20分間
18:48
附属図書館の二階の窓際の席で起きた。
閉館10分前を知らせる館内放送がながれた。
いつのまに眠ったんだろう、というのはうそで、18:25に、パソコンを閉じ、本を前に押し出して肘を丸め、うつぶせになって、確信犯的に眠った。
起きた時は腕が少し痺れていて、1日の疲れが湧き出たようだった。あんまりなにもしてないのに、生意気なもんだ。
18:51
附属図書館をでて文学部棟脇に止めた自転車を拾って、眠い目をこすりながら自転車に乗った。きれいな夕焼けだなあ、とおもいながらも視界はまだぼやけていた。
百万遍までで出ると、思ったよりまだオレンジが鮮やかで、いまから高いところに登れば沈む様子が見えるんじゃないかと思った。
18:56
いつもの場所に自転車をとめて、ハロビジの階段を駆け上がった。田中さんいないかな、とも考えていた。白さんとりなさんと、もう1人お客さんがいて、田中さんはいなかった。もう沈んじゃうんじゃないか、と興奮しながらりなさんに鍵を借りて、屋上に登った。太陽は沈んでいたけど、まだきれいなオレンジがみえた。やっぱり、真っすぐ西よりもすこし北に上がった山の方に、太陽は沈むみたいだな。あの山の向こうに、今日も太陽がいたんだろう、
でも、どっちというと、西日に照らされた東側の山のうえで雲がピンクに尾をひいてるほうが、かわいかった。オレンジとピンクがまざった百万遍にいるひとたちはみんな楽しそうにひかっていた。
18:59
ハロビジを出て自転車にのる。イヤホンをさしてBTSから羊文学に曲を変える。百万遍の交差点で、ゆかとゆうわにあった。
少し先で、自動販売機の陰にかくれるように自転車にのっている下野さんを見つけた。たぶん下野さんは、私が下野さんの名前を覚えているとは思っていないだろう。目があってしまったので、笑顔で会釈すると、誰だかよくわからないというふうでこっちにきた。
少し話すと、いつもの素っ気無い印象とは裏腹に、話しかけられて嬉しそうにしていた。メガネをかけているけど、あまり目は見えてなくて、いつも店員さんのことを確認せずに受付をしているらしい。後半に関しては、知っていたようなものだ。「いつも、わたしいるじゃないですか。脳死で受付のところきてるんですか?」と聞くと「ぼくって無礼、ぶれいというか、そっけないでしょ、だから、もうしわけない」といっていた。
19:05
いよいよオレンジが濃くなってきて、このまま家に帰るのはもったいないというくらいに空が焦げていたので、とりあえず西に走った。御蔭通りを線路まで走りぬけると、パッと視界が開き、さっきまではなかった羊雲が一面にひろがっていた。脇目も降らずに線路をわたり、高野川にかかる御蔭橋まで。私しかこの夕焼けに心を動かされていないんじゃないか、そんな根拠もない優越感があった。
けど、橋の上や下には犬の散歩をしているおばさんや、自転車にのった大学生がいて、一様に西に携帯をむけていた。ちょっと悔しかったので、写真にはその人たちが映らないようにした。
川は、きれいだ
空が映り、色がかわり、水面がひかり、草木がしげるから。
みんなしっている。川はきれいだ。
ふと、橋の真下の水面をのぞいた。白いくずまで見えるほどに、透き通る濃紺。
川のきれいさは、それが統合され、流れとなり、ひとつの景色となってはじめて分かる。
それまではただの透明な水。着実に積み重なってはじめて、みてわかる美しさを放つなんて、人生みたいだな〜なんて、ロマンチックなことを考えてしまった。
振り返ると、橋の向かいにナイキとわかちゃんがいた。こっちをみて、「おお!!」みこも、「おーい!」ナイキ、よくあうな。「黄昏てんの?笑」「そう!!」「笑笑。どこいくん!」「普通に、夕日見るためだけに来てん!」
ナイキ、「ははっ」と笑って「暇人(笑)」
完璧なコメントだ。そして、最も正しい。
これで今日の夕日活は完成。暇人が夕日に想いを馳せた。なんて贅沢。
まさに人生だ。空いた時間に夕日をながめたなんて、今日もいい日だ、やったね。
同時にちょっと恥ずかしくて、我にかえった。けど、これが自分らしい、と改めて思った。私は、夕日が好きで、それを知っている。
今週はいろんなことがあったけど、誰に言われたどんな言葉よりも、ナイキの「はは、暇人(笑)」にいちばん心を満たされた気がした、
ここまでザッと20分間。