◆ ハンドメッセージ ◆
子どもを学校に送り出し、無事に帰って来てほしいと願うのは、親の願いだ。
四六時中、今何してるかな?大丈夫かな?とは思わないけれど、学校から電話がかかってきたら、ドキッとしたものだ。
学校が終わる時間に、私の仕事は始まる。
ピアノを習いに来る生徒の右側に座る。
小さな左手に目がいくのは、この子が右ききだからだろう。昨日は、メッセージを2つ見た。
「どうしたん?薄くなっとるけどハート描いてあるじ」
今日はレッスンの前に話からなのか?と、身体をこちらに向ける。
「これね、わたし学校で泣くからお母さんが朝 描いてくれるおまじないなの」
丁寧に話をする小学1年生には、私もスローテンポでお話しないといけないと思い、
「どうして泣いてしまうの。学校楽しくないの?お友達に意地悪する子いるの?疲れてしまうの?」
「そんな沢山言われても(笑)泣く事に理由はないよ。なんでか泣いてしまうんや。今日は泣かなかったよ」
ゆっくり話したつもりが、質問項目のどれに当てはまるのだと、すぐ解決策を見出だしてしまいたいズルい私がいた。
「今は元気や。もう弾いていい?」
小学1年生のAちゃんの次は、小学5年生のBちゃん。また左手に何か描いてある。
「黒い字で何描いてあるん?」
はっきりとしたインクは、時間が経っていないようだ。
「あっ、これね。四連休の間に、白い紙に学校のキャラクター考える宿題が出てん。あと、アンケート忘れん事や」
普通の宿題やん。
「何で連絡帳に書かんが?」
「超大事な事は手に書く事に決めとるげん」
そして最後の生徒は、中学1年男子。
私が左手を出して一緒に弾いた時だった。
「先生、アルコール消毒し過ぎじゃないかー」
「なんで?」
「手、シワっぽいけど」
「これ、歳やしやわいね。写真撮るし、私の左手に手を乗せてや」
「嫌やわいやー」
「りょうたが私の事心配してくれた記念や」
そっと私の左手に手を乗せてくれた。