ギリシャ語の時間は感動の名作?その感想とは?究極と究極な2人の物語
「ギリシャ語の時間」という、僕の大好きなハン・ガンさんの作品を読んだ感想を紹介します。
本書は、言葉を失った女と視力を失っていく男の究極な局面同士の2人の物語です。
本記事では、本書の概要について説明し、感想や心に残ったフレーズなどを紹介。
また、読者が読んだ際に得られるものや、どのような人におすすめなのかを考察します。
「ギリシャ語の時間」や韓国文学、ハン・ガンさんに興味のある方には、ぜひ読んでみてほしい作品です。
「ギリシャ語の時間」とは
ハン・ガンさんとは、2016年に「菜食主義者」という作品で、アジア人初のマン・ブッカー国際賞(イギリスの権威ある賞)を受賞されている韓国の作家の方です。
そして、僕が韓国文学を好きなるきっかけもこの菜食主義者でした。
また、とあるインタビューでハンガンさんは、「日本の方に1番おすすめしたい作品は何か?」という質問に対して、本作の「ギリシャ語の時間」とも答えられています。
「ギリシャ語の時間」の概要
□タイトル:ギリシャ語の時間
□著:ハン・ガン 訳:斎藤真理子
□刊行年:2017年10月15日
□発売:晶文社
□ページ数:229頁
□備考 :著者自身が思う日本の方に最も読んでほしい作品
・あらすじ
「ギリシャ語の時間」の感想
・読んでみた感想
率直に、1回だけでは所々理解できない部分がありました。
物語として、言葉を話せなくなった女と視力を失っていく男の関係性は、女がギリシャ語を習う生徒で、男がギリシャ語の先生という関係性です。
そのギリシャ語が難解の古典ギリシャ語で、作中でも古典ギリシャ語表記が散見されます。
そこで、古典ギリシャ語が自体が未知な言語だったため、そういった部分を理解するのが難しく感じたというわけです。
とはいえ。
この「言葉を失った女」と「視力を失っていく男」という究極かつ絶妙な組み合わせは、読み進めていくうちに心を震わせる展開へと誘われました。
僕や多くの方にとって、言葉を話せない人と目が見えない人という関係性に、遭遇したこともなければ想像も難しいでしょう。
そんな究極な人同士の物語の展開に、僕は貴重な読書体験を得られました。
ちなみに著者は、「この本は生きていくということに対する、私の最も明るい答え」とも話していて、たしかに物語中の大事なことを喪失したもの同士の究極の触れ合いには心を動かされました。
その他にも、この物語中には能動態でもなく受動態でもなく「中動態」という言語の概念もポイントのように感じます。
(古典ギリシャ語に実際にあった少しグレーで面白い表現)
この中動態に関しても予習できていれば、さらにこの作品の深みを堪能できたと思います。
・心に残ったフレーズ(ネタバレあり)
これは、物語の後半ででてくるほんの一部分です。
男がほとんど視力を失っているときの女とのやり取りで、女は言葉を話せないので指で手のひらに文字を書いて男に言語を伝えます。
女は言葉を話すことができない、男は目が見えない、だから感触で言語を伝える。
これを文章で表現するのが衝撃的で、ハン・ガンさんの想像力に感動しました。
感触だけの想像と想像で、お互いコミュニケーションを取るという…当時鳥肌が立ったのをよく覚えています。
詳しくはぜひ読んでみてくださいということで、あまり詳細には触れないようにしておきます。
気になる方は、ハン・ガンさんも話しているのでこちらもぜひご覧ください。
インタビューはこちら
・こんな人におすすめしたい
感想部分でも書いてますが、読書や小説をあまり読み慣れてない人には正直おすすめできないかもしれません。
普段から、よく読書をしていて思慮深くこの作品と向き合うことで、よりこの作品に浸れるかと思います。
ということで、この作品をおすすめしたい人は…
☑︎言語表現に関して深く考えたい人
☑︎中動態という概念を知っている人
☑︎究極の物語で前向きになりたい人
☑︎韓国文学やハン・ガンさんに興味のある人