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17.【番外編】図書カードの人間失格

本が好きで活字中毒ではあるけれど、読む本はけっこう選り好みするため、教科書に出てくるような文豪の本、古文漢文はあまり読まない。

小中学生の頃は、4月の新学期に配布される国語の教科書を、最初から最後まで一度は読んでみたりするほど大好きだったけれど、旧仮名遣いの文体が苦手だから、高校生になると古文漢文、明治の文豪の小説はあまり読まなかった。

私は気に入った本しか読まない活字中毒なのだ。

そんななので、記憶に残った出来事があった。

私が通っていた高校の図書室は、公立高校の割に本が充実していた。
中学生の時は、かなり荒れまくっている学校だったので、図書室はいつも鍵がかかっていて、3年間一度も借りることがなかったので、高校の明るくて充実した雰囲気に私はワクワクした。

しかし…
入った部活がやたら厳しくて、放課後の図書室通いが無言の圧力でできなかったため、1年のうちは全然借りられなかったけれど、神様は私に味方してくれた。

図書館掃除がクラスの担当だったのだ。
雑巾片手に掃除のフリして、めぼしい本をパラパラ読んでは司書の先生に叱られていた。

ある時、当時は手書きだった図書カード立てを拭いていると、部活の先輩の名前があった。
驚くことにその先輩は、毎日のように大量に本を借りていた。

「なんで?そんな余裕がある?」

そう思って、他の先輩のカードも全部探して見てみてびっくりした。

他の先輩達は、全く借りていなかったのだが、皆同じ本の名前が、カードのいちばん上に書かれていた。

【人間失格】

全員これ。

尊敬せねばならない先輩方とはいえ、全員これって…今でいうドン引きした。
部活としては尊敬できるが、読書家としては尊敬できない。
そう思った。

いちばん本を読んでいた先輩に【人間失格現象】のことをそれとなく聞いてみたところ、理由がわかった。

私の学年と入れ替わるかのように、別の高校に転任された部活顧問が勧めた本らしかった。
先輩たちは、この顧問に心酔されていたので、皆、一斉に借りたんだろう。

カリスマ的な顧問だったそうだが、私は【人間失格】を勧めるという時点でたぶん、この顧問とは合わないだろうなぁ…と思った。
後任顧問とも全然全く合わなくて喧嘩ばっかしてたけどね。

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