BOOK:ホキ美術館の作品集
絵画の中でも、写実的なものに惹かれます。
まるでそこに本物があるかのような絵画がコレクションされているのが、ホキ美術館です。過去に訪れたどの美術館よりも、1つ1つの作品に見入ってしまいました。どうやって描いているんだろう、どうしてこんなふうに描けるんだろう…そんなことを思いながら素晴らしい作品を鑑賞し、帰りに迷うことなく作品集を買いました。
話が横道に逸れますが、ここからは、絵を見ることについて少し書きます。
写実的な絵画を見たとき、褒める意味合いで「写真みたい」と言う人がいますが、実はそれって全然褒め言葉になっていないという話です。
どういうことかと言うと…
まず前提として、絵を描くということは、関係を描くということです。対象の位置関係や質感の違いを目で捉え、捉えたそのままの関係性が感じられるように手で描く。その繰り返しです。描く対象は、「もの」だけではありません。「空気」も含まれます。画家は、その場の空気感も全身全霊で感じて表現しようとしています。つまり、絵を描くときには、圧倒的な情報量を捉え、感じ、処理し、表現することになります。だからこそ、写実的な絵画を観ていると、ものの向こう側に回り込めそうな感じにさえなります。写真よりも、実在感が感じられるはずです。そのため、「写真みたい」という感想を言うこと自体は全く問題無いのですが、「リアルっぽいけど本当のリアルさは感じられない」と言っているようなものなので、褒め言葉にならないというわけです。
あと、写実的な絵画というよりも、どちらかというと抽象的な絵画を観たときの感想としてよくありがちなのが「わからない」という感想です。ただ、「わからない」というのはちょっと不誠実だなと思います。
どういうことかと言うと…
絵を観たときの感想って、基本的に「好き」か「好きじゃない」かの2つなんですよね。もちろん、「好き」の中にも「まるで目の前にあるかのようにリアルだ」とか「この構成が斬新で面白い」とか様々な観点があるし、「好きじゃない」の中にも「絵の雰囲気が暗くてあまり見ていたくない」とか「特別な感銘を受けるようなものでもない」とか様々あります。ではなぜ「わからない」と言うのか。
きっと、「わからない」と言っている時点で、本当は「好きじゃない」のだと思います。でも、そうは言わない。「本当は価値ある作品なんだろうけど自分はその良さを感じ取れないんです」という感じで、下手に出るような言い方をするんですね。そこがちょっと問題で、絵画って自分の心と向き合って見るものなのに、まるで周りのご機嫌を気にしながら見ているような感じなんですね。それってつまり、作品とちゃんと向き合っていないのと同義なので、鑑賞態度としては不誠実というわけです。
…珍しく熱く語って長くなってしまいましたが、温かい気持ちで最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。