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21/09/04|『12ヶ月のカイ』でキョウカが持っていた「ある権利」が剥奪される、対岸の火事ではない話。
先日、アメリカからショッキングなニュースが飛び込んで来ました。
要約すると、
・テキサス州で、妊娠6週目以降の人工妊娠中絶を禁止する法律が
・レイプや近親相姦といった例外は認められず
・アメリカ最高裁判所この法律を差し止めず、女性たちは実質中絶不可に
・6週目以降で中絶手術をした医療機関や、手術費を支援した人、車で病院に連れて行った人も訴えられる可能性がある
・他の共和党優勢の州でも同様の法律が施行される懸念が…
はっきり言って「…現代…?」と不思議に思うような出来事です。渦中のタリバンでのニュースならまだしも、あのアメリカさんで起こっていることだとはなかなか信じ難いですね。
そして数時間後、私が渡米中に利用していたLyftというライドシェアサービス(一般人が自家用車で乗客を運ぶことが出来るタクシー的なサービス)からもメールがありました。要約すると、
・テキサス州の新しい法律はLyftの運転手を罰する恐れがある
・運転手には、乗客がどこへ行くのか監視する責任はない
・同様に乗客も、行き先を正当化したり共有する必要はない
・この法律は、プライバシーに関する人々の基本的な権利、Lyftのコミュニティガイドライン、ライドシェアの精神、そして企業としてのLyftの価値観と相容れないため、ドライバーの訴訟費用を100%負担し、女性の性と出産に関する非営利医療組織に寄付します。
控えめに言って、キレ気味のメールでした。英文メールだったので実際のニュアンスは掴みきれていないと思いますが、こういう情緒的な文章を企業が顧客に送る風土があるのか、と改めてアメリカすごいなと思いました。そして、他州で起こっていることに対し、秒で対抗策を出せる企業のスピード感にも。
冒頭のハフポストの記事にもありましたが、テキサス州でこれがまかり通っているということは、アメリカの他の州でも同様の法律が今後出てくる危険性があるということで、ひいては同じような考えを持つ他の国・地域でも同様のことが起こり得てしまうのではないか…という懸念が浮上します。
「女性の体ことは女性が決める事であり、その権利は尊重されるべきだ」
たとえどこかの宗教から逸脱した理論であったとしても、この価値観は覆されるべきものではありません。(それが実現していない国がいまだ多くあるのが現実ではありますが)
前置きが長くなりましたが、実は『12ヶ月のカイ』には、キョウカとカイが生み出してしまった命について女性たち(友人・母親)が自らの立場でキョウカと対話するシーンがあります。この対話を経てキョウカは自らの未来を決めていくわけですが、「女性に選択権がない」ということは、このストーリーはそもそもテキサス州では「生じないお話」になってしまうんですよね。
そしてもしキョウカに選択権が無かったとしたら…、想像しただけで恐ろしい。文字通り、女性は産む機械になってしまうでしょう。Huluのドラマ『ハンドメイズ・テイル』のように。
予告編は刺激が強すぎたので、特別映像の方を載せておきます…笑
SFと現実を混ぜるなという方もおられるだろうとは思いますが、『12ヶ月のカイ』は、そういう話です。女性たちがいのちについて話し合うことが出来たからこそ成立した世界。人間と機械の物語と見せかけた、いのちと女性の人生の選択の物語です。
神は人々を導くために生まれた存在であるにもかかわらず、人々が神を重視しすぎた結果、半分の人(女性)は不幸に陥る。なんとも皮肉ですね。
そしてこれが「対岸の火事ではないかもしれない」というのが最も恐ろしいこと。宗教観こそ違えど、日本では未だ夫婦別姓が認められていませんし、性犯罪に対する罰の軽さ・認識の甘さは異常なレベルです。男女格差もご存知の通り毎年絶望するほどの酷さ。
『12ヶ月のカイ』で主人公が持っていた権利、そして今私たちが持つ権利が恒久に守られることを願ってやみません。
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