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マリオシリーズ屈指のコンプレックスモンスター「ふじみのドガボン」

""不死身""

この言葉は何を意味しているか。
死なないこと。それはどんな本質を抱いている。

元々不死身のもの。不死身になったもの。不死身になってしまったもの。
状況により、様々な本質を抱く。

不死身にしてもらった」にはどんな本質が宿る?

そう、自身が死を持つ生物であることに対するコンプレックスを意味している
死への恐怖、あるいは死に直面するような弱い生物であるということへのコンプレックスを抱いていることを意味している。

そして、子供向けのファンシーで世界観でこそ醜悪なコンプレックスは光る

この意味が分かるか。そうだ、その通りだ。

【マリオストーリー】でおなじみの「ふじみのドガボン」がこれにあたるということだ。絵本のような優しい世界観、コメディな表現で隠し切れないおぞましいコンプレックスの塊をドガボンは抱いている。

彼はクッパのもつスターの杖によって「ふじみ」にしてもらっている。
あまりにも傲慢だとは思わないか。死なない生物とは生物ではない。命なき無機物ですら形あるためいつの日か必ず壊れるというのにその理に反しようとは。
クッパですら努力をすっ飛ばして結果を手に入れたい程度のものなのに。恐ろしい男である、ドガボン。

なぜドガボンは「ふじみ」となったのか。
日々テレサに驚かされ、からかわれていた日々が発端である。

ただのガボンでない、ド級のガボンであるドガボンともあろう男は日々テレサに虐められていたのだ。そんな日々が嫌でクッパの持つスターの杖にお願いをして「ふじみ」にしてもらった。

ドガボンの辿り着いた「ふじみ」の形とは、体と心臓を分けて生きることであった。抜け殻となった体には心臓が入っていない。
心臓が止まらなければ死ぬこともない。心臓が倒されない限り体も死ぬことがない。ドガボンがそう言っているからそうなのだ。

"心臓を体から取り出す"ことにより「ふじみ」に成る。

ということは何を意味しているのか。ここにドガボンの醜悪なコンプレックス、その神髄が存在している。

驚くと心臓の鼓動が早くなる。心臓がなければ驚いてもびっくりするものがない。
つまりテレサたちに驚かされても驚くことがなくなる

「ふじみ」の基準はテレサたちに勝てるかどうか。これを第一としている。

ドガボンにとって大好物のテレサ、食料に驚かされて好物を食べられない悔しさ。絶対にやつらを食ってやろうという野心。悪辣に煮えたぎるドガボンのコンプレックスがここにある。

ふじみとなってからドガボンは毎日のようにテレサ達の住処へ行き、捕食している。
食欲を満たすためだけではない。自分の魂を救うためだ。捕食者である自分が怖がって食料を食べられなかったという事実。耐え難い現実から弱かった自分を救うためにドガボンは日々テレサを食べ続ける。

なんという拗れたストーリーであろうか。
倒し倒されの話ではない。呪い呪われの関係である。

コンプレックスを拗らせて辿り着いた「ふじみ」という属性。
皮肉にも「ふじみ」によってドガボンは食料であるテレサ達と同じ魂の段階に達した。お化けであり死という概念のないテレサ達もある意味で「ふじみ」だからだ。
ドガボンはテレサ達にコンプレックスを拗らせていた。彼らのような怖いものなしの生物に憧れていた
故に彼はふじみとなった後、かつてテレサ達が住んでいたとされる屋敷を乗っ取ってガボン溢れる夢のワンダーランドとしている。

ここである。私が久方ぶりのマリオストーリーで一番心奮えたところは。なんという醜悪な生物だ、美しい。あまりにも美しい。
マリオストーリーという絵本のような世界だからこそちょっとホラーくらいで済んでいるがテレサとドガボンのビジュアルを人間に置き換えたらこんなにも醜悪な生物はいない。だから心打たれた。

もっと純粋にめちゃくちゃに強くしてもらうだとかフィジカル方面での強化を望んでいない。とりあえず目先のテレサにもう負けたくない。そのコンプレックスが全面に出た肉体魔改造計画である。

やつはこの一点特化でマリオシリーズコンプレックスモンスター部門堂々上位へと躍り出ている。その素晴らしさことここで特筆せねばならなかったことだ。

往々にして世界とは「気付き」で拓かれる。事実私もキッズ時代からマリオストーリーは何周もしているがドガボンという生物のおぞましさに気が付いたのは今回が初だ。
なぜ見つけられたかと言えば自分自身の性癖に対して理解が昔より深まっていたからに過ぎない。極論ではあるが過去触れてきた全てのコンテンツにこのような可能性が眠っている。

「道を知っていることと実際に歩くことは違う」
かつてマトリックスでモーフィアスに教えられたことだ。まさにこの言葉をかみしめるばかりであった。

「ふじみ」という言葉に宿る救済とコンプレックス。これらの可能性に気付けたのは間違いなくドガボンのおかげだ。
弛まぬ感謝を。探訪を恐れぬ気持ち、努々忘れないようありたい。

しかし、しかしだ。マリオシリーズにはドガボンよりも醜悪なコンプレックスを拗らせた生物がいる

【スーパーマリオRPG】に登場するフカフカくんのパパ。マシュマロ王ことマロパパもドガボンに劣らない絶望的に醜悪でおぞましいコンプレックスを拗らせた生物である。
彼の悪鬼が如き所業についてはまた別の場所を話をしなければならない。そのせいでマリオストーリーにおいてマシュマロ族は絶滅の一途を辿ってしまっていることも含めてな。

次の戦場はマシュマロ王国だ。
そこで合間見えよう、いや。

フカフカしましょ!

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