ある帰還。至る場所。
帰還兵は、手足の一本二本喪っているのが付き物だ。という話をローレンスが聞いたのは、彼の兄が出征して数ヶ月した後のことだった。
何気ない日常会話の一節としてであり、さほどは気にしていなかったものの、人の良い司祭が失言に気付き、その後わざわざ謝りに来たことを覚えている。
兄弟二人で他に家族もなく、まだ年少のローレンスは兄の出征後、村の教会で小間使いのようなことをしながら住まわせてもらっていた身であれば、それになにか思うところなどあるはずもなかった。
「ただいま、ロー」
そんな、ぼんやりとした記憶を思い出しながら、少年は目の前のひとを見る。
くすんだ金髪に丸顔。鍋を背嚢代わりに両の腕で背負い、二本の足で立つ。
全体的にふっくらとしたからだで、背は少年より頭一つ高く、目の高さには、窮屈にシャツを押し上げる「大きな乳房」。
少年の兄……カイルが帰ってきた時、身体的に大きく喪ったものはなかった。
ただし、性別が換わっていたというだけで。
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