博物館デジタル化調査報告 No.16 〜オルセー美術館〜
こんにちは。ミューゼオ株式会社の奈良です。
第16回は印象派の画家の作品が数多く収蔵されているオルセー美術館。今やミュージアムの楽しみ方のひとつとして確立されつつあるデジタルを活用したさまざまな施策をまとめていきます!
国内のミュージアムではあまり見かけない施策も含め調査し、「デジタル化やDXは手段や方法が色々ありすぎて何から手をつけたらいいのやら…」と悩んでいる方の参考になればと思っております。
調査はミュージアムの公式HPを中心にミュージアムとしての取り組みやSNSの活用方法を調査し、個人的に好きなミュージアムストアの情報なども取り上げています。(TOP画像はオルセー美術館公式Facebookを参照)
オルセー美術館の概要
所在:フランスのパリ
正式名称: Musée d'Orsay
略称:M'O
オルセー駅を美術館へと生まれ変わらせた建築家ガエ・アウレンティは、東京にあるイタリア文化会館の新ビルも手がけている。
Webサイトの内容
〈開館時間〉※休館は月曜日 ※木曜日は夜22時近くまで開館
火・水・金・土・日曜:9:30~18:00
木曜日:9:30~21:45
〈チケット〉※予約が必要 ※第1日曜日は入場無料
オンラインでチケットの予約が必要だ。購入方法によって価格も異なる。
【1】研究者レベルの学習プログラム
様々なテーマで行われている学習プログラム。オンラインでは受講できないようだが、丸1日あるプログラムや2週間程かかるプログラムなどもあり、本格的な内容が多い。
【2】コレクションについて
流れてくる作品の中から気になるものをクリックすると詳細を確認できる。
作品の詳細ページでは、美術館内のどこに展示されているのか、もしくは展示していないのか、作者の他の作品やどの展示会に展示されたのかなども確認することができる。
●作品の買取について
作品の買取についてもオープンにしている。最近買取りされた作品やどのようにして調達しているかなども詳細に明記されている。
【3】作品の修繕
東京上野の国立西洋美術館前にあることでも有名なオーギュストロダン作の「地獄の門」。そのオリジナルがオルセー美術館には展示されており、歴史保全や作品修繕のための解体などを公開している。
【4】動画やポッドキャストを活用した取り組み
オルセー美術館とオランジュリー美術館のコレクションに含まれる1848〜1914年の20の芸術運動について、作品、アーティストのアプローチ、当時の批評家を文脈に取り入れ解説しているものや、芸術家、作家、哲学者、デザイナー、ミュージシャン、俳優、監督、映画製作者、科学者のオルセー美術館とオランジュリーのコレクションで自分が選んだ作品についての見解を伝える動画などを公開している。どれもYouTubeから視聴可能だ。
SNSでの活動
オルセー美術館では4つのSNSを利用して情報を発信。YouTubeも積極的に活用している。様々な媒体を使って作品紹介を発信しているため、自分の好きな媒体で情報をチェックできる。
●Facebook
イベントの情報がメインで発信されている。
●Twitter
イベントについてがメインで発信されているが、Facebookの内容とは少し異なる。
●Instagram
Twitterの内容と同じイベントについて発信している。
●Linkedin
イベントについて発信されているが、他に比べて情報量は少なめである。
YouTube
〈チャンネル登録者数〉3.4万人
〈本数〉約200本
〈配信開始〉2012/01/27(10年前)
〈最高視聴〉908,886 回視聴
内容:地球上の天国またはシャルル・グレールの朝
Store情報
こちらからはオルセー美術館でしか買えないようなアイテムを紹介。オンラインでも購入可能だ。
●記念メダル
よくお土産として購入されるメダル。オルセー美術館が駅だった頃からある時計が描かれている。
●特徴的な白熊のピン
ロダンが活躍した時代に墓石屋の大理石職人として活動していたフランソワ・ポンポンの代表的な作品「白くま」のピンバッチ。フランソワは晩年になって人気を集めた作家であり、動物がモチーフになっている彫刻を多く残している。ピンの他にも様々なグッツが展開されていた。
●巨大な塗り絵
オルセー美術館とオランジュリー美術館をメインにした巨大な塗り絵。壁にかけながら色を塗ったりすることができる家族で楽しめるグッツだ。
まとめ
▶︎夜遅くまで開館していたり無料で入場できる日を設けるなどしているため、様々な人が美術館を訪れることができる
▶︎プログラムが本格的
▶︎作品についての情報がオープン
オルセー美術館ではオンラインプログラム等はあまり開催されていませんでしたが、他の美術館が子供向け学習プログラムが多いのに対して研究者レベルの本格的なプログラムが多く開催されていました。また、作品の詳細が他に類を見ないほどオープンにされているため、興味を深く細かく探求することができそうです。
次回はマウリッツハイス美術館について調査していきます。オランダの美術館ではどのような取り組みがされているのか。お楽しみに!