「鎌倉殿の13人」を巡る旅
以下文章は昨年5月に途中まで書いたまま、放置していた文章。ダラダラと書き記しているのでお時間のある時になんとなく読んでくれたら。
#上総介ロス
久々にnoteを開いた。
それなりに忙しく、それなりに考え込んでいたような。考え込むと身動きが取れなくなってしまうのは悪い癖だ。そんななか、今年も4か月が経過したところだった。久々に私の心を揺さぶる出来事があった。
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」4月17日の放送で、佐藤浩市さん演じる坂東武士の上総広常(かずさひろつね)、通称上総介(かずさのすけ)が粛清されたのだ。三谷幸喜さんが描いたその物語において、それはあまりに理不尽な最期だった。頼朝を「武衛」(ぶえい)と呼ぶ上総介の声が、最期の悲しみの表情が、すべて悟ったような目が…私の胸を貫く。
放送が終わると、私は真っ暗な寝室に駆け込み、顔中を涙で濡らした。「上総介が…上総介が…」布団の中で呟く。その様子を見た家族が何事かと驚いていた。一大事だよ。
それから数日間、仕事中のほんのひととき、夕飯を作る最中のほんのひととき、湯船につかってのんびりしているほんのひととき、何気ない私の日常に上総介が顔を出すようになった。
空想の中の上総介はいつも哀しみを湛えた表情をしていた。
これはロスだ。ぽっかり開いた心の穴を埋めるためにも上総介に会いに行かなければ。私はゴールデンウィークに上総介の供養塔に行くことを決めた。
いざ鎌倉は、ホリデー快速鎌倉号で
以前より、鎌倉に行くならこのルートで…と決めていた電車があった。
JRホリデー快速鎌倉号 だ。
ホリデー快速鎌倉号は、行楽シーズンの土曜休日のみ運行している列車。
吉川美南駅(埼玉県)ー 鎌倉駅(神奈川駅)間を武蔵野線、東海道本線、横須賀線の線路を使い走っているのだが、面白いのが普段は旅客列車が運行されない武蔵野貨物線を通るというところ。
武蔵野線といえば、西船橋駅(千葉県)と府中本町駅(東京都)を繋ぐ路線。
地元が所沢の私が八王子市の大学に通っていた時は、南武線に乗り換えるために府中本町駅を利用していた。
府中本町…と言えば武蔵野線の終点駅と認識する方も多いと思うが、実際の終点駅は西船橋駅だ。
では起点駅が府中本町駅か、と思うとこれも違う。起点駅は鶴見駅(神奈川県)なのだ。武蔵野線は府中本町の先にさらに線路が伸びている。
といっても、多摩川を渡るとすぐにトンネルに入ってしまう。
途中、京王相模原線との交差、梶ヶ谷貨物ターミナルなどで少しだけ地上に出ることはあったが、主にトンネルの中を走っていく。府中本町駅を出発して30分しないうちに鶴見駅を通過する。
トンネルを抜けたらそこはもうすでに横浜市なのだ。(鶴見は決して川崎市ではない)
西国分寺駅を出てから鎌倉駅までの停車駅は、横浜駅、大船駅、北鎌倉駅のみ。8時50分に西国分寺駅を出発し、9時54分に鎌倉駅に到着、指定席で約1時間のんびり行くことができる。
普段は通ることのできない貨物線路、府中本町の先に行ってみたいという方はぜひ。
想像以上に険しい道
ゴールデンウイークのJR鎌倉駅に降り立った。午前10時の鎌倉はすでに賑わっている。小町通りの鎌倉グルメに後ろ髪を引かれつつも、足早に通り過ぎる。
上総介の供養塔は鎌倉中心部から6キロほど歩いた先の切通しを越えたところにある。途中には鶴岡八幡宮、少し進むと源頼朝の墓、北条義時の墓と云われる史跡法華堂跡もある。
各所に立ち寄ると、大河ドラマの影響か、多くの観光客とすれ違う。写真で振り返っていこう。
法華堂跡から朝夷奈切通までは約4キロ。県道の細い歩道をひたすら進む。この県道は横浜横須賀道路の朝比奈インターに続く道らしく、そこそこに交通量はある。
いよいよ朝夷奈切通の入口が近くなる。県道から細い道に逸れ歩いていく。
そしていよいよ朝夷奈切通にたどり着く。
ここは鎌倉七口(切通)のうちのひとつ。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では、坂口健太郎さんが演じている北条泰時が指揮をし工事が進められたそう。
その当時重要な貿易港があった六浦(現横浜市金沢区)と鎌倉を結ぶ道だ。
七つの切通しの中でも昔のままの様子を残しているのがここだと言われている。
横浜横須賀道路の下をくぐると横浜側の出口はすぐそこだ。
途中、石仏あり、摩崖仏あり、せせらぎあり、滝あり、崖ありのちょっとした登山ができてしまった。
鎌倉市側入口からはおよそ30分程度で抜けられる。途中ぬかるんだ坂もあったので散策の際は動きやすいトレッキングシューズ等がオススメ。
さて目的を忘れかけたが、上総介の供養塔だ。
朝夷奈切通を横浜市側に抜けると5分もせずにたどり着く。
塔は京浜急行バス朝比奈停留所のすぐ近く、金沢八景方向に向かって左手に佇む。
花や供え物で賑やかだった。
大河ドラマ放送中、しかもゴールデンウィークということもあり、多くのファンが足を運んだ様子が窺える。
なんだなんだ一体なんの騒ぎだよ
なんて、佐藤浩市さん演じる上総介の声そのままで聞こえてくるようだった。
今年もまた会いに行きたい。