ストリートダンスの将来性
断言します。これからストリートダンスがきます。今は、アンダーグラウンドであまり認知されていないストリートダンスですが、これから一般の方々もストリートダンスのバトル・ショーケースを楽しむ時代が来ます。
その3つの理由をこれからご紹介します。
1.言語レス
「何を今更言語レスをアピールしてるんだ」と思われるかもしれませんが、これからの自動翻訳が発展していく世界の中でも言語を必要としない表現・エンターテイメントは評価され続けていると考えています。
その理由は簡単で、翻訳がどんなに瞬時に正確にできるようになっても、人間は違う国の言語の概念を理解することが極めて難しいからです。例えば、日本語の「雅」という言葉。コトバンクさんの定義によると、以下のような感じになります。
日本文学の美的理念の一つ。「みやび」は「宮ぶ」から出た言葉で,宮廷風であることが本来の意味で,それが美意識の次元まで高められたもの。都会的な文化と密着し,都会人の繊細で鋭敏な感受性によって見出された,上品で優雅な,知的に洗練された情趣美であって,粗暴,やぼ,無知などに背反する。 - コトバンク
これをに英語に直すと、「Elegant」になります。確かに、エレガントという言葉は間違っていないものの、日本の歴史的な文脈をふまえないと、その繊細な感じなど細部のニュアンスが伝わりません。どちらも文字面では上品で優雅という感じなのですが、違うニュアンスを受けてとってしまいます。
このように、私たちがいつも使っている言葉というのは実はすごく複雑な概念、文化的・歴史的な文脈を前提にしながら使われており、日本以外の方とそのニュアンスを完全に一致させるのはとても難しいです。言葉は、その言葉以上の意味が本当に多く含まれており、辞書に載っている意味など氷山に一角に過ぎないことがわかるでしょう。
それに比べて、ダンスは言葉ほど複雑ではないのでダンス以上のことはあまり多くないと個人的に考えています。勿論、見ている人の育ってきた環境や価値観によって、同じムーブでもうけとるニュアンスは変わってきますが、言葉と違ってダンスは視覚的に常に見えているので言葉ほど受けとる人のバックグラウンドによって変化することはないと思っています。
その国家間の壁の少なさ、視覚的でわかりやすい点はテクノロジーが発展していくこれからの世界でも重宝されていくと感じています。
2.多様な楽しみ方
ダンスは音楽があり、常にリズムがあるので言葉が通じない人でも同じリズムを共有することができます。しかし、それだけではダンスである必要はなく、音楽フェスでも全然なんら変わらないということになってしまいます。では、なぜ、ダンスである必要があるのか?実は、そこにダンスの面白さがあります。
ダンスと音楽の関係は、サーファーと波の関係に非常に似ています。多くの人はただ波を見ているだけでも落ち着きますし、十分に楽しめると思います。一定のリズムを保った波は心地いいですが、どこか飽きてしまう感じもあります。サーファーは、波を活用して波の新たな可能性を示してくれます。「そんな乗り方もできるんだ」「その波をそう感じるのか」波の新たな一面を追求していき、お客さんに新たな楽しみ方を提供しています。
ダンスもこれと同じで、ダンスは音楽の新たな一面を追求していき、お客さんに新たな楽しみ方を提供しています。自分が聞こえていなかった音楽をとったり、音楽全体のニュアンスをGroove感で伝えたり、表現は様々ですが、やっていることはダンスが音楽の新たな一面をお客さんに示しているだけです。
そう考えると、一般の方が思っている共有とは違うことがわかってくるのではないでしょうか。ダンスを見にきている人たちは「音楽を共有する」「ダンスを共有する」という側面ももちろんありますが、「音楽の新たな一面の発見を共有する」ことも大きな楽しみとしてあります。そして、これらの全ての共有は言語レスなので、その興奮や感動を違う国の方とも共有することができます。
3.テクノロジーによるレバレッジ
ダンスの今までのネックは物理的な問題がありました。イベントに来れる人の数には制限をかけざるを得ず、映像だとどうしてもダンサーの細かな動きや表現を鮮明に表現することができなくて、その魅了がうまく伝わらないなどどうしても超えられない物理的なボトルネックがあり、それ以外にも大きなスタジオ特有の低音が体に響く音楽や観客の空気感などが画面越しではわからないということもあって、リアルで見ることが圧倒的に価値が高い状況が続いていました。
しかし、テクノロジーの進化によってどんどん非リアルの価値も高まってきています。映像もより細かくなっていき、VRなどによって会場にいるかのような没入感にも自宅で味わえるようになってきました。そうなると、今までアンダーグラウンドで少人数のリアルで行なっていたダンスイベントなどが全世界に広がっていき、同時に何万人もの人がそのイベントに非リアルから参加することができる状況になっていきます。
そして、ゆくゆくは非リアルがリアルに追い付き、違う方向に分岐していく流れで進んでいき、リアルはより少人数でマニアック感じに、非リアルはより大人数でたくさんの人との共有を楽しむ感じで盛り上がっていくと思っています。
ストリートダンスくるで
どうでしたでしょうか?少しでもダンスの可能性やダンスへの興味が生まれてくれた幸いです。ここで紹介したのはほんの一部で、ストリートダンスはこれからどんどん化けていく産業だと個人的には思っています。ストリートダンス業界をこれからもウォッチしていってください。
ダンスイベントなどにも参加していただければ、その可能性を肌で感じていただけると思いますので、遊び半分でもいいのでダンスイベントに行ってみると新たな発見があると思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次は、ダンスが化けるためのテクノロジーの条件を書いていこうと思います。