見出し画像

Frank Zappaについて語ろう

漸く重い腰を上げ、筆を執り、
生涯で一番聴いたFrank Zappaについて語ろう。

 様々なジャンルを縦横断じゅうおうだんし、多くの要素を一枚の作品に編纂へんさんし、そして常に批評性とユーモアを持って社会を見つめていたこの音楽家は生涯で62枚のアルバムをリリースし、死後、現在までに60枚近くのアルバムをリリースしている。死してなお新作が出続けているこの男に魅せられたのは大学一年生の頃だった。

 当時はKing Crimson、Yes、Pink Floydなどのプログレに傾倒けいとうしていた私だが、どこかのタイミングでFrank Zappa(フランク・ザッパ)の名前を見つけた。だからプログレの文脈からの発見である。おそらく最初に興味を引いたのはThe BeatlesのパロディジャケのThe Mothers of Invention(注:キャリア初期にザッパが所属していたバンド。以下、マザーズ)の3rdアルバム『We're Only in It for the Money』(1968)だと思う。

これはマザーズの1stアルバム『Freak Out!』(1967)や2nd アルバム『Absolutely Free』(1967)のアイデアをThe Beatlesに盗まれたことへの抗議からきているという。

 革新的な音楽を生みつつ、経済的な困窮こんきゅう・メンバーの意欲低下により7thアルバム『Weasels Ripped My Flesh』(1970)の発売を待たずにマザーズは解散。ただその前年にザッパはキャリアで最も評価されており、多くの影響力を保持する2ndソロアルバム『Hot Rats』(1969)を投下。

プログレの潮流を捉えつつジャズ・ロックにも睨みを利かせた
不朽の名作である。

特に"Peaches en Regalia"はキャリアを通してリアレンジされライブで演奏され続ける代表曲である。奇しくも『Hot Rats』が発売された1969年10月10日にはKing Crimsonも1stアルバム『In The Court of the Crimson King』を発売しており、運命的なものを感じたのを覚えている。

 The Mothers of Inventionの1stアルバム『Freak Out!』(1966)~7thアルバム『Weasels Ripped My Flesh』(1970)までを一期とする。というのも『Weasels Ripped My Flesh』の後に出た『Chunga's Revenge』(1970)の一曲目 "Transylvania Boogie"からは明確に違う風が吹いている気がする。

Wayne Shorter加入後の『E.S.P』(1965)について中山康樹が書いたように『Chunga's Revenge』からは"フワ~ッと気持ちのいい風が吹いてくる"。そこからライブ盤、Hot Rats Part 2と銘打たれた『Waka/Jawaka』(1972)というジャズロック、自主製作映画のサントラを経て『Over-Nite Sensation』(1973)から続く名作群が次々リリースされる。

この時期のファンが一番多いのではないだろうか。初期ほどアヴァンギャルドでなく、80年代以降よりもポップさがあり聴きやすい。また、この辺りのライブ盤『Zappa In New York』(1978)もオススメ。

というか数年前にリリースされた『Roxy The Movie』(2015)をぜひとも見て欲しい。

同じ曲でもライブごとにアレンジが違う、会場との掛け合いなどこれまで『Roxy & Elsewhere』(1974)を聴きながら想像するしかなかったライブバンドとしてのThe Mothers of Inventionが映像として観れる。

Roxy the Movie』のリリース時に渋谷TSUTAYA O-EASTで上映会があり参加したが、世の中にはこんなにザッパファンがいるんだと思った記憶がある。

 『Chunga's Revenge』(1971)から『Joe's Garage Act I』/『Joe's Garage Acts II & III』(1979)までを2期とする(個人的な区分ではあるが、このようにおおよそ十年ごとに区切るのがわかりやすいと思っている)。70年代にはのちにKing Crimsonに加入するAdrian Belewが参加する『Sheik Yerbouti』(1979)もリリースされている。

ザッパの顔ジャケとして人気であり、『Apostrophe(')』(1974)と並んでレコードを手に入れた際には顔に当てて写真を撮るものが絶えない(自分調べ)。

 如何にザッパ好きな人であろうと、苦手な年代があることが多い(気がする)。私にとっては80年代行の、ギタリストとしてのザッパを押し出したアルバムはあまり得意ではない。80年代のザッパはコンピレーションに次ぐコンピレーション、『You Can't Do That on Stage Anymore』をVol. 6まで出し、その間にオーケストラ曲を作ったり、政治的な活動(PMRCと戦ったり)をしていた。特に初期を愛する私にとって、この時期のアルバムはほぼ一聴しかしていない。。いつか魅力が分かる時が来るかもと思いながら塩漬けにしている。

The Yellow Shark』(1993)は生前最後にリリースされたアルバムである。過去曲のオーケストラ・アレンジ版が多く収録されたアルバムであり、原初の音楽性を決定づけたStravinskyなどの現代クラシックへの敬愛の心に満ちた作品である。思い返せば初めてのソロアルバム『Lumpy Gravy』(1967)もオーケストラとの共演だった。こうして原点回帰し、彼は生涯を閉じた。

 彼の死後もZappa Familyは膨大に残されたアーカイブから作品を発表し続けている。執筆時点では通算120枚目のアルバム(というかボックスセット)の『200 Motels 50th Anniversary Edition』(2021)が発売された。

夫人のGail Zappaは『Roxy The Movie』(2015)の完成の年に長い肺がんとの闘いの末亡くなってしまったが、彼女の意思はまだZappaファミリーに残っており、当分は新作がリリースされ続けるだろう。

ザッパ必聴アルバム10選









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?