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#4 「いい経験してるね。いいね。」

シフトが入っていないのに出勤してしまった。


バカだ。


アホだ。


自分に呆れて、もう笑うしかないとはこのことだ。


思えば、今週はなんだかうまくいかないことが大量発生していた気がする。

まず、珍しく火曜日に用事が入っていたことをすっかり忘れて、その時間帯にバッチリ、バイトを二つも入れてしまうという。

もちろんそれに直前で気づくと、その前後のバイトをごめんなさいと謝りながら時間帯をずらしてもらい。

そうかと思うとその予定は急に消滅。
謝り損と思いながらも再度時間を戻すお願いなどできるはずもなく。

そして、いざバイト先に行き、バイトをこなし、帰ってきて一息つき、次のシフトはいつかとシフトボードを確認すると、なぜか今日はシフトが入っていない。

嫌な予感が一瞬脳裏によぎり、それが事実だとわかったのは数秒後。
すぐには現実を理解できるはずもなく。


そうこうしている間も無く、謝るなら早くしないとと思い、即座にうちのシェフに、「誤ってバイトに入ってしまっていてごめんなさい、迷惑をかけました」と連絡。

そうすると「こちらこそ気づかなくてごめんなさい」といってくれたが、いやいや、こんなバカなミスをする人などそうそういないだろうから気づかない方が普通ですよ、ほんと。というか、そんな風に謝ってくれるあたり、もうほんとシェフの優しさが滲む。。。


しかし大事なのはここから。

そのあとの言葉が、こんな出来事の反動だからか余計に嬉しかった。

「いい経験してるね。いいね。」


何をもっていい経験なのかはわからないけれど、シェフは羨ましい、懐かしい、とも言ってくれた。

自分としてはお店の中でさえミスを超連発、大発砲しているくせに、とうとうお店の外でもどでかいミスをやらかすんかいと、情けないほかないのに。


でも、これ以上なく簡潔で、ストレートな言葉が、僕に元気をくれた。
この時、自分の上司がミスを責めるタイプではなく、肯定してくれる人で本当によかったと、心から思った。


きっと、飲食の世界で長い間働いてきたシェフからしてみれば、こんなバカなミスも可愛く見える、、、のかもしれない。

僕も将来は、後輩や部下のこんなミスを「いい経験してるね」と言えるかっこいい大人になれるだろうか。

というよりも、そうやって言える大人でありたいし、やはりそんな大人になりたい。

間違っても「全くお前は何してるんだよ」と叱責するような大人にはならないことを願いたい。


きっとこんなところで、「具体的にこのミスのどのポイントをさして”いい経験”と言ってもらえたのか、その所以は何だったのか」などと可愛くない思慮をめぐらすことは野暮なのだと思う。

シェフが「微笑ましいな」と思うぐらいには、後ろなんて顧みないで前だけ見つめて、転がっている障害物全部にぶつかるぐらいの不器用さで、まっすぐに仕事をしたいし、自分の人生そんな生き方をしたいな。


器用に生きられる人を羨ましく思うこともたくさんあるけれど、不器用な自分はなんだかんだ嫌いになれない。こんな泥まみれのリアルがなんだかんだ愛おしかったりするのだと思う。

ミスチルのHANABIにもそんな歌詞があったような、なかったような。いやちょっとニュアンス違ったかも。

もう一回、もう一回ってね。大事なのはトライアンドエラー、だよね。



もしも自分に後輩ができた時、その子がミスして凹んでたら、自分はこんなポンコツだったんだんだから、君もそんなに気を落とすことはないよと言って励ましてあげられたら、きっと今日の出来事にも意味があったというものだと思う。

そんなことが言える日が来る時には、シェフの言ってくれた「いい経験してるね」という言葉の意味もわかると、いいな。なんて思いながら。



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