SHHisシナリオイベント『セヴン#ス』 キャラ別ポイント整理・考察・感想
「あのシーンは美琴が出ていたな」と思い当たることはできても、「あのシーンは第4話だったよな」と即座に思い出すのは困難だ。
したがって検索性・利便性の観点から、章立てではなくキャラ別にポイントを整理し、考察を交えて記述することにした。
本記事では、美琴、にちか、ルカ、はづきをメインに立項した。
最初にアイドルの3人に対して本シナリオ以前における筆者の見解を述べ、その後、琴線に触れたシーンを取り上げる。
立ち絵の無いキャラについては「その他」で取り扱う。
なお、「SSRサポートアイドル【STAGE】緋田美琴」の内容も含む。
シャニマスについて文章をまとめるのは初めてだ。
シャニマスは3.5周年辺りからプレイしており、特にSHHisに思い入れがあったが、まとまった分量の感想を書いてはこなかった。
しかし、『セヴン#ス』で得た強烈な情動に突き動かされて筆を執ることにした。
それだけの力を持ったシナリオだったように思う。
美琴
これまでの所感:ハードボイルドの文脈と原点の喪失
美琴から受ける印象は場面によってかなり異なる。プライベートでは柔和な人あたりだが、仕事(アイドル活動)では極めてシビアな感性が発露される。
特に仕事における彼女にスポットが当たるプロデュースシナリオおよびイベントシナリオでは、彼女のシビアさがより強調されてきた。
美琴は余りにも真摯にアイドルを追い求めてきた。
理想のアイドルへ近づく代償として、その他の全てを失うとしても。
彼女がアイドルの頂へと登っていくのに、自らの過去は重荷なのだろうか。
10年近く地元にも帰らず、自分の足跡さえ消えてしまっても構わないという姿勢をとる理由は、そういうことなのかもしれない。
完璧の境地にたどり着き、消える。
これが緋田美琴の美学だと見受けられるシーンを2つ紹介する。
美琴のシナリオには常にハードボイルドな雰囲気が漂う。
ハードボイルドとは、文学において感情表現を極力排した表現手法である。従来は戦争や格闘といったジャンルの作品と組み合わされてきた手法だが、それをアイドルゲームに持ち込んだ点が斬新だ。
この手の作品は、主人公が内省を積極的に行わないという構造上、常に付きまとう命題がある。
それは、自分の在り方を見失うこと。
美琴もまた、その問題に陥った。他の追随を許さない実力をもってしてもアイドルとして芽が出ない。
「パフォーマンスでみんなに感動を与えるようなアイドル」という目標にも、だんだんと自信を持てなくなっていく。
完璧なパフォーマンスを追求する姿勢は変わらない。
しかし、その解決策は見出せない。
彼女はただひたすら練習に打ち込んでいたが、それは問題と向き合うというより、目を背ける行為として描かれる。
そして彼女自身、「逃避」をぼんやりと自覚しているようにみえる。
「アイドル」に向き合い、存在理由を見つけられるか。
ここに美琴の課題がある。
『セヴン#ス』での達成
美琴が本シナリオの主人公であることは間違いないだろう。
イラストで顔が見えているというのもあるが、内容的にも彼女が中心のシナリオだった。
本シナリオで達成したことは大きく分けて2つ。
・アイドルの本質の発見
・SHHisの存在意義の理解
ロードムービーのような構成でこれらを探求していく。
旅路
美琴のシーンは、チューニングを行う場面から始まる。
狂わないキーボード、完璧なパフォーマンスの象徴。
美琴の出発点が示された。
トリビュートギグで八雲なみの楽曲のパフォーマンスをすることになった美琴。
トリビュートとは、思い入れや敬意を示すこと。
美琴は八雲なみを「それほどよく知らない」ため、まずはレコード店に赴く。
旅が始まる。
美琴は2つの命題を抱えて歩いてゆく。
一つ目は「新しいパフォーマンスの模索」
シャニPによれば、イベントの主催者は
「八雲なみでカラオケしてほしいわけじゃない」
と言っている。
「新しいパフォーマンス」が求められる。
圧倒的な技術だけでは埋められない何かを探らなければならない。
美琴は歌とダンスを通じて八雲なみを理解していくことにした。
二つ目は「にちかのこと」
この仕事は元々、SHHis二人に来ていた。
八雲なみのファンであるにちかがきっかけだ。
しかしシャニPは、この仕事をにちかに伝えていない。
出てもらいたい気持ちはあるが、「大事な憧れに向かいあう」ことは、
彼女にとっていいことなのか。
「くすんで、何かのコピーになる」のではないか、そう思ったのだろうか。
「にちかは……それでいいかな」
「どうして……私に聞くの?」
「……どうして、か …………」
「相方だから」
美琴は言葉に詰まる。
にちかが憧れの八雲なみに向かい合うべきか。
美琴の思索は続いてゆく。
美琴は早速にちかにトリビュートギグの件を伝える。
驚くシャニPに対し、美琴は当然のことだと思っている様子。
コミュニケーションの齟齬にみえたが、嬉しい誤算だった。
美琴がにちかから八雲なみのレクチャーを受ける中で、ある箇所が目に留まった。
動画ごとに八雲なみの右手の表現が異なっていたのだ。
その箇所の振りはアドリブらしいが、にちかのお気に入りは「こぶしを握る」パターンだという。
その刹那、頭によぎるルカの影。
トリビュートギグのパートナーがルカに代わってもなお消えない、右手の振りへの執着。
美琴は振り付けの調整のため、八雲なみの現役当時を知る関係者に事情を聞いて回ることにした。
話によると、八雲なみの初期の頃は「かなりかっちりしたダンス」で、アイドル然とした振り付けもあったという。
しかし、ラストシングルの「そうだよ」は、彼女の従来のイメージを丸っきり変えたものだった。
次に美琴はとあるステージスタッフにも話を聞く。
もはやこのインタビューは、振り付けの調整のためではなく、八雲なみの在り方を問うている。
そのスタッフは八雲なみをこう振り返る。
そして美琴は評論家を頼る。
初めて知ることになる下積み時代の八雲なみ。
彼女はデビュー前にバックダンサーとして出演していた。
映像の彼女にカメラが寄る。
「― こぶしを……握っている―」
評論家の「今こぶしをグッってした子!」という発言をふまえると、バックダンサーの中で八雲なみだけがこぶしを握っていたのだろう。つまり、
こぶしを握る動作は振りではなかった。
美琴の声に驚嘆の色が差す。
完璧なパフォーマンスを追い求める美琴にとって、
「本来の振りにない動き」はどのような意味を持つのだろうか。
そして、どうしてここまで「こぶしを握ること」にこだわってしまうのか。
美琴はにちかをリハーサルに誘った。
いや、リハーサルを頼んだ。
思えばこれまでの道のりは、美琴に欠けていたピースを拾うための旅だった。
完璧なパフォーマンスの向こう側にあるもの。
決して消えない美琴だけの証を。
アイドルの本質
八雲なみは巨大な「伝説」をか細いその身に背負い、ただひとり祈る。
燃えるようなステージ照明の火を耐え抜くために。
思索の末に美琴は悟る。
八雲なみが握ったこぶしは、「―彼女が、彼女でいようとした振り」なのだと。
アイドルがステージ上で自らの不完全さを曝け出す。
しかしそれは、この世界で八雲なみだけが表現できるものだ。
誰も立ち入ることの許されない聖域。
そこにアイドルの極北が垣間見える。
ステージが愛するのは「完璧なパフォーマンス」だけではない。
ステージは全てを包み込む。
八雲なみの不安も、
斑鳩ルカの怒りも、
七草にちかの悲壮さえ。
アイドルとは生き様を見せるもの。
どんなに苦しい気持ちも辛い過去も、パフォーマンスにぎゅっと込めてステージに立つ。
アイドルがステージに立つ意味とは
「自己の肯定」なのかもしれない。
SHHisのありか
SHHisはこれまで、ある種いびつなユニットだった。
一緒にいるという感覚がほとんどない。
実力派と称されてなお、ベテラン業界人の炯眼には「よさ全然ないデュオ」とまで映っていた。
互いの気持ちを確かめる話し合いはほとんどなかった。
しかしこれがSHHisの在り方なのだ。
「だから黙って聴いていて。駆け出す心のBPMを、抑えられない旋律を。」
言葉など必要ない。歌とダンスが全てを語る。
長い旅路の果てに美琴がたどり着いたのはSHHisだった。
自分に欠けていたピースを拾う旅はトリビュートギグがきっかけだったが、これはにちかが積み重ねた努力があってこそ舞い込んだ仕事だ。
そして何より、にちかの八雲なみへの愛が美琴に気づきを与えた。
また、旅から帰る場所があるのも、にちかのおかげだった。
美琴がW.I.N.G.で見た「走馬灯」に映っていたのはレッスン室だった。
美琴の大切な居場所。
そしてSHHisとして活動する中で、レッスン室は次第にSHHisとして大切な居場所になっていく。
そこにいつもにちかがいる。
美琴の原点はSHHisなのだ。
トリビュートギグを終え、美琴は路地裏でにちかを見つける。
戸惑いを隠せないにちか。
「あの……ステージは―」
美琴は言う。
「終わったから」
「戻ってきたの」
SHHisが七草にちかと緋田美琴の二人である理由は、彼女たちが誰よりも真摯にアイドルと向き合っているからではないかと思う。
そして、真摯ゆえに苦しんできた。
しかし、もっと早く解決していたら、と美琴は考えないだろう。
SHHisの努力も摩擦も、そして苦しみも含めて自分の過去を肯定することがアイドルの生き様だからだ。
路地裏からの帰り道、あの素朴な話し方で彼女は呟くのだろうか。
「―ううん、多分 今だったんだね」と。
にちか
これまでの所感:ひたむきな凡人
にちかは加入当初、徹底的に凡庸さを強調されてきた。
一方SHHis加入前のシャニPは、スカウトでもオーディションでもアイドルに何か光るものを見出していた。
例えば真乃のスカウトでは、公園で歌う彼女を見て「何か惹きつけられる…」と言っている。これは分かる。
甜花ちゃんに至っては、歌もダンスも披露せず、人と話すことも苦手そうにしていた。事実上の決め手は彼女が妹について話した際に感じた直感、
「周りから魅力を引き出してあげれば、すごいアイドルになるのかもしれない!」だけだ。
(※甜花もいいところがあると思うぞ)
ところで、イベントシナリオ『Catch the shiny tail』においてシャニPは
「みんな特別だし、みんな普通の女の子だ」と言った。
これはシャニマスの通奏低音として理解しているプレイヤーも多いだろう。
これほど「普通の女の子」に可能性を見出せるシャニPのアンテナをもってしても「なぜ、この子をプロデュースしようと思ったのか自分でもはっきりとはわからない」とまで思われてしまうにちか。
ここから私が抽出したメッセージはこうだ。
平凡でも必死に努力をすれば輝くアイドルになれる
そういう理解だった。
本シナリオを読むまでは。
彼女の素質を私は見落としていたのだ。もしかするとシャニPも。
彼は言っていたじゃないか。
「みんな特別だ」と。
にちかが後天的に獲得した、必死に努力をする姿勢も特別だが、
シャニPの「特別」は先天的素質を指していると私は考えている。
にちかの先天的な素質は、初対面のとき既に見出されていたのだ。
その素質とは、アイドルに憧れた女の子が放つ輝きだった。
シャニPも見落としていた原初の光は、初めからあった。
同じ目線で、同じ場所に
にちかの美琴に対する憧れの強さが遠慮を生み、二人で向き合うことから遠ざかっていた側面は否定できない。
しかし当然ながら致し方ない事情がある。
未経験で飛び込んだにちかに対し、美琴はアイドルとしてはベテランの域であり、特にダンスはプロ級。
委縮するなという方が無茶だ。
それでもにちかは、美琴の隣に立つため、相応しい相方になるために必死に頑張った。
アイドルの階段を駆け上がってゆく。
練習で技術を習得すれば理想に近づき、美琴の隣に立てる。
しかし、それではかつての美琴と同様に行き詰まるだけだ。
にちかが袋小路から抜け出すためには何が必要なのだろうか。
原初の喜び
本シナリオにおいて、にちかは「自分自身の原点の発見」を達成したと考えられる。
では、なぜ原点の再発見が必要なのか。
それは、彼女は元々が「アイドル」だったからだ。
SHHis加入前の283プロの23人は全員、一般人からアイドルになった。
ある意味、「普通の女の子」から「特別な女の子」になった(元々持っていた特別な部分が表出した)といえる。
(※上記の「みんな特別だし、みんな普通の女の子だ」は
「特別であると同時に普通だ」の意味だということを付言しておく。)
しかしにちかは違った。一見誰よりも普通だと思われていた彼女は
「特別な女の子」から「普通の女の子」になった上で、
「特別な女の子」へと戻る必要があった。
彼女がこの推移をたどるという根拠は、
「いつから………アイドルじゃなくなったんだろ………」
に求めることができる。
ずっとずっと、痛みにも耐えて練習を重ねた先にあるものはビールケースだった。ステージに上がり自然と体が動く。
なみちゃん。
自分のアイドルとしての原点。
にちかは「平凡」などではない。
アイドルを想う気持ちは誰にも負けない。
その魅力は誰をも惹きつける。アイドルに全てを尽くす美琴さえ。
にちかは路地裏にビールケースを見つけ、上に乗る。
家族を喜ばせられる最高のステージ、自分のアイドルの原点。
そこに美琴が現れ、困惑するにちか。
「―乗せてくれる?」
「私も、そこに―」
美琴がにちかに声をかける。
美琴がにちかのステージに足をかける。
そして、にちかが美琴を引き上げる。
美琴はにちかに引き寄せられたのだ。
にちかの過去の全てが認められた瞬間だった。
SHHisが彼女たちでなければならない理由。
それは
アイドルへの真摯な思い
だった。
ルカ
これまでの所感:実像と虚像の葛藤
アイドル(偶像)は、どこまでありのまま(実像)であるべきか。
これはシャニマスにおける大きいテーマだ。
(話が横道に逸れるが、少々付き合ってほしい。)
新ユニットの加入は、このテーマの深掘りを明確に意図されているのではないかと思う。
ストレイライトの存在はこれを最も端的に示す好例だろう。
ストレイライトは「虚像」から偶像を見つめる。
一方、
ノクチルは「実像」から偶像を見つめる。
上記の引用元では、ノクチルの加入をこう書く。
ノクチルは幼馴染の「自然な」関係の継続を主眼に置いている。
その中心人物である透は、公式サイトのプロフィールによると
「自然体で飾らない性格」と評されている。
そんな彼女がアイドル活動によって自然体を維持できなくなる事態に陥った際に浮かび上がるアイドルの存在。
これこそが「実像」から見つめた偶像の姿だ。
ここで透を取り上げて「偶像の虚実」を論じてきたことには理由がある。
ルカの理解に欠かせないイベントシナリオ『線たちの12月』で
透がキーパーソンになるからだ。
認知症と思われる老婆に孫と認識された透。
「……おばば? ―ただいま」
透は老婆の孫として振る舞った。
自然体を信条としてきた透が「虚像」を肯定したのだ。
『線たちの12月』において、透のシーンをルカの物語と並行させた理由、
そして、以前とはかなり印象が異なる透を持ち出す必要性は何か。
それは、
「実像」を信奉するルカには「虚像」と折り合いをつけることが必要だから
ではないだろうか。
ルカは、完璧なパフォーマンスを実現する美琴の在り方をアイドルの理想とし「実像」を尊重する。
一方、「カミサマ」と呼ばれる「虚像」を唾棄している。
それには複合的な事情があるだろう。
・正義感が強い性格
・信頼する美琴を差し置いて「カミサマ」として売り出された体験
そして推測にはなるが、
・天井努への反発
も否定できない。
以上のことから斑鳩ルカは
アイドルの理想と現実、実像と虚像との葛藤を抱えた人物
として描かれてきたと理解できる。
普通の女の子
本シナリオにおけるルカは、
「『伝説』に押しつぶされたifの世界の八雲なみ」
として描かれているのではないだろうか。
こう思い至った理由は、以下の演出が心に留まったからだ。
この解釈を下地にして、ルカの重要なシーンを振り返ってみよう。
蜃気楼
ステージ上で共にパフォーマンスをする中でルカは悟る。
美琴はもう、かつての美琴ではない。
鯉が滝を登って龍に成るように、美琴はアイドルとして成長した。
このことにルカは酷くショックを受ける。
何故だろうか。
誰よりも信頼の置ける「パートナー」が成長したのだ。喜ぶべきことではないだろうか。
ルカの落胆はこういうことだ。
これまで「実像」だと信じていた完璧なパフォーマンスの追求は「実像」などではなかった
ということを他でもない美琴に突きつけられたのだ。
「カミサマ」という虚構を背負わされたうえに、技術の追求という理想を砕かれその空虚さを突きつけられる。
縋るものを失ったルカの絶望は想像を絶する。
母が教えてくれたおまじないである「ぎゅっ」。
ルカは不安なときいつもこぶしを握ってきた。
しかしそれゆえに、
こぶしを握る動作は嫌な記憶を呼び起こすトリガーとなる。
握ったこぶしは三者三様の僥倖をもたらした。
八雲なみには勇気を奮い起こすものとして、
七草にちかには過去を受け入れるものとして、
緋田美琴には未来を拓くものとして。
一方、ルカの祈りは何ももたらさないのだろうか。
しかしシャニマスは、誰であっても孤独にさせない。
世の厳しさを描きつつも、温かい眼差しで手を差し伸べる。
ドアが開き、光が差し込む。
はづき
シャニPを原点へ導く“プロデューサー”
SHHisを担当しているシャニPは、なぜあれほどぎこちないのか?
W.I.N.G.の時点でしばしば指摘されてきた疑問である。ファン感謝祭の心理カウンセリングに至ってはプロデュースの放棄とまで言う人もいた。
実は本シナリオは、この疑問に一定の回答を与えているのではないかと思う。
プロデュースに際するシャニPのスタンスは「寄り添う」ことだ。
担当アイドルに寄り添って同じ方向を向くことで、問題点を彼の中に落とし込み、そのアイドルの奥底にある思いを掬い上げる。
しかしあくまで、担当アイドルが主体性をもって動けるようにする。
しかしSHHisの登場はその方法に疑問を投げかけるものだった。
アイドルとして向かう方向が定まっていない。主体の中心にぽっかりと穴が空いているかのようで、アイドルの「核」が欠けている。
アイドルの「核」が無い場合、寄り添っても何も見えてこない。
プロデューサーとしてSHHisの二人をどこに導くべきか分からない。かといって彼女たちに主体性を持たせるには危うい雰囲気がつきまとう。
つまり「SHHisを担当しているシャニPは、なぜあれほどぎこちないのか?」に対する私なりの回答はこうなる。
何に寄り添うべきかが不明だったから
空虚に寄り添えば、そのまま落ちていく。
他者に寄り添い自分事とする行為には危険が伴う。
ともすれば、相手の負の感情に飲み込まれかねない。
シャニPもSHHisの二人のように足掻いていた。そして同じようにプロデューサーとしてあるべき原点を見失っていた。
「彼女を脅かすものを、全部排除したい」とさえ思った。
そんな中でプロデューサーとしての原点を代弁したのがはづき。
アイドルの人生はあくまでその本人のもの。プロデューサーは手を添えることしかできないし、それで十分なのだ。
「…… せめて、そこに手を添えてあげられてたら―」
他の誰でもない。
常にサポートに徹するはづきだけが、シャニPに言えることだった。
姉として
にちかのことを気にかけているのは最初からずっと変わらない。
このことが何よりも嬉しかった。
「いいな〜……にちか」
とても胸に残る台詞。
シャニPの
「にちかにとって苦しい時間が……まだ続くと思います でも、どうか……」
「どうか、俺にも見守らせてください」
を受けて、はづきが言った
「…… ちょっと指切るくらいで、人生終わらないのに」
からのこれ。
きっと中学生の頃から台所に立って指を切ってきたであろうはづき。
父から十分に受けられなかった父性をシャニPから享受するにちか。
私はこの台詞から、日頃からにちかの幸せを願っている人にしか言えない含みを感じた。
その他
ルカマネージャー
ルカマネージャーで印象的だったのは、ずっと美琴のことを気にかけていたんだな、ということ。
そして、余りにも無私なルカへの献身が胸を衝く。
マネージャーもルカ同様に救いの手を差し伸べられてほしい。
シャニマスならきっと、見捨てることはないと信じている。
七草父
弁護士として八雲なみをマスコミから守っていたことが示された。
これも大きい事実だが、私はアイドルにちかの原風景としての父が印象に残った。
―W.I.N.G.編準決勝前。笑顔をつくり、アイドルに変身してステージに立たなければならない。精神的に追い込まれ今にも折れてしまいそうなにちかは、シャニPの支えを求めた。
「―予言してください ……上手くいくって」
「いくよ」
「―言ってください 可愛いって」
「可愛いよ、にちか 大丈夫だ」
本シナリオでは、家庭でアイドルを真似るにちかに父が「かわいいぞー!」と声をかけるシーンがあった。
にちかの準決勝前コミュは個人的にとても好きなコミュなので、
その原体験を提示されて非常に驚きつつ嬉しかった。
ゲームシステム
BGM
シャニマスはBGMが良いことはもっと主張していきたい。
サントラ出してほしい。
今回追加されたBGMも素晴らしかった。
『線たちの12月』のBGMも、本シナリオの随所でとても良く効いていた。
めちゃくちゃ好きだ…
ところで、にちかの鼻歌が結構衝撃的だった。
本シナリオ中、幾度となく繰り返される、ら、ら、ら…
八雲なみの『そうだよ』であることが示唆されている。
俺、バカだからよくわかんねぇけどよ、
八雲なみの『そうだよ』のメロディがずっとBGMで鳴ってたってことか?
“may the music never end”ってことか?
(※七草にちかW.I.N.G.のコミュタイトル)
選択肢
二択の選択肢はいい判断だと思う。
一択とは緊張感が違う。
補足:DARSコラボ
DARSのアンバサダーに任命されたにちかの説明文は、本シナリオをふまえていることが窺える。
にちかが惹きつけたのは一般人だけではない。
家族、シャニP、そして美琴。
さらなる飛翔を願ってやまない。
結言
以上、SHHisシナリオイベント『セヴン#ス』の所見を書いた。
今後もシャニマスおよびSHHisの展開に期待したい。
最後に、この長い文章を読んでくださった読者に感謝を。