害の検索について



害(harm)という用語について

例えば、対照治療に対して、Aの介入治療を行なった場合の、死亡率を考えます。相対危険度が、0.5ならば、死亡が減るので、A治療は、望ましい効果がありますね。益と言って良いでしょう。それなら、1.5では?これなら、死亡が増えますので、A治療は、望ましくない効果です。でも、これだからと言って、A治療は害と言えるでしょうか?
害というと、A治療によって引き起こされる、有害事象、例えば合併症のようなものを考えます。本稿での害の検索は、このような、A治療によって引き起こされる有害事象などを想定しております。
しかし、診療ガイドラインで、利益と害のバランスを考える場合、死亡率などの相対危険度が1を越えてた場合など、そもそもA治療が害として、対照治療との間で、利益と害のバランス(正味の利益・正味の害)を考える事になります。
また、Mindsでは、アウトカムの設定の時点で、益と害を分類しろとあります。これは、言葉足らずで、死亡率のアウトカムは、1を越えれば害、1未満なら益です。どのように分けるのでしょうか。これは、単に、有害事象のアウトカムを入れ忘れないでねという事程度の話です。本note著者は、Mindsの方法はMinds独自なので、使っておりません。

害の検索のためのデータベース

データベースの比較論文:Comparison of search strategies in systematic reviews of adverse effects to other systematic reviews
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/hir.12041

  1. データベースの選択
    • MEDLINE: 有害事象のレビューでは最適なソースではない可能性がある
    • TOXLINE: 有害事象に特化したデータベース
    • Derwent Drug File: 医薬品データベース

  2. その他の情報源
    • FDAウェブサイト
    • 教科書(例:Meyler's Side Effects of Drugs)
    • 医薬品安全性情報誌(例:Medicines Safety Update)
    • 製薬企業のデータ

有害事象のメタアナリシスに関するSMART Safetyデータセットについて

Fan S, Yu T, Yang X, Zhang R, Furuya-Kanamori L, Xu C. The SMART Safety: An empirical dataset for evidence synthesis of adverse events. Data Brief. 2023 Oct 4;51:109639. doi: 10.1016/j.dib.2023.109639. PMID: 37869626; PMCID: PMC10589771.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352340923007242
セットは、ここらしい(使ったことない)
https://osf.io/g3mdu/

note著者は使ったことがなく、どのような意味を持つかもわかっていませんが、紹介のみします。

エビデンス統合の重要な問題は、まれな有害事象を扱うアプローチと、有害事象の影響の偏りに対処する方法である。有害事象のエビデンス統合における問題を解決するためには、方法論者や統計学者を助ける経験的データが不可欠である。このため、我々は有害事象のメタアナリシスに関する最大の経験的データセットであるSMART Safetyデータセットを構築した。
このデータセットには、安全性アウトカムに関する151のシステマティックレビューと629のメタアナリシスが含まれており、2,300以上のランダム化比較試験と362の有害アウトカムをカバーし、10,069行と45列の試験レベル情報が含まれている。すべての情報はダブルチェックあるいはクアドラチェックされ、さらにデータの高い妥当性を保証するために、原典(例えば、含まれるランダム化試験の全文)を参照することによって検証された。

害のための検索フィルターについて(結局、PubMedで、これ!というのはないようだ)

コクランハンドブックに害のフィルターは、無いようです。
4.4.7 Search filters https://training.cochrane.org/handbook/current/chapter-04
Chapter 19: Adverse effects https://training.cochrane.org/handbook/current/chapter-19

19.3.1 Search methods for adverse effects data
一括検索と個別検索: 有害事象と利益を同時に検索する場合、広範な検索が必要であり、有害事象専用の検索が推奨されます。
リソース配分: 有害事象に関するキーワードがタイトルや要約に含まれないことが多いため、検索範囲の検討が必要です。
複数の情報源: 複数のデータベースを使用することが推奨され、MEDLINE単独では不十分な可能性があります。
未公開情報の活用: クリニカルトライアルデータや規制機関のデータも有用です。
特定および汎用の用語: 検索の感度を上げるため、特定と汎用の用語を組み合わせます。

検索戦略と検索式のポイントについて:Comparison of search strategies in systematic reviews of adverse effects to other systematic reviews
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/hir.12041

検索戦略の違い
• 有効性レビュー:主に集団、疾患、介入に関する用語を使用
• 有害事象レビュー:アウトカム(有害事象)に関する用語により重点を置

  1. 特殊な検索テクニック
    • フローティングサブヘディング:有害事象レビューでは「drug toxicity」や「adverse effects」などの使用が推奨される

  2. 検索結果の特徴
    • 有害事象レビューでは、検索結果の件数や精度が他のレビューと異なる可能性がある

  3. 共通の課題
    • 検索戦略の報告の改善が必要
    • 不必要な検索制限(日付や言語)の最小化
    • 情報専門家や図書館員の関与の重要性
    PubMedでのフローティングサブヘディングの使用について(AIでの回答で、実際に検証してない)

• PubMedではMeSH (Medical Subject Headings) を使用
主なサブヘディング
• «adverse effects»[sh]: 薬物や治療法の有害作用
• «drug toxicity»[sh]: 薬物の毒性
• «toxicity»[sh]: 物質の毒性全般
• «complications»[sh]: 疾患や処置の合併症
キーワード検索との併用
• MeSHサブヘディングとフリーテキスト検索を組み合わせる
• 例:(«adverse effects»[sh] OR adverse effect*[tiab] OR side effect*[tiab])

害に対する、骨折の研究での各検索式の比較:Sensitivity and precision of adverse effects search filters in MEDLINE and EMBASE: a case study of fractures with thiazolidinediones
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1471-1842.2011.00972.x

Golder 2006の検索式が感度・特異度が高いようだ、以下に害の所のみ取り出した
Su Golder. Search strategies to identify information on adverse effects: a systematic review
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2670220/#mlab.1536-5050.97.2.004.sg001
Ovitのや服冊なのしか記載ないようだ

AIでOVIDからPubMedに直した(検証してない)
(adverse effects[SH] OR complications[SH] OR drug effects[SH])
OR
(safe[Title/Abstract] OR safety[Title/Abstract] OR "side effe

 

第一人者のGolderで、最も新しい論文(検索式がそのまま記載なし):Golder S, Wright K, Loke YK. The feasibility of a search filter for the adverse effects of nondrug interventions in MEDLINE and Embase. Res Synth Methods. 2017 Dec;8(4):506-513.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5725700/

我々は、非薬物介入に関する研究における副作用用語の有病率にかなりの差があることを発見した。外科的介入に関する副作用研究の大部分は、EmbaseとMEDLINEの両方を用いることで検索可能であるが、非外科的介入に関する副作用研究の4分の1以上は、この方法では見逃される可能性が高い。外科的介入に関する研究では、非外科的介入に関する研究と比較して、副作用の用語がより良好であった。外科的介入に関する研究では、complications(合併症)、complications(合併症)、safe(安全)、safety(安全)などのフリーテキスト用語や、complications(EMTREE)、patient safety(EMTREE)、safety(EMTREE)などの索引用語、MEDLINEでは副作用(ae)、complications(co)、Embaseでは合併症(co)などの浮動小見出しがより多かった。外科的介入研究の全体的な数値は、薬物介入に関する最近の研究とほぼ同じであった。対照的に、非薬物、非外科的介入では、一般的な副作用関連用語の出現率がはるかに低かった。このことは、非薬物介入の検索フィルターの開発や非薬物レビューにおける副作用用語の使用にとって重要な意味を持つ。

Gloderの外科系フィルター:
Golder S, Wright K, Loke YK. The development of search filters for adverse effects of surgical interventions in medline and Embase. Health Info Libr J. 2018 Jun;35(2):121-129.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6055664/

1 complication*.ti,ab. (75)
2 ae.fs. (89) [adverse effects]
3 safe*.ti,ab. (97)
4 co.fs. (100) [complications]
5 post‐operative complications/(101)

Golder et al.の検索フィルターを少し改造して、提案する(本来は、PubMedは、害の検索に適さないらしいが)。引用文献、強いて書くと、以下かな。
Golder S, Loke Y. Search strategies to identify information on adverse effects: a systematic review. J Med Libr Assoc. 2009 Apr;97(2):84-92. を改編.

note著者が、Harmなどを追加、adrsはAdverse Drug Reactionsの略語

"adverse effects"[MeSH Subheading] OR "complications"[MeSH Subheading] OR "drug effects"[MeSH Subheading] OR ("safe"[Title/Abstract] OR "safety"[Title/Abstract] OR "side effect*"[Title/Abstract] OR "complication"[Title/Abstract] OR "undesirable effect*"[Title/Abstract] OR "treatment emergent"[Title/Abstract] OR "Disability"[Title/Abstract] OR "toxicity"[Title/Abstract] OR "adrs"[Title/Abstract] OR "harm*"[Title/Abstract] OR "complication*"[Title/Abstract] OR "tolerability"[Title/Abstract] OR "drug-related side effects and adverse reactions"[MeSH Terms]) OR ("adverse"[Title/Abstract] AND ("effect"[Title/Abstract] OR "effects"[Title/Abstract] OR "reaction"[Title/Abstract] OR "reactions"[Title/Abstract] OR "event"[Title/Abstract] OR "events"[Title/Abstract] OR "outcome"[Title/Abstract] OR "outcomes"[Title/Abstract]))
9,712,796 件 2024/11/01


害のSRを作るなら、PRISMA harms checklis

PRISMA harms checklist: improving harms reporting in systematic reviews
https://www.bmj.com/content/352/bmj.i157.long

はじめに
PRISMA有害性チェックリストは、システマティックレビューにおける有害性報告を改善し、有益性と有害性をよりバランスよく評価するために開発された。
方法
EQUATOR Networkおよび既存の報告ガイドライン(PRISMA声明、PRISMA for abstracts、PRISMA for protocolsを含む)に支持された開発戦略を用いた。チェック項目の草案を作成した後、修正デルファイ法を開始した。デルファイは3ラウンドの電子的フィードバックと、それに続く対面会議で構成された。
結果
PRISMA有害性チェックリストには、レビューにおける有害性報告を改善するために、オリジナルのPRISMA声明に追加すべき4つの必須報告要素が含まれている。これらは、タイトル(「『危害』またはその他の関連用語、またはレビューで関心のある危害について具体的に言及する」)、結果の統合(「関連する場合は、ゼロ事象がどのように扱われたかを明記する」)、研究の特徴(「扱われた各危害を定義し、それをどのように確認したか(例えば、患者からの報告、積極的検索)、およびどの期間にわたって確認したか」)、結果の統合(「因果関係の可能性の評価を記述する」)で報告される。有害性に関する情報を統合する際の関連性を示すため、既存のPRISMA項目に関する追加ガイダンスが作成された。

RCTと非RCTの害のメタ分析の効果推定値に違いがあるか


Golder S, Loke YK, Bland M. Meta-analyses of adverse effects data derived from randomised controlled trials as compared to observational studies: methodological overview. PLoS Med. 2011 May;8(5):e1001026. doi: 10.1371/journal.pmed.1001026. Epub 2011 May 3. PMID: 21559325; PMCID: PMC3086872.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3086872/

背景
有害事象のシステマティックレビューにおいて、観察データと対照的にランダム化比較試験(RCT)データを用いることの相対的な利点については、かなりの議論がある。このメタアナリシスの目的は、観察研究のメタアナリシスと比較して、RCTのメタアナリシスから得られた有害性の推定値の一致度または不一致度を評価することである。
結論
この概要から得られた経験的証拠は、RCTのメタアナリシスと観察研究のメタアナリシスから得られた介入の有害作用のリスク推定値に平均して差がないことを示している。このことは、副作用に関する系統的レビューは特定の研究タイプに限定すべきではないことを示唆している。

だったら、RCTのみでよいということにならないのか?


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