『夜廻』シリーズという恐怖体験
こんばんは、3104です。
突然ですが、皆さんはゲームを楽しむ際に何を重要視するでしょうか?
魅力的で美麗なキャラ?中毒性の高いBGM?重厚で壮大なストーリー?基準は色々あると思います。
様々な評価の方法がある中、今回紹介する『夜廻』というシリーズは「没入感」に重きを置いているホラーゲームです。4/21に三作目の『夜廻三』が発売された夜廻シリーズの魅力を簡潔に纏めたつもりなので、読んで興味を持っていただければ幸いです。
1、夜が持つ恐怖の再現
『夜廻』は、幼い子供が夜の町を探索して目的を達成するゲームです。「もう子供じゃないし、夜道なんて怖くない」という大人は多いでしょう。しかし人気の無い夜道ではどうでしょうか。
光る看板も無く街灯がまばらにあるだけで、周囲の家はもう寝静まっているし、歩いているのは自分1人。そんな夜道の不気味さは、大人でも時たまに体感することでしょう。
このゲームはその再現を最重視しています。
なんとプレイ中はBGMがありません。流れているのは虫の鳴き声や風の音といった環境音と、主人公の歩く音だけです。決して手抜きではなく、その一つ一つの環境音はとても拘り抜かれたものとなっています。リアリティ溢れる音をバックに夜道を進むのは、それだけで暗闇に対する根源的な恐怖を煽り、プレイヤーに緊張感を与えます。電気を消してプレイすれば、本当に1人寂しく夜道を歩いているかのような没入感が得られるでしょう。
2、「対抗できない」という恐怖
ホラーゲームを二分する要素として、「恐ろしい存在に対抗できるか否か」というものがあります。例えば『バイオハザード』シリーズでは銃火器を用いて化け物を撃退可能ですし、聖水や御札•念仏といった宗教的なアイテムで亡者を清めるようなゲームも存在します。これらのゲームは「対抗できる、だからこそ対抗できない敵が現れた時が本当に恐ろしい」という演出で恐怖を煽ってきます。
でも『夜廻』シリーズの主人公は幼い子供。
銃なんて扱えませんし、ありがたい念仏を唱える徳もありません。そんな子供ができることは1つだけ、逃げ隠れすることです。上の画像のように物影に隠れて化け物が通り過ぎるのをじっと待つだけ。新作の『夜廻三』では、「隠れる」アクションが無くなった代わりに「目を閉じる」アクションが追加されました。認識しないことで相手からも認識されなくなるという一見便利なシステムです。しかしこれも万能ではなく、怪異に見つかった後に目を閉じてもそのまま襲われてしまいますし、目を閉じたとしても襲ってくる敵もいます。
余りにも非力な主人公達ですが、これって画面の前の私達も同じではないでしょうか?もし目の前に正体不明の化け物が出てきたらどう対処すべきか、少なくとも私は分かりません。
「もし夜道でこいつに遭遇したら」と思わず考えてしまうような、対抗できない恐怖。怪異に対して強気に出られないシステムが、生きるか死ぬかのリアルな恐怖と臨場感を際立たせています。
3、プレイヤーと同期する心音
このゲームでは主人公の心音が重要な役割を担っています。怪異が近付くと動悸が激しくなることでその存在を知らせ、走って逃げる際は適宜心臓を落ち着かせないとスタミナが切れやすくなります。小説で「聞こえるのは自分の鼓動だけ」という表現がよくありますが、プレイ中は常にそんな状況でしょう。主人公の心音が攻略に必須な要素なのは間違いありません。
……ところで皆さんはジェームズ=ランゲ説という学説をご存知でしょうか?簡単に説明すると「感情が動くと体も動くのではなく、体が動くから感情も動く」という学説です。笑った状態で顔を固定した人と何もしていない人に同じ映像を見せると、前者の人々の方が映像に対する評価が高かったという結果もあります。いわゆる「吊り橋効果」、つまり「身体に感情が連動する」というこの説ですが、実はこのゲームと密接に関連しています。
プレイヤーは主人公と同じタイミングで驚き、同じタイミングで焦り、同じタイミングで落ち着くことを強制される内に、主人公の心音が自分の心音と同期するような感覚に襲われます。つまりプレイヤーの脳が「この心音は自分のものだな」と誤認するわけです。そして「心臓が早鐘を打っている!」と勘違いした脳は、例のシステムにより「自分は今物凄く焦っている!」という感覚をプレイヤーに与えるのです。これこそが本作の持つ抜群の没入感の由縁であり、恐怖に病みつきになるプレイヤーが表れる理由です。
4、まとめ
第四の壁を破ってまでこちらの心臓を掴んでくる『夜廻』シリーズ。ここには書き切れない魅力がまだまだ存在するので、是非とも実際にプレイして楽しんでみて欲しいです。一作目と二作目はスマホ•タブレット•PC•家庭用ゲーム機などで幅広くプレイ可能であり、4/21に発売の『夜廻三』はPS4,Nintendo Switchでプレイ可能です。興味のある方は是非購入してみて下さい。
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