「EPFの歯周病診療ガイドライン」は、ちょっと・・・。
はじめに
「EPFの歯周病診療ガイドライン」がGRADEアプローチを採用しているって聞いたので、原文を確認。
Guideline on treatment of stage I-III periodontitis
https://onlinelibrary.wiley.com/toc/1600051x/2020/47/S22
残念ながら、
GRADEアプローチではありません。GRADEアプローチで行なったとありますし、一見、それっぽいですが、ダメです。
ある推奨を使って解説しよう
結果が正しいとか正しくないでなく、その方法論の説明です。
もとになるSRは?
Ramseier et al. (2020)が根拠となるSRとあります。よって、これのエビデンスの確実性を確認します。
Impact of risk factor control interventions for smoking cessation and promotion of healthy lifestyles in patients with periodontitis: A systematic review
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jcpe.13240
の付録に、3.4 Quality assessmentがあるとのこと。
観察研究なのに、コクランのRoB1.0で評価。もちろん、Adequate sequence generation?は、NR: not reported.。
おいおい、当り前でしょ。もしランダム割付けの方法が、非RCT試験に書いてあったら恐ろしいは!
よって、明らかに、このSRって、いい加減な作り方で、質も低いですね。使っちゃダメでしょ。しかも、その中のエビデンスの確実性も明らかに、「非常に低」(言いすぎかな、少なくても、読まなくても「低」)です。
エビデンスの確実性は、結局、書いてない!
どこをみても、推奨の強さと、その原案のコンセンサスの一致率みたいなのはあるが、肝心要のエビデンスの確実性(質)の記載がない。と言うことは、SRを使っているが、そのSRの中の効果推定値のエビデンスの確実性の評価をせずに、推奨を作っているという、トンデモないCPGとなる。
そもそも、推奨の分類はGRADEアプローチでなかった
一見、GRADEアプローチのようですが、TABLE 4. Strength of recommendations: grading scheme (German Association of the Scientific Medical Societies (AWMF) and Standing Guidelines Commission, 2012)とあるように、そもそも、推奨の分類が、GRADEアプローチと違うと、なっています。
推奨を決めるための要因として、それっぽいのが書いてあるが
このCPGは、3.4.2 Strength of Recommendationsのところに、
を考慮したとあります。でも、その内容もなく、利益と害のバランスはどこ?
Available evidenceという段落には、SRのまとめが、確実性もRoBも抜きで書いてあるだけでした。
そしてこの例の推奨度は?
そして、この怪しいSRを元にした結果で、エビデンスの確実性を考慮せずに、
We recommend (↑↑)/We recommend not to (↓↓)
We suggest to (↑)/We suggest not to (↓)
May be considered (↔)
に分けた原案を作っています。
この例では、Grade of recommendation Grade A—↑↑と、強い推奨となっている。どうして?
意味不明のコンセンサスの基準
そして、それに対して、コンセンサス委員会の投票で、強くコンセンサスしたか、弱くコンセンサスしたかなどを分けていると言うわけのわからん、方法で作っています(この例では、Unanimous consensus全開一致)。
そもそも、エビデンスの確実性がわからないのに、どうして投票できるのだ。
おいおい!
例のまとめ
怪しいSRの結果で、かつ、明らかにエビデンスの確実性が「非常に低」の根拠で、なぜか、強い推奨という原案を作って、それを、有識者が全員一致でコンセンサスしたという、不思議な推奨を作っているCPGです。
私は、このように読むかな?
残念ながら、このCPGは、単なる、総論文・有識者のコンセンサス集として、診療ガイドラインとして、読みませんね。