて最初に挿れる時だけでも……」
「そっか……」
僕は百花に歩み寄り、抱き締めると、柔らかい体を触る。
「……夏休み。海に泊まりで行かない?」
「そんな貯金ないよ……」
「じゃあお母さんとか誘ってさ、お父さんも……皆んなで家族旅行。部屋は私と悠人、お父さんとお母さんで」
僕らはそのままベッドへ倒れ込む。
「ねえ、悠人。私、悠人が好きよ」
「僕も、百花が好きだよ」
ベッドの中で二人、足を絡ませて抱き合う。
百花の体温が伝わると、僕は心臓からまるでしあわせを成分にした様に、全身にそれが行き渡る。
「僕は世界で一番の幸せ者かもしれない」
「私も」
ベッドの中で愛を確かめ合っていると、一回から大きな物音が聞こえた。
「お母さん!?」
慌てて僕らは一階に降りて見ると、フィットネスゲームをしていた母が盛大にコケていた。
「あ……」
「お母さん……」
そのあられもな姿に、百花は絶句していたが、僕はその艶やかなポーズに釘付けだった。
「暇だから買ってからやってなかったしと思って、始めてみたんだけど……」
「それより早く体勢整えて……悠人もジロジロ見ない!」
僕は百花に尻を叩かれて我に返った。
「僕は何を!」
「くさい芝居はやめて……」
とりあえず二人で母を立ち上がらせて、ソファーに座らせた。
「怪我はない?」
「ありがとう悠人。大丈夫よ」
僕は冷蔵庫にあったスポーツドリンクのペットボトルを差し出した。
「というか、なんで百花、下履いてないの? あ、もしかして……」
「あ、これは……」
「いいのよ。年頃だから、気にする事ないわよ」
百花は僕に隠れるようにして隣に座った。
「まあ妬けちゃうわね」
「百花、ちゃんと母親に甘えないと」
「違うわよ。悠人にそうできるのはやっぱり恋人の特権ってやつでしょ?」
「なんでそこに嫉妬するんですか?」
僕はため息を吐くと、立ち上がり、台所へ向かった。
いつものようにお茶を飲んでいると、百花も欲しそうに見てきたので、お茶を注いでやった。
「本当、二人が仲良しで良かったわ」
「まあ……初恋の相手だったから」
百花が恥ずかしそうに言うと、母はニヤニヤしながら僕を見ていた。
「初恋同士が付き合えるなんて滅多にないんだから、悠人も百花をちゃんと捕まえておかないとね」
「わかってるよ。だから今もこうして……」
僕は百花の肩を抱き寄せると、百花は丁度口にグラスを持って行っていたため、溢れたお茶がシャツを濡らした。
濡れたシャツが透けて、百花の下着がほぼ丸見えになっていた。
「あら、大胆ね」
「悠人……一緒にお風呂入らない?」
「あら、百花も大胆ね」
「母さんはこの状況を楽しんでるだろ?」
僕はタオルを持ってきて百花を拭く。
「さりげなく変なところ触らないでよね」
「別にいいんじゃない? 彼氏だし」
「私達はまだなの!」
「え? てっきりもうしてるもんだと思ってた」
「……夏休みになったら」
百花は少し黙った後、また口を開く。
「夏休み、皆んなで旅行に行かない? 海とか」
「あ、それならね、利行さんが色々考えてるのよ」
「へえ、父さんが」
「それに、お盆の時期にうちの方の実家に帰省しようとも話してて……」
「広島だったっけ?」
僕は以前百花とその話をしたことを思い出した。
「ええ。ずっと帰れてなかったし、悠人もちゃんと紹介したいし」
濡れた百花を温めるため、風呂に入ることにした。
「本当に二人で入るの? ダメよ、お風呂でエッチなことしちゃ」
「わかってる!私達、身体だけの関係じゃないんだから」
百花は怒り気味にそう言うと、母は笑いながら僕にウインクをしてきた。
何のサインなのかよく分からず、僕は百花と脱衣場へ向かった。
「二回目となると恥じらいは無くなるものなのね」
「ああ、確かに」
「悠人、興奮する」
「するよ? でもなんとか抑えてる」
「……一応言っておくけど、悠人が私を見て興奮するのは嬉しいからね。全然、嫌とかないから」
「そうなんだ……」
「入ろっか」
僕らは浴室に入り、前と同じように背中を流し合い、湯船に浸かった。
二度目になると流石に前回ほどの興奮やドギマギはなく、お互い自然に見合っているのに笑っていた。
「いざする時、恥ずかしくて見れないってなるのもおかしいよな」
「それもそうね」
僕らの笑い声が浴室に響いていた。
すると、扉の向こうに気配を感じた百花が、湯船から出て、それを確かめに行った。
「お母さん……」
「お母さんも一緒に……」
「ダメに決まってるでしょ!それに三人も入れないよ!」
「じゃあ、僕が出るから……」
僕はそう言って立ち上がる。
「ちょっと悠人、前!」
「え?」
僕は母に自分のそれを見せつけてしまった……。
「平気よ。大人だから見慣れているし。というか、悠人、百花と一緒にお風呂に入ってるのに、興奮していないのは……」
「いいでしょ!悠人はやる時はやるんだから!」
「わかったわよ……」
母はなんとか引き下がり、脱衣場から出ていった。
「その……悠人は大丈夫だよね?」
「何が?」
「ちゃんと私で興奮するよね?」
「当たり前じゃないか」
百花が湯船に入ってくると、僕はすぐに百花に抱きついた。
僕はまだ、こうしているだけで幸せなんだと百花に囁くと、私もと、返答があった。
これが僕らの今の精一杯だから、いつか先に進む時が来る。それがいいのか悪いのかは分からないけど、僕らはとにかく、今の幸せを守ることを誓った。
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