『君を殺したい』
『君を殺したい』
そう言って僕は笑った。彼女も笑い、気づいたら血まみれになっていた。
僕はいじめられっ子だ。小さい頃は内気な性格で自分の気持ちを表に出すのが不得意で、そのせいかよくいじめられていた。親に相談するべきだと思うけど僕の母は僕が赤ちゃんの時に病気で死んで、父は忙しくて家に帰って来ないことが多い。最近は会話もしていない。そのせいか僕は父に相談することが出来なかった。先生に話す勇気もない、友達なんかいるはずもなく、そんないじめられる生活を僕は耐えながら生きてきた。そんな生活が続く中、僕は高校生になった。高校生になってからは友達関係を持つのをやめようと決心していた。友達関係を持とうと努力するとあいつ嫌いだとか、キモいだとかの理由で仲間外れにされて、最終的にいじめに発展した。だったら、最初から友達作りなんかするべきじゃない。友達を作ると相手もこいつキモいとか思って僕から離れていくに決まっている。自分も嫌な思いをし、相手も嫌な思いをする。今まで気づかなかった僕に反吐が出る。
入学式も終わり、僕は高校生になった。気づくと中間試験期間になっていた。僕は中学の頃に猛勉強し、この高校に入った。この高校に入ったからには、いい成績を残して、名のある大学に行きたかった。友達なんかいなくても、学歴さえあれば、高収入になり、お家を建て、趣味を探し、毎日美味しい料理を食べて、いいベッドで寝る。そんな生活いいに決まっている。楽しいに決まっている。だから、僕はこの試験で絶対に高得点を取るしかない。そもそも、予習と授業の復習もしてあるから大丈夫だと思うが、心配だ。ソワソワした気持ちを紛らわすかのように、僕は毎日家に帰るかえってからはずっと勉強し、気づいたら試験当日になっていた。まず一時間目は数学だった。得意な数学だったため、案外楽に解けた。二時間目は化学で、三時間目は地理だった。一日目がおわり、二日、三日と試験が続き無事終わった。結構解けたから自信はある。試験内容が返ってくると100点はなかったけど、全て90点以上だったから、少し安心。でも100点も取ってみたいな。今回は凡ミスだけだったし、次回は行けそう。そんなことを思いながら、すっと横を見るとずっと僕のことを見てくる女の子がいた。
『へぇーー。君、すっごいねぇー。全部90点じゃん』
なんだこの子。急に話しかけてきて、僕は無視をした。
『無視ですかー?無視は虫だけにしろって。私は人間なんでー、無視はしないでよー』
なんだよそれ。僕は少しその女の子を見て、無視をした。
『今見たな。見たから君の負けね』
別に勝負を仕掛けた訳ではないですけど。なんだよこの子本当に。話しかけないでくれ。こんな子だって僕のことを嫌になっていじめるに決まっている。もういじめられたくないんだ。だから関わらないでくれ。そう言いたかったが、出せずに僕は無視をし続けた。そうしたらその女の子はすぐに前を向き、寝てしまった。そういえばこの女の子、よく寝てるよなと思ったけどどうでもいいと思った。その日の放課後、帰る途中であの女の子が話しかけてきた。
『また無視するのー?君ーー?』
僕は.........逃げた。全力で逃げた。関わったらまずいと思ったからだ。関わったら絶対いじめられる。過去にそういう経験があるからだ。でも逃げたら逃げたでやばいあいつ話しかけただけで、逃げるキモい奴と思われるのではないかと思ったが僕は逃げた。すると勢いおく肩を掴まれ、僕はその女の子に捕まった。
『君、足おっそ。運動してる?体細いし、してなさそうだなー』
彼女は僕の服を破れるくらい乱暴に掴み、壁にドンと押された。
今の状態は言わば、壁ドン状態だ。そう、壁にドン状態だ。なんで、僕壁ドンされてるんだ。こんな場面キュンとする場面なのだろうけど、僕からしたら女の子に問い詰められるだけなんだけど。
『..........................やめてください』
『やっと話した。あ、ごめんね』
彼女は少し僕に離れた。
『なんで、無視するの?不思議なんよー。不思議だね。フシギダネーーー』
なんだそのギャグ。ちっともおもしろくない。
『.....僕のが不思議です。なんで僕と話したがるんですか?』
『いや、なんで無視するのが気になっただけ、そんだけだよ』
そんな理由なだけで僕を追いかけたのか。そんなことを言いたかったが、言える訳がない。
『.........ただただ、君のことがあまり好かんだけです』
本当は別に好かん訳ではないが、怖かったのだ。関わったら、どうせこの女の子も僕のことが嫌になるにちがいない。僕と関わってもいいことないし、僕も関わらない方が僕の身も守れる。こう言った方が、良かったと思う。大体いじめてくる人たちは僕と関わって、少し遊ぶ仲までいってそこからエスカレートしていき、いじめまでにいく。少し関わっただけだといじめられたことはない。だから、こう言った方が相手も関わりたくないと思うと思ったからだ。でもこの女の子は違った。
『へーー。私のこと好かんのかー。残念だなー。私は結構気になってるんだけどなーーー。ちょっとショック』
え?今なんて言った?は?なんで?そんなことを思ったけど、その女の子はその言葉を言った後にぺこりと頭を下げて、僕の家の方角の反対方向に歩いて行った。
あの出来事があって、一週間が経った。女の子はあれから話しかけて来なくなった。そもそも話したのが、二回しかない。でもなんで、話したことのない僕を気になってるんだと思ったけど、話す勇気などなく。あっという間に数ヶ月が経ち、夏休みになった。夏休みでも変わらず、勉強尽くしの予定だ。それ以外やることないし、友達もいないから遊ぶ予定もない。ある日、僕は図書館に行き勉強していると隣にある女の子が座った。見たことある顔だと思うとそれは、あの女の子だった。相手もこっちに気づいて、話しかけてきた。
『へーー。ここで勉強してるんだー。いつもここでしてるの?』
なんでこの子、僕が嫌いと言ったのに話しかけてくるんだ。不思議に思った。
『そうです』
『おー。今回は無視しないんだ。ありがたいね、ねぇねぇ。君さ。本当に私のこと嫌い?』
『嫌いは嫌いです』
『へーー。私は君のこと好きなんだけど』
は?へ?は?なんで?大声でなんでと言いたかったが、図書館だったためグッと堪えた。なんなんだこの子。別に話したの二回だけなのに。そうだ。嘘に決まってる。嘘だ。嘘コクをして、僕のこといじめるに決まってる。僕は下を向いていた。そして、女の子を見つめると少し顔が赤くなっていた。これ、本当なのか?信じ難かった。
『嘘コクとか本当に迷惑なんで、やめてください。僕のどこを好きになる要素があるんですか』
『好きなんだもん。好きに理由いる?』
僕は人を好きになったことがないから、分からない。恋とはどういうものなのか。
『だったら、どう信じてもらえる?』
『だったら..................』
これを本当に言っていいものなのか、分からなかったが、真実が知りたかった。だから勇気を振り絞って言った。
『僕とキスできますか?』
その言葉を言った瞬間。僕と女の子はキスをした。相手からによる強引なキス。ベロとベロが重なる感触を味わった。
『最初からベロチューはやりすぎたかなー。これで信じてくれた?』
僕は頭が真っ白になった。キスの味を知った。キスの味は唾液の味。唾液は唾液なんだけど、気持ち悪くない。なんか、少し甘かった気がする。完璧に信じた訳ではないが、少しこの子のことを知りたくなった。案外僕はチョロいのかもしれない。この子とキスをしただけで、少し好きになりそうだったから。キスをした後はとりあえず、付き合ってみようよと言われ、僕はうんと言ってしまった。その子はとても喜んでいた。ダメ元で言ったらしい。全然突然振ってもOKだからねと言われ、お試し期間みたいな感じになった。まさか、友達より先に彼女が出来るとは思わなかった。僕は本当に都合がいい男かもしれない。こんなこともう経験出来ないだろうし、この子なら大丈夫かもと思えた。たったキスだけで、ここまでなる自分も少し醜い。
彼女が出来ました。しかも結構かわいい彼女が。そもそも、その女の子の名前も知らないのに付き合うとかどうかと思ったが、とりあえずお試し期間ということで付き合った。付き合った後は大変だった。デートだったり、服を買ったり、髪型を変えたり、自分には不慣れすぎて、ずっとその子の後を追う感じだった。でも嫌な気分ではなかった。ずっと彼女は僕と話しても、楽しそうに話してくれる。僕も今までより、笑顔が増えた気がする。本当に心から楽しいと思えた。もう一度その子に僕のどこが好きなの?と聞いてみたが、その時は沢山言われた。私の席の横で真面目に勉強してるところが好き。私だけを見れるところが好き。恋愛経験が少ないから、キスとかするとオドオドしてるところが好き。優しいところが好き。後、顔も好き。沢山言われた。恥ずかしかったが、とても嬉しかった。最初は嫌い気味の普通だったけど、どんどんその子に惚れていった。全てのことがその子で初体験だった。新しい刺激ってこんなに素晴らしいものなんだと思えた。その子と過ごすと時間があっという間だった。時間なんてものがあったけ?と思えるほど。これが恋愛かと思った。その子と付き合って勉強にも精が出て、学年トップになるほどまで、上り詰めた。絶対にこの子を幸せにして、僕も幸せになるそう決めていた。しかし、そんな幸せは長く続かなかった。
その子が事故にあった。大事故だった。彼女が自転車に乗っていると自動車が突っ込んで来たらしい。そのせいで彼女は吹き飛ばされ、急死を彷徨った。一命は取り留めたが、目を覚ますのが分からないと医師から伝えられた。僕は毎日彼女のお見舞いにいった。しかし、彼女が目を覚ます日なんて来ず、なんとあれから3年も経った。僕は高校を卒業して、大学2年生になっていた。彼女のお見舞いは週に一度となった。そしてある日彼女が目を覚めた。本当に安心した。しかし、状態は良くないものだった。彼女が歩くのは無理だった。右腕も半麻痺状態。使えるか分からない状態であった。彼女は絶望し、その日から彼女の笑顔が消えた。僕は毎日お見舞いに行ったが、彼女は僕と会いたがらなかった。数ヶ月続き、彼女は退院できるまでになったが、下半身は使えず、右腕も使えない。僕のところで引き取りたかったが、僕は大学があったので、無理だった。仕方なく、彼女の両親のところで引き取ってもらうことになった。彼女に会うのも一ヵ月に一回ぐらいになった。彼女は会いたがらなかった。僕なんか見たくないと言う。でも僕は会いに行く。君のためじゃない。僕が会いたいから。あの時だってそうだ。君は自分勝手なんだ。告白された時も僕の気持ちなんか聞かず、一方通行だった。買い物だって、私に付き合え!といい連れ出され、怖い夢を見た時は私と電話してと懇願してきた。そんな彼女が好きになったんだ。今度は僕が自分勝手になる番だ。意地でも会いに行く。君の目の前で楽しい話をするんだ。僕の日常でもいい、こんなところまた行こうとか、また楽しく話そうとか、沢山あるぞ。そんな日を続けていくと、僕はあるものを見つけた。彼女の日記だ。退院した時からある。
『5月11日。私は退院するけど、そこまで長くないと思う。長生きしたいけど、それはそれで苦痛。死ぬなら早く死にたかった』
『5月28日。君が来た。そう彼氏。彼氏なんか見たくない。だって君を見ると楽しい日々を思い出して、いやになる。だってもうあの楽しい生活は無理なのだから。』
『6月15日。もうすぐで、君のたんじょう日。たんじょう日沢山祝いたかったなぁ。むりだね。私は私でせい一杯。ごめんね。本当に。本当にごめんね。』
『7月1日。あー。君と話したい。君と話したら、少しでも楽になれるのかな。でも君には君の人生があるんだから。私はじゃまものだよ。』
『7月25日。私なんかより、新しい彼女作って欲しいな。私なんかよりいい女いっぱいいるのに。なんで、毎日会いたがるのさ。ばか。』
『8月3日。あー。死んだ方が楽になれるのかな。』
『8月10日。死にたいな』
利き腕ではない左手で書かれているよく見ないと読めない汚い字があった。でも、彼女らしい、綺麗な字だ。僕はこれを見てると胸がはち切れそうだった。彼女がどんな思いで暮らしていたのが分かった。そして最後にあった一言。
『死にたいな』
その一言が僕は見た時震えた。それを見た翌日、僕は彼女に外で一緒にデートしに行こうと言った。しかし、彼女は反対した。何度かお願いをして、なんとか許可を得た。外って言っても散歩だけどね。車椅子の準備をして、僕は彼女を押した。
『わぁーー!綺麗だね!ここ!』
『.......ただのうみじゃん』
『そう?僕にはとても綺麗な海だと思うよ!だって君との初めてのデートも海だったじゃん!』
『そうだけど.......』
『ねぇねぇ!』
『なに』
『今からさ初めてのデート場所に行かない?』
『は?何言ってるの。そもそも。どうやっていくのよ』
『僕、車持ってるんだ!だから連れて行けるよ!』
『まぁ、別にいけない距離じゃないけど』
『そうだろ?だったらいこう!』
『なんで、急に........』
『だって。死場所としては、いい場所でしょ』
『は。何言って........』
『取り敢えず行こう!』
僕は彼女を車に乗せて、走らせた。会話はなかったが、居心地は悪くなかった。山道を通ったり、高速道路に出たり、沢山走った。今までこんなに走ったことはなかったから疲れた。そして何時間か走らせた。
『着いたよ』
『懐かしいね』
『うん』
そんなことを言いながら、僕は日記を取り出した。彼女にこの日記について聞いた。彼女は驚いていて、やめてと言った。そして僕は聞いた。
『死にたいの?』
彼女は黙った。僕は本音を言って欲しかった。死にたいなら、死にたい。死にたくないなら、死にたくない。彼女に本音を言って欲しいと言うと
『死にたいわよ。だってこんな脚と腕じゃ、君と幸せになれない!私なんかよりもっといい女見つけて欲しいのに。なんで君はずっと私と会いたがるの?!やめてよ』
『君が好きだからだよ』
そう言った。彼女は泣き始めた。なんでよと言っていたが、その後にありがとうと言った。そのまま抱きしめた。彼女も離さないでと言った。僕はいつまでも彼女のことを抱いていた。
時間は22時くらいだろうか、電灯の下で僕たちは座っていた。彼女の体温が徐々に消えていくのが分かった。別に夏の夜だから寒い訳ではないが、とても寒く思えた。ここまで寒い夏の夜は初めてだ。多分彼女の死期も近いのだろう。僕も痛感はしていた。別にいいさ。ここで僕たちは終わるのだから。彼女を車椅子に乗せ。展望台に行った。彼女はもう後数時間で死ぬ。数時間ももつのだろうか。持っていたバックの中からロープと包丁を出した。
『ごめん。こんなものしかない思いつかなくて。どれがいい?』
『ロープで私の首を絞めてくれない?』
『あぁ、分かった』
ロープと包丁なんて、どっちも苦しいものだ。苦しみながら死ぬなんて、普通は嫌なはず、彼女なんて多分もうすぐで死ぬんだから、僕が殺さなくてもいいと思った。しかし、彼女は僕に殺して欲しいと言ったから、僕はそれを実現させるだけだ。僕も彼女に殺して欲しかった。大好きな人に殺してもらえるなんて、なんて最高なのだろうも思う。ロープを彼女の首に巻き、いつでも殺す準備はできた。
『君を殺したい』
『うん、お願い』
彼女と僕は笑って最後のキスをして、僕は彼女の首を強く絞めた。これ以上にない力を出した。最初は彼女も苦しんでいたが、数分後にはピクリと止まった。息をしていない。死んだのだ。
『ははは。まさか体細いって言われたから、体鍛えたのが、こんなところで役に立つとはなぁ。こんなことも予測してたの?』
『.................』
返事はなかった。あるはずもない。僕が一番分かってる。僕が殺したんだ。僕は死んだ彼女を見て、おでこにキスをし、彼女の手首を切り、血を顔に塗った。気づいたら僕の周りは血まみれになっていた。
作者
愛の形は様々ですよね。こんな愛も素晴らしいと思います。好きです。誤字が多い気がするけど、読み返すのめんどくさいからいいや。
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