物書きとしての「初心」を込めた小説を
初めて「Web上に小説を発表しよう」と思った際、自分はある“隠しテーマ”を物語に込めました。
それは「自分の“初心”を書き込んでおくこと」です。
誰でも小説の“書き始め”の頃には、様々な思いを持っているものと思います。
「こんな“夢”を描きたい」「こんな“救い”を描きたい」「読み手の“心に残る”物語を描きたい」等々…。
しかし、なかなか数値が伸びなかったり、リアクションが無かったり、他者の作品が人気を得ている状況を見たりすると、だんだん打算的になっていったり、当初のキラキラした理想を失ったりしてしまうものなのではないでしょうか?
自分はネット・デビュー作を書き上げる前から、その状況を想定していました。
なので“小説を書き始めたばかりの頃の志や思い”を忘れないようにと、“それ”を作品に込めることにしたのです。
悲しいことですが、人間とは「変わってしまう」生き物です。
かつて抱いていた夢や理想や大切な思いを、いつの間にか忘れてしまう生き物です。
その忘却と変化に抗うためには、忘れたくない大切な思いを“保存”しておくしかありません。
「それを見たり読んだり聞いたりしたら、必ずその思いが蘇る」という、“記憶のトリガー”を用意しておくしかありません。
思い入れを込めて書いた“物語”は、記憶のトリガーとして、これ以上ないほどの役目を果たしてくれると思ったのです。
そして、その物語を読んだ時に蘇るであろう“初心”に、自分は“優しい希望”を選びました。
いつかの未来にそれを読み返す時、たとえ自分が挫折や絶望を味わっていたとしても、初心を思い出して希望を取り戻せるようにと、「夢を追うことの本当の意味」を描きました。
未来の自分が「こんなことは綺麗事だ」と空しい気持ちにならないよう、登場人物たちを一度絶望に突き落とした上での、どんでん返しのカタルシスを描きました。
…とは言え、未だ人生経験も浅い過去の自分が書いたものですので、いろいろと「甘い」部分はあるかも知れません。
結局は「綺麗事」に終わっている部分も、あるかも知れません。
ですが、過去の自分が「いつか絶望するかも知れない未来の自分を“想って”書いた」という、そのことだけは、必ず思い出せるはずです。
そして、その想いが嘘でないことを、他ならぬ自分自身が知っているのです(なにせ、本人ですので)。
それは、いつかの未来で自分自身を救ってくれるかも知れませんし、ひょっとしたら、同じように人生に挫折し絶望する、他の誰かさえも救ってくれるかも知れません。
そして、それこそが自分にとっての「目指すものになるよりも、ずっとすごい夢」なのです。
(↑小説本編を読んだ方にしか分からないネタでスミマセン…。)