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後ろにいるよ

今までは自分が体験した話を時系列に書いてたんですど、考えてみたらわざわざ時系列順に書く必要なくね?って思ってしまったんですよね。
書き上げられそうな所から書き上げていけば良いかな、と。
相変わらずアップダウンの無い怪異遭遇談だけど、
なんとなく読んでもらえたら幸いでございます。


19歳で初舞台を踏んでからこれまで、
舞台だけでなく、映像や声優、ショーダンサーなどいろんな活動をしてきました。
そんな中でショーダンサーとして出演したある夜のショーでの話。

そのショーでは自分達出演者は複数の船に分散して乗って踊ったりして、お客さんは陸の上から観るというスタイルでした。
ショーの中で何回も衣装を船内で着替えて、都度船上で踊るという作品。
360度周りから観られるショーでは、狭い船上にいるのは数人の出演者と1~2人の運営スタッフのみ。
かなり忙しいショーなのです。


早替えをし、次の出番は板付き。
暗い船上でライトが光り、曲に合わせて踊る為にスタンバイをする。
自分の乗る船の上には自分とペア相手の女性ダンサー。
他の船も男女ペアがいるのみ。
船は旋回をしながら動いているので、自然と他の船も目に入る。
自分は夜目が効く方だし、夜の船上とはいえ、完全に光が無い訳でも無いので多少は周りが見える。

そしてソレはいた。


何隻かある船の内の1隻。
その船尾に、スタンバイしているダンサーの後ろにソレはいた。
曲が流れる中ぎこちなく動くソレ。
曲に合っている訳でもなく、規則性の無い動き。
その船でスタンバイをしているA先輩は全く気付いていない。
いや、そんな動きをしているやつがいたら船付きの運営スタッフが止めさせている。

今までいろんな不可思議なモノと遭遇していたが、ソレは今まで出会ってきたものと違ってとても不快感を覚えた。

アレはきっと良くない。


直感的にそう感じる。
感じるのだがソレから目を離せない。

やがてソレはぎこちない動きをしながらA先輩に近付いていき、覗き込む様な形となった。


うわっ

そう思ったタイミングで僕の体は動いた。
ダンサーという生き物は無意識に音に合わせて動くのである。
船上からお客さんのいる陸に向かって踊りはじめる。
無意識下でも自分の体は曲のカウントを読んで相手役の女の子とボールルームでワルツを踊る。

踊りながらも船は動く。
次にA先輩の乗る船を視界に入れたのは船内にハケる直前。
ソレは変わらず船尾にいた。
ぎこちない動きを続けながら。


楽しい事も悲しい事もある場所において人の思念は色濃く残るという。
船上にいたものはいったいどんな思念が混ざりあったものだったのか。
それは未だに分からないが、A先輩は翌日の昼のショーで怪我をして数週間休演をした。
あの時感じた、アレは良くないという直感は間違っていなかったのだろう。

ショーダンサー時代、他にもいろいろな体験があった。
また機会があれば、書き連ねていこうと思う。


人の想いは千差万別。
その日その時その瞬間に感じるモノ、コトが積み重なるとそんな事も起きるのかもしれません。
このショーダンサー時代、楽しい事も辛い事もいっぱいありました。
おそらくあの場所には、自分が感じた強い想いも念となって残っているのかもですね。


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