『隣の人』
上京してから、約半年が経った。上京して思ったのだが、案外東京は住みにくいなと思った。だって電車なんて基本満員だし、街は汚いし、うるさいし。そんな生活がとても憂鬱だった。しかし、そんな生活を紛らわせてくれる人がいる。隣の部屋のユキさんだ。雪さんは恐らく俺と7.8ぐらい離れているお姉さんだ。いつもキリッとした顔立ちとたわわな胸に夢中だった。ユキさんって名前は大家さんと話しているところを偶々聞いて、大家さんがユキさんと言っていたから多分ユキさんだ。何日かに一回会うのだが、とても綺麗な人で俺はユキさんが好きになっていた。でも俺は昔からモテたことがなく、女と会話なんて母親ぐらいだ。そのため俺から話す勇気なんてこれっぽちもない。そのため会話はなんてするはずもなく、偶々すれ違ってこんにちはと挨拶をするぐらいだ。街でよくナンパをする人をよく見かけるのだが、それを見ると馬鹿だなと思う。だって大体ナンパする人って顔があまりカッコよくないだ。なんでその顔でナンパ成功すると思ってるのだろうといつも思う。でもその行動力だけは凄いと思う。取り敢えず行動に移さないと分からないことなんてよくあることだからな。それは分かる。だからその馬鹿の行動力を俺にも分けて欲しい。ナンパの人に出来て、俺に出来ないことなんてあるかと自分を納得させるようにいつも会っては挫折している。だって俺からしたら綺麗すぎる。あんな人確実にモテるに決まっている。絶対会社とかでモテてるんだろうなと思う。もしかしたら、付き合ってる人もいるかもしれない。でも、何かしらで俺と接点が出来て、付き合うってなったらなぁとなるはずもない妄想をよくしている。ユキさんと話す機会を伺いながら、何もない生活を続けていた。
ある日の夜、俺はクタクタに疲れていた。バイトで来れなくなった人がいて、その人の代わりにシフトに入ったらいつもより三時間も帰るのがオーバーしてしまった。気づいたら夜の11時だ。こんなに遅くなったのは初めてだ。ふらふらになりながら帰っていると玄関の前に誰かが座っていた。まさか、酔っ払いかと思い、近づくと女性だった。女性がこんなところで寝るとやばいなと思い、起こそうと体を揺らすと長い髪で見えなかった顔が見えた。ユキさんだった。いつもは髪を結んでいるから分からなかった。少し動揺したが、女性をここで眠らせるわけにはいけないと思い、必死に起こしたが、少し寝言を言うだけで起きなかった。これはまさか俺の部屋に入れるべきなのかと思い、おんぶをして俺の部屋に入れた。おんぶした時はヤバかった。いつも会うたびにあのたわわな胸を見ていたから、それを背中で全部受け止める感じがもうヤバかった。必死に堪え、なんとか俺のベッドに寝転がせた。この後どうするべきなのだろう。取り敢えず、水飲ませた方がいいのかな、でも起きないし、服を脱がせるのはなんかセクハラぽいし、どうしようと考えてたが、結局分からず俺は先に風呂に入った。風呂に入った時、俺はあの背中の感触を思い出して、一発抜いておいた。抜かないとなんか襲ってしまいそうだったから、それは意地でもしたくない。本音を言うとしたいけど、我慢だ。風呂から上がり、俺はユキさんの元へ行くと、ユキさんは起きていた。起きたのはいいもののまだ酔っ払っている。
『だぁれぇ〜だ〜。きみ〜。ここはわたしの〜へあだ〜ぞぉ〜。ふほうしんにゅ〜いけないんだぁ〜〜』
呂律がヤバいし、後ここ俺の部屋なんですけどとツッコミを入れたがったが、取り敢えず、水を飲ませようとしたが、溢してしまい服がビショビショになった。もうブラが透けて見えている。もうヤバいって、俺の息子が天井と挨拶をしているよ。タオルを持ってくると言い、俺はタオルをタンスから出し拭こうとしたがユキさんはいらにゃいと言い、そのまま寝てしまった。俺はユキさんが寝ているベッドの横で肩を崩すように座った。意外な一面を見た気がする。酔うとこうなるなんて、思いもしなかった。こういうのもなんかギャップがあって良いなと思った。いつもの凛々しいユキさんとは正反対な感じがまたいい。これで話す機会出来るかなと少し期待をしてしまった。明日どうしようと思ったが、俺も疲れていてそのまま倒れるように寝てしまった。
次の日、俺はいつもとは違う場所で目が覚めた。自分の部屋の床だ。いつもはふかふかのベッドなのだが、今回は違う。ベッドであのユキさんが寝ている。こんな日が来るとは思わなかった。この前まで、挨拶しかしなかった人が俺のベッドに寝ている。しかも俺の好きな人。体を起こし、ユキさんの顔を見た。しかし寝顔もとても綺麗な人だなぁ。昨日は酔っていたからか、少し顔がふにゃふにゃになっていたが、今は違った。まるで別人だ。俺は立ち上がり歯磨きをし、朝食の準備をした。朝は大体、味噌汁と卵焼きと白米だ。とても質素だが、俺はこれが一番好きだ。準備中にユキさんが起きた。ユキさんは凄く驚いた様子だった。そりゃそうだろうと思い、昨日の出来事言った。ユキさんは深く謝罪をした。俺は気にしてないですよと言い、折角なんで食べますかと言うと、ありがとうと一言言われ一緒に朝食を食べた。勇気を振り絞って言って良かったと思った。特に会話はなかったが、ユキさんは一言言った。
『美味しい』
その一言だけだったが、すごく嬉しかった。初めての手料理を雪さんに振舞ったのも嬉しかったが、何より人から美味しいと言葉をくれたのが一番嬉しかった。やっぱ料理は人に振る舞うものだよなと思った。何も会話のない食事。普通は居心地は悪いかもしれないが、俺は悪くはなかった。好きな人と食事なんて最高の最高だ。気分が舞い上がっていると、雪さんは一言言った。
『何も聞かないの?』
そう言った。確かに聞きたいことはあるが、聞いても良いものなのだろうかとそう思っていたからだ。でもユキさんがそう言うってことは何か聞いて欲しいのだろう。俺は聞いてみることにした。
『聞いてもいいんですか?俺と話したことないのに』
『話したことないけど、君良い人だと思うから、いいよ』
『どこに良い人という要素が......…』
『だって、昨日の私結構無防備だったでしょ?私お酒弱いから、すぐ無防備になるのよ。それなのに襲ってない。十分に良い人だと思うけど』
そういうものなのかなと思ったが、俺はユキさんに聞いてみた。
『何かあったんですか?』
『彼氏に振られた』
彼氏に振られた。そう言った。少しショックだった。そりゃあそうだろう。だってこんな美人に彼氏がいるのは普通だ。彼氏に振られた理由は全然セックスしてくれないからだと言う。なんでそんだけの理由でこんな美人振るのだろう。勿体なさすぎる。セックスしなくても、性欲ぐらい抑えろよと思う。後、こんな美人が彼女だったら妄想だけでも、オナニー捗ると思うけど。その後は少し彼氏の愚痴を言って、俺に質問投げて来た。
『君名前は?』
『ユウです。優しいっていう字でユウです』
いい名前だと言ってくれた。そんなにいい名前なのだろうかと思った。至って普通の名前だ。俺もユキさんの名前を聞いてみた。名前は知ってるのだが、一応聞いてみようと思った。
『ユキだよ。ユキってあの冬に降る雪ね。』
その質問も答えてくれたと同時に食事が終わり、俺は食器を片付けようとした。そしたら、ユキさんは一緒に片付けてくれた。昨日面倒見てくれたから、お礼だという。一緒に食器を洗った。仕事は大丈夫なんですかと聞くと今日は休みらしい。だから一人で飲んでいたのだそう。食器が洗い終わり、そのままユキさんはまた話そうね、お隣さんと一言言い、隣の部屋に帰った。これで少し話す機会が増えたと思う。次はしっかりと話しかけてみようと思い、もう一度ユキさんが寝ていた少し濡れたベッドでそのまま寝た。
数週間後、あれからユキさんとは話していない。そもそも会ってもいない。大家さんに聞いてみると、最近は忙しくて夜遅く仕事をし、いつもより早く出勤しているらしい。そのせいで会う機会がない。俺から、ユキさんの部屋に訪ねてもいいと思うが、疲れているだろうから、行くのが申し訳なかった。もう一度話したいなと思いながら生活しているとある日の夜、インターホンが鳴った。扉を開けるとそこには私服のユキさんが立っていた。とてもオシャレな服だった。なんだろうと思い、聞くと前に料理ご馳走になったから私の手料理を振る舞うよと言う。おいおい。嘘だろ。最高じゃん。是非と大きい声で言った。そのまま俺はユキさんの部屋に入った。初めての女性の部屋。やはり可愛らしいが、少し散らかっている。生活感がとても出ていた。手料理っていうのは、オムライスだった。他にもいろいろあったが、オムライスが特に美味しそうだった。椅子に座り、いただきますと言うと同時にいただいた。すごく美味しかった。こんなに美味いオムライスは初めてかもしれない。俺の母親よりクソうめぇんだけど、すご。母親に勝つ人っているんだなと実感した。美味しいですとユキさんに言うと、ニコッとして良かったと言った。その笑顔にドキっとして、またオムライスを一口食べた。美味しすぎて、無言になってしまった。食べ終わり、お腹が腹一杯になった。
『そんなに美味しかった?』
『マジ美味すぎますよこれ!俺の母親顔負けですよ!』
『そんなに褒める?ありがとう。嬉しい。後さ、一つ提案なんだけど』
なんだろう提案とはと思い、聞いてみると
『毎週日曜日にさ。私の部屋においでよ。料理振る舞うから』
と言う提案だった。勿論俺はOKを出した。この提案は乗るしかないと思った。でもなんで、そんな提案をしたのかは聞くと
『君に食べてもらいたいからかな』
クソほど嬉しかった。俺は食事を食べ終わりそのまま、自分の部屋に戻ったのだが、その日は眠れなかった。そしてその日から毎週の日曜日にユキさんの部屋に訪れるようになった。
そんな生活が数ヶ月続いた。ずっと日曜日のことを考えて生活をしている。憂鬱な日々が今では最高な日々が続いている。でもユキさんからしたら、俺はただの隣人に過ぎないのだろうと思った。前に言っていたのだが、彼氏に振られる前は順調だったと言えば嘘になり、数ヶ月間、関係は良くなかった。お互い会いもせず、連絡もしない。仕事がお互い忙しかったのもあり、それでも一番の原因はセックスレスらしい。意外に社会人の性欲は凄いのかと思った。関係が悪くなると同時に仕事が忙しくなり、そのまま別れる結果となった。別れたその日やけ酒をし、自分の部屋の前で寝るというまでとなった。その日は結構落ち込んでいたらしい。改めて別れるとやっぱり来るものは来ると言っていた。虚無感に襲われ、人肌が恋しい時に俺が酔っ払ったユキさんを世話して、次の日に一緒に食事をしながらお話しをしたのが嬉しかったと言っていた。人と話すの楽しいとなったそうだ。だから、俺と話しながら、食事をすることはただのお話し相手にすぎなかったのだ。お話しする相手がいなかったから、俺が偶々なっただけだ。偶然だ。友達はどうなのかと思ったが、そもそもあまりいないらしい。いるはいるけど、友達も忙しくて時々連絡をするぐらい。だから俺は異性としては見られていないのだ。俺はユキさんのことが大好きだ。超が付くほど大好きだ。だから、少し男としてみて欲しくて、筋トレを始めたり、服装にも気をつけることにした。髪型も変えた。でも何も言ってこない。大体の話は世間話や会社でのこと、俺の大学生活なとのことだけだ。俺自身のことは何も言ってこない。俺からユキさんのことをいろいろ聞くのだが、ユキさんは俺のことを何も聞かない。興味がないのだろうと思う。連絡先も聞こうとしたが、隣だし要らないでしょと言った。やはり隣人だから、いらないのかなと思った。少し悲しかった。
その生活が約一年続き、もうすぐでクリスマスになる時期までとなった。今年のクリスマスは告白しようと思っていた。でも不安でしかなかった。多分振られると思っているからだ。一年たった今でも、連絡先は持ってないし、お互いの誕生日もしらない、年齢も知らない、会話も減った、あの週に一度の食事も最近は2.3週間に一度で食事をするようになった。だからもう俺はそこまで特別ではないのだろう。そもそも俺は特別ではなかった。ただの隣人。ただの話し相手。それでも俺はユキさんが大好きだ。だから、クリスマスに告白しようと思っている。でも怖いのだ。告白してからその後振られて、そもそもこの関係が無くなるのではないかと思っているからだ。ユキさんからしたら俺はただの話し相手だ。その話し相手からの恋愛感情は邪魔になるのではないかと思うからだ。ユキさんは話し相手が欲しいだけ。友達や恋人が欲しいわけではない。この関係は友達と言えるかもしれないが、連絡先も持っていない、誕生日もお互い知らない相手は友達と言えるのだろうか。言えるはずがない。でも、俺は決めた。告白をする。素直に俺の言葉を聞いて欲しい。この関係が終わっても悔いは残らない。一生に残るいい思い出だ。絶対に忘れない。だからこの関係に終止符を打たせたい。そう思いながら俺は今日もユキさんの部屋に行く。
クリスまで残り十日となった。たったの十日だ。最近は全然寝れていない。講義も集中できないし、家でボーとすることも増えた。俺は今、クリスマスの予定を考えていた。初めてデートに誘うことにした。でもどのようなデートが良いか分からなかった。だって、初めてのデートで、しかも俺の大好きな人、そしてこの関係が終わるかも知れないデートだ。一生に一度かもしれない。だから満足のいくデートがしたい。悔いの残らないデートがしたいのだ。Google先生や友達に相談しながら2.3日かけて考えた。その結果出来た。これで良いはずだと思い、俺はユキさんにお出かけ出来るか尋ねたら、ユキさんはその日は仕事だけど、27日ならいいよもOKしてくれた。二日遅れる形とはなったが、安心した。そして、気がつくとデート前日となった。俺は服のコーデを考え、髪のセットの練習、香水選び、いつもより丁寧のシャンプー、人一倍磨く歯磨き、そしていつもより2時間早くベットについた。不安で一杯だ。2時間早くベットについたが全然眠れなかった。しかし、どんどん意識は遠くなり、いつの間にか寝ていた。
俺は夢を見た。ユキさんとデートに行く夢だ。楽しかった。告白をしたが、結果は惨敗だった。でも楽しかったからオールオッケーだ。帰り道は会話がなかった。そして俺たちは部屋の前でお別れを言い、俺はドアを閉め、そのまま崩れ落ちて泣いていた。そのまま、俺は目が覚めた。良い夢なのか、悪い夢なのか、分からない。でも、この結果もあり得る。この結果の方が可能性は高いだろう。でも良い、この結果になろうと俺は今日のデートプランを実行するだけだ。そう思いながら、俺は体を起こし、準備をした。
『髪OK。服装大丈夫。匂いなし。財布問題なし。歯もバッチリ。口臭はないはず..........よし行くか』
午前10時、ドアを開け、俺はユキさんの部屋の前で待っていた。数分後ユキさんが出てきた。ユキさんはやはり綺麗だった。お出かけするときはこんな感じなんだと思った。いつもより綺麗な気がする。髪も巻いてあるし、ネイルや、靴も服も初めてみるものだった。化粧もとても素敵だった。その姿はもう二度と見れないかも知れないと思い、目に焼き付けた。
『見過ぎ。早く行こ』
見過ぎだかも知れない。でも少しぐらい見過ぎた方がいいと思う。こんな綺麗な人もう二度と俺の前には現れないから。そう思って俺はうんと言い、二人並んで歩いた。取り敢えず、何か腹ごしらえしませんかと言い、レストランに入ることにした。少し高いレストランだったため、少しユキさんもテンション上がっていた。こんな所に行ったから、ユキさんは少しは察して、デートと思ってくれないかなと思っていた。
『お出かけって何するの?』
『お出かけというより、俺の買い物に付き合ってくれないかなって、後クリスマスだし、何かユキさんに買ってあげたいなぁって』
『君のことだからそんなことだと思ってたけど、いいよ。付き合ってあげる。後クリスマスプレゼント?期待してもいいかな?笑』
違うよユキさん今日の本命は告白ですよ。まぁそんなの思ってないだろうけど。食事は終わり、会計を済ませて、レストランを出た。後このレストラン高いな、雰囲気で選んだけど、大学生には痛い金額だったよ。でも満足だったし、美味しかった。その後は買い物をした。まず始めに服を買いに行った。
『折角、服買いに来たし、私も買おうかな』
『いいですね。俺が選びますよ』
『えー。君センスあるのかな?じゃ、お互いにお互いの選ぼうよ』
『それいいですね。そうしましょうか』
『勿論、君が支払ね』
『分かってますよ。俺が誘った側なんで、俺に払わせて下さい』
『おー。だったら、いっぱい買っちゃおー』
『大学生に優しい金額でお願いします..........』
そう言ってお互いの服選びが始まった。予定では2.3組を買う予定だ。取り敢えず、別行動になり、決まったら、集まって試着大会というものだった。俺は本気でユキさんが似合うのを選んだ。ユキさんに男として、見て欲しくてファッションの勉強は沢山したから自信はあった。そして約1時間後、ユキさんと合流し、服の試着大会が始まった。まずは俺からだ。ユキさんが選ぶ服は自分にとっては新鮮なものだった。
『君大体暗い色ばっかだから。少し、明るい色とかがいいと思ってね。これ良くない?』
『え。めっちゃいいですこれ。ありがとうございます』
『これはどうかな?』
『これは派手じゃないですかね?』
ユキさんは6.7組もコーデしていた。少しふざけているものもあったが、どれも俺が満足がいくものばっかだった。結局全部買うことにした。俺の試着が終わり、次は俺が選んだやつをユキさんが着る番だ。組は4.5組。少し、ユキさんが選んだやつよりかは少ないが、自信はあった。
『あ、これかわいいね。センスあるね』
『沢山勉強しましたから』
『他のも、いいじゃん。すごく可愛い』
『はい、可愛いです』
『だよね!』
はい、可愛いです。そう言ってはしゃぐユキさんが可愛いです。ユキさんは全部気に入ってくれて、俺は全部買うことになった。少し、財布に痛いが問題ない。心は穏やかだ。またバイトがんばろ。そして、服を買った後は映画を見ることにした。服は一旦、どこかに置きたかったが、無理だったので一旦帰ることになった。そこは何も考えてなかった。失敗した。家が近かったのが幸いだった。そして、映画はユキさんが前に気になっていたやつだ。内容は恋愛系らしい。それを見ることになった。ポップコーンとジュースを買い、映画を観た。恋愛系と言っていたが、どっちかと言うと感動系だった。ユキさんは泣いていた。俺も少し涙目になった。
『いい話でしたね。少し泣いてしまいましたよ』
『なんかのサイトで見たんだけど、満足。最高だったね』
映画を見終わり、そのまま少し早い、夕食に行くことになった。夕食は焼肉食べ放題に行った。昼食と少し、かけ離れていると思ったが、ユキさんがここに行きたいと言うから、ここにした。ユキさんはここに何度か行ったことがあるらしい。
『最近だといつ行ったんですか?』
『えっとねぇ。最近っていうか結構前なんだけど、元カレと行ったかな』
『...................そうですか』
『楽しかったですか?』
『その時は楽しかったよ。まぁ』
『.........................』
元カレか。確かに俺は今カレじゃないし、友達でもないから、元カレの話しをしても何も空気を乱されないはずだが、俺は動揺した。あまり元カレの話しをして欲しくなかった。そもそも、ユキさんの口から彼氏と言う言葉を聞きたくない。こんな美人でこんなにいい人を捨てた人の話しなんか聞きたくもない。俺なら絶対この人を幸せにする自信がある。でも出来ない。だって俺はただの隣人だから。ただの隣の付き合いだ。隣の付き合いだから、付き合ってもらってるだけだ。でも、少しでも可能性があるのなら、この人を幸せにしたいよ。少し、胸が苦しくなったが、空気は乱さないようにした。
焼肉食べ放題の店を出て、最後の場所に行くことにした。最後の場所とは、イルミネーションが綺麗な所だ。ここは結構有名な所だから、人が多いはずだが、クリスマスから二日後だからだろうか、少し少なかった。イルミネーション綺麗だねとユキさんが言う隣で俺は少し、涙目になった。ここだ。ここで俺は告白をする。一生に一度かもしれない告白だ。花束なんてものはない。好きですという一言を言うだけだ。だが、いつ言えばいいのか分からなかった。早く言いたい。早く気持ちを伝えたい。でも、これで最後なのも嫌だ。振られるのが嫌だ。そんな俺が葛藤していると、ユキさんがどうしたのと尋ねてきた。どうやら俺は泣いていたようだ。気が付かなかった。なんとか抑えようとしたが、無理だった。ユキさんはあそこに座ろうと言い、ユキさんは俺の腕を掴み、座らせてくれた。ユキさんは俺の隣に座って、大丈夫だよ、ゆっくりでいいよと言ってくれた。俺はその言葉が嬉しかったが、苦しかった。なんとか泣き止んだが、俺は何も言えずにずっと下を向いていた。怖くて、手が震えていた。ユキさんは帰ろっかと一言言い、ユキさんは俺の手を握ってくれた。その手は温かくて、気持ちが良かった。
もうすぐで、俺の部屋に着くのが分かった。いつも通っている道だ。懐かしさなんてかけらも無い、いつも通っている道だ。だが、新鮮味がある。ユキさんと歩いていることだ。これだけで特別感がある。いつも通っている道なのに、新しい道を通っている感じだ。そのまま俺とユキさんは俺の部屋のドアの前まで来た。ユキさんは俺の手を離し、今日は楽しかった。ありがとう。またねと言いドアを開けた。俺は反射的に言った。
『何も聞かないですか?』
『え?』
『なんで泣いてるのって』
『.........うん、ごめんね、どう聞けばいいか分からなくて、君、急に泣くから、よく無いこと思い出したのかなって、それても今日の私なんか嫌だった?』
『違う!今日のユキさん。とても..........可愛かったです』
『え?可愛い?あ........ありがと......初めて言われた君に』
『...........俺も初めて言いましたよ』
『うん。だったら聞いてもいいかな?なんで泣いているの?』
『それは..........』
もう言いたかった。好きだと一言言うだけなのに。そんな簡単な言葉が言えない。喉に引っかかる感じだ。俺は臆病な奴だなと思う。でも、言うしか無い。言い切るしか無い。勇気を振り絞り俺は
『好きです』
『え?今』
『好きです。ユキさんことが好きです。』
もう声が震えていた。もうこれで終わり、楽しかったなと思った。ユキさんは言葉に詰まっていた驚いた様子だった。そんなの当たり前だ。人からの告白なんて、驚くに決まっているはずだ。どんなにモテても、驚くはずだ。
『返事はいつでもいいです。返さなくてもいいです。分かってますから』
『なんで分かるのよ。人の気持ちも聞かずに』
『え?』
『私も君のことが好きだよ』
『本当です........か?』
『本当だよ』
その言葉を聞いた途端俺は膝から崩れ落ちた。ユキさんは大丈夫?!と言い、俺は号泣した。取り敢えず部屋に入ろうと言われ、俺とユキさんは俺の部屋に入った。俺は部屋に入った後でも、ユキさんを抱きしめながら泣いていた。ユキさん大丈夫と言って、優しい頭を撫でてくれた。数十分泣いていたが、ユキさんはずっと頭を撫でてくれた。
『ずっと不安だった。ずっと好きだった。もし、この気持ちをユキさんに伝えたら、もう二度と会ってもらえないじゃないかって、もう二度と関わらなくなるのかなって、俺は所詮、ただの隣人、ユキさんにとってはただの話し相手にすぎない。話すだけの相手に決まっているはずなのに、それでもこの気持ちを伝えたくて、どうしても好きって言いたくて、言って振られても問題ないと思っていたけど、やっぱり怖くて、ユキさんともっと話したいし、沢山笑い合いたい。だから、その、えっと、、、』
『つまりは付き合いたいってことだよね?』
『出来ればだったけど、振られる前提だったし』
『あと所詮隣人とか、やめてね、私からしたら、君は結構特別なんだよ?私結構初めから君のこと気になってたんだ。最初は襲わないただのいい子なんだなと思っていたけど、最初の食事で、久しぶりに会話してて楽しいと思えた子だったからね、でも私距離の詰め方とか分からなくてさ。食事から楽しいと思えた子だったから、食事で楽しく話す機会が出来ると思って週に一回誘ってたんだよ?私結構仕事に熱心だから、食事以外では話せなかったけど、本当は話したかったんだよ?最近減ってるのは仕事が忙しいからだよ。言ってなくてごめんね。』
『だったらなんで、連絡先教えてくれなかったのさ』
『それは本当に要らないと思っただけ、だって隣じゃん。なんか言いたい時は隣に来てくれればよかったのに、でも最近は寝落ち電話?みたいなのが流行ってるのかな?でもそれは少しめんどくさいかなって思ってただけだよ』
『じゃ年齢は?誕生日は?』
『年齢はね。26だよ。誕生日は○月○日だよ。あれ言ってなかったけ?』
『言ってないですよ。聞いたと思うけど無視したじゃ無いですか?』
『ごめん。覚えてないや』
『だったら、なんで僕の外見とか、いろいろ僕のこと聞いてくれなかったんですか?俺はユキさんのこといろいろ聴いたのに』
『それはなんか恥ずかしかっただけ、最近はカッコよくなったなとは思ってたよ』
『あ、ありがとうございま....す』
そうことらしい。いろいろすれ違っただけだったのだと、この時初めて知った。もう俺は馬鹿らしくなり、笑ってしまった。ユキさんも笑っていた。あの不安はどこに行ったのだろう。もう何一つない。安心しかない。これからもユキさんと一緒に居れるし、一緒に話せるんだ。それだけでも嬉しかった。明日からも俺の目の前にユキさんが居るんだ。
『ありがとう。ユキさん』
『こちらこそ。ありがとうね。ユウくん』
俺は起きた。いい朝だ。いつも見ている天井だ。何も変わっていない。しかし、変わっていることがある。横でユキさんが寝ていることだ。俺は昨日告白に成功し、ユキさんと付き合うことになった。信じられない。あのユキさんと付き合うだなんて、過去の俺に伝えたいくらいだ。俺は今ユキさんと付き合っているぞ!と。俺は体を起こし、立ち上がった。時間は午前11時22分だ。もう昼時だ。ユキさんはぐっすり寝ている。昨日散々セックスをしたからだだろう。俺も体を鍛えてあるとは言え疲れた。初めてのセックスはすごく良かった。てか、ユキさんエロすぎるだろ。今でも思い出して、勃っちまいそうだ。これで俺は童貞卒業か。昼食の準備をしようとしたが、いつものやつにしようかと悩んだが、今日はあるものを作ろうと思った。準備中にユキさんが起きた。
『おはよー』
『おはようございます。腹減ってます?』
『減ってる』
『準備してるんで少し待って欲しいです』
『分かった』
『.......お待たせしました』
『あ、これ』
俺が準備したのはオムライスだった。初めてユキさんが俺に振舞ってくれたものだ。俺はいつかは食べさしたくて、練習してたのだが、もうその機会もないと思っていたから、今回食べて貰えてうれしい。
『感想お願いしたいです』
『いただきます』
ユキさんは美味しいと言い、食べてくれた。バクバク食べてくれた。でもまだまだ、私のが美味しいと言った。それはそうだ。あの時のユキさんのオムライスは世界一美味かったからな。無理もない。
『ご馳走様でした。美味しかった。ありがとう』
そう言われ、俺は食器を片付けた。
あれから一年経ち、俺達は同棲している。最近もユキさんは忙しく、俺はまだ大学生をしている。基本的に俺が家事をしている。しかし、全然苦ではない。だって好きな人の役に立てている。何よりもユキさんの隣に入れることが何よりも嬉しい。いつまでも大切にしようと強く思っている。大切な人がいつまでも隣にいるために俺も頑張ろうとら思いながら、俺は今日もユキの顔を見ようと思う。
作者
まさか一万字になるとは思わなかった。長くなり過ぎた。修正とかは後々していこう。やっぱりお姉さんっていいですな。
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