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余白に生まれる優しさ
「この電車は冷房機能、空調機能、換気機能を設定しております。前から3両目の車両は冷房機能を弱く設定しておりますので、お好みや体調に合わせてご利用ください。」
よく使っている路線。
聞いたことのない車内アナウンスだった。
冷房が効いているのは気付いていたけれど、空調機能、換気機能まで備わっているとは知らなかった。
「お好みや体調に合わせてご利用ください」って、優しい言葉だと思った。
思えば、車内アナウンスは決まった文言以外の、乗務員さんの優しさを感じる言葉を稀に聞くことがある。
遅い時間の電車に乗った時は、「今日も一日お疲れ様でした。お気をつけてお帰りください。」というアナウンスを聞いたこともある。
駅の電光掲示板。
いつもなら次の電車の発車時刻や運転状況だけの無機質なものだけれど、受験シーズンのとある日に「受験生の皆様へ 皆様の努力がよい結果につながるよう、心より応援しています! ○○駅員一同」という表示を見たことも。
自分は受験生ではないけれど、受験生時代を思い出して少しうるっとした。
決まりきったことだけではない、“余白”にこそ優しさは生まれるのだと思う。
スターバックスには接客マニュアルが存在しないらしい。
言わずもがなフードやドリンクもとても美味しいのだけれど、スターバックスは、あの温かい接客が作る空間にこそ価値があると思う。
マニュアルがないからこそ、スタッフ一人一人のイマジネーションで優しさが生まれるのではないだろうか。
私は今、大学のキャンパスツアーを案内するという学生アルバイトをやっている。
これにも実は、マニュアルがない。
正確には「注意事項」レベルのマニュアルと、「虎の巻」レベルの学内に関する解説書はある。
ツアーのルートもその都度指定される。
でも、何をどのように話すか、どんな話し方をするかは決まっていない。
キャンパスツアーに参加する人は高校生なのか、中学生なのか、学年は何年生なのか、体育会系の生徒が多い学校なのか、語学教育に力を入れている学校なのか。
そういった細かな情報をもとに、自分の判断で話す内容や話し方を考える。
話し方と言っても、広報活動として大学を背負って話す以上タメ口というわけにはいかない。
それでも、質問やクイズを投げかけてみたり、難しい名前の学内施設を声に出して覚えてもらってみたり、実体験を交えたこぼれ話をしてみたりと、工夫は尽きない。
中学生や高校1・2年生なら、そもそも高校までと大学は何が違うのか、という基本的なところから説明するようにしている。
マニュアルがあったら、これは言って良いのか否かということばかりを考えて躊躇してしまいそうな工夫も、自分が良いと思えば挑戦できる。
そういう環境は、とてもありがたい。
折角大学に足を運んでいただいたからには、少しでも楽しかったと思って帰ってもらいたい。
ご縁あって私がツアーを担当する班になったからには、私にしか伝えられない大学の魅力を伝えたい。
キャンパスガイドという情報としてだけではなく、キャンパスツアーという時間・空間として、価値のあるものをお届けしたい。
そういう思いでご案内している。
いつかの24時間テレビで嵐の櫻井翔さんが言っていた言葉がとても印象に残っている。
自分がふんわりと抱いていた思いを明確に言語化してくれた気がした。
私が迷った時の道標にしている言葉と言っても過言ではない。
思い上がりでいい。
そこにある余白を、私だからできることで埋めていきたい。
私にしかできない優しさを生み出していきたい。
僕なんかじゃ伝えられないことがたくさんあります。
僕なんかじゃ届けられない方々がたくさんいらっしゃると思っています。
でも、僕じゃないと伝えられないことがある、僕じゃないと届けられない方々がいる。
思い上がりにも似たそんな思い込みをしながらこれからも伝えていきたいと思っています。